断章229

 世界のコロナ感染者数は5,200万人、回復者数は3,380万人、死者数は128万人である(今なお日毎に増えている)。

 そんな中で、11月11日、日経平均株価は7営業日連続で値を上げ、バブル崩壊後の最高値を更新した(29年ぶりに)。

 

 「目下の株高については、金融緩和と財政刺激策の組み合わせによって『ジャブジャブ』に溢れ出てきたマネーが金融市場に向かっているとの指摘が多い。・・・さて今回は、普段何気なく使うこの『ジャブジャブ』という言葉にフォーカスして、実体経済と株価を読み解いていきたい。

 金融・経済の文脈で頻繁に登場する『ジャブジャブ』。もちろんこの言葉に明確な定義などないのだが、一般的には量的緩和による資金供給を表現する言葉として使われてきた。具体的には、日銀の長期国債の買い入れを通じたマネタリーベース(=日銀が世の中に直接的に供給するお金)の大幅増加である。マネタリーベースの約8割を構成する日銀当座預金は、日銀の資金供給によって『ジャブジャブ』にあふれかえった。マネタリーベースは2013年の量的・質的緩和の導入によって急激に増加した後、2016年末頃まで80兆円ペースで増加を続けた。

 もっとも、量的緩和の解釈は『日銀がおカネを大量に供給しても景気は回復せず、物価も上がらない』との評価が多数派である。資金供給を通じて民間銀行に貸出増加を促しても、そもそもの借入需要が乏しい状態では、実体経済におカネは行き渡らなかったからである。

 実際、日銀の長期国債購入によってマネタリーベースが鋭角に増加する反面、実体経済に染み出したおカネの合計であるマネーストックは緩慢な増加にとどまっていた。ゆえに量的緩和の効果は限定的であるとの理解が広く共有された。

 日銀は『マネタリーベース増加がデフレ脱却に一定の効果を発揮した』との見解を示しているが、実際のデータをみるとマネタリーベースとインフレ率の関係は実績・予想ベース共に不明確で、もちろん経済成長率との関係も希薄である。

 他方、現在の『ジャブジャブ』は本質が違う。マネタリーベース増加もさることながら、マネーストックが急増しているからである。マネーストックとは『金融部門から経済全体(金融機関保有分は含ない)に供給されている通貨の総量』すなわち、企業、家計などが保有する現預金の合計などであるから、マネタリーベースとは根本的に異なる。

 大規模な量的緩和策でも増加しなかったマネーストック(M3)はコロナ禍発生以降急激な上向きのカーブを描き、7月は前年比プラス6.5%と歴史的な伸びを示した。これは政府による家計支援策と銀行貸出の増加が主因である。このうち銀行貸し出し(≒企業の預金残高)には、資金繰り目的の『守り』の借り入れが含まれている。

 そのため危機が過ぎ去れば元のトレンドに復す性質があることを考慮する必要があるが、それでも銀行貸出(平均残高)は7月に前年比プラス6.4%と大幅に増加しており企業部門全体ではカネ余りの状態にある。また予算規模約13兆円の特別定額給付金はほぼダイレクトにマネーストック増加(預金増加)に繋がり、家計調査ベースの可処分所得は6月に前年比プラス19%と急増した。

 一口に『ジャブジャブ』と言っても、かつてのそれが主に日銀と民間銀行の間で生じたマネタリーベース増加を指していたのに対し、今の局面のそれは経済活動を担う主体(企業、家計)に直接行き渡っているという点で根本的に異なる。(中略)

 さて、マネー急増と聞いて連想するのはインフレであろう。そうした文脈で示唆的だったのは7月のアメリカ消費者物価だ。食料・エネルギーを除いた『コア消費者物価』は前月比プラス0.6%、前年比プラス1.6%と市場予想(前月比プラス0.1%、前年比プラス1.1%)を大幅に上回り、上向きのカーブに転じた。個人消費が鋭く持ち直したことで、厳格なロックダウン(都市封鎖)中に下落していた中古車(前月比プラス2.3%)、衣料品(同プラス1.1%)など広範な品目が伸びた。

 FRB米連邦準備制度理事会)が6月FOMC(米公開市場委員会)で示した物価見通しによれば、インフレ率は2020年にプラス1.9%となった後、2022年まで2%を超えず推移することになっている。しかしながら、足もとの物価の基調は思いのほか底堅く、インフレ率の上振れシナリオを想起させる。

 最後にこうした状態でワクチンの大量供給、ウイルスの弱毒化など何らかの要因で人々の予想より早期に経済が急回復する場合、どういったことが起きるのか考えてみたい。

 実体経済ではインフレ率加速が考えられる。じゃぶじゃぶに供給されたマネーが実体経済に滞留するなかで、需要が回復し、供給制約が残存すればインフレの条件が揃う。そうした中でFRBが長期の金融緩和を約束するならば、インフレの可能性はますます高まるだろう。

 通貨供給量と物価の関係は必ずしも安定的ではないが、経済活動再開の進捗にしたがって、これまでのインフレ基調が上方乖離するシナリオも考えられる。こうした状況は程度の差こそあれ、日本も同様である。

 金融市場では、政策当局が引き締めに動けず、『コロナバブル』とも言うべき状況が到来する可能性がある。すでに資産価格は実体経済対比で大幅に上昇しているが、だからといって失業率が十分に低下する前に金融引き締めに転じたり、緊縮的な財政政策に舵を切ることは現実の世界では考えいくい。

 日米の政策当局は資産バブルのリスクを認識しつつも、それに目をつぶり、景気刺激的な政策スタンスを維持するだろう。現在、一般的に広く共有されているメインシナリオはコロナ禍が長期化するなかで『景気低迷が続き、デフレ圧力が強まる』といった具合である。しかしながら、こうした逆のシナリオも一考の価値がある」(2020/09/02 東洋経済・藤代 宏一の記事を引用・紹介)。

 

 そして、どうなるのか?

 「景気は悪いが、株式市場だけが国家公認の賭博場として賑(にぎ)わっている。ばら撒いたカネはいずれインフレ、増税、通貨切下げなどで減価していくだろう。

 『信用拡大でもたらされた好景気は、結局のところ崩壊するのを避ける手段がない。残された選択肢は、さらなる信用拡大を自ら断念した結果、すぐに訪れる危機か、ツケを積み上げた結果、いずれ訪れる通貨制度を巻き込んだ大惨事かだけである』(ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス)」(by 石原 順)。

 但し、この「いずれ」が何年先かは、誰にも分からないのである。

断章228

 「戦前エリートはなぜ劣化したのか」という問いに対して、日露戦争後に「慢心と油断が生まれた。これが日本という小国のエリートにとって、死活的に重要な感覚を失わせてしまったといってよい。それは、時とともに変わっていくもの、すなわち国家を取り巻く環境の変化を捉える鋭敏な感覚である。日本は周囲の状況に上手に対応して、舵をとって行かなければ、沈没してしまう(引用者注:例えば、食糧さえも自給できていない)。周囲の状況の変化をつぶさに観察し、感じ取る能力が、とりわけ必要とされるのは、そのためであるが、その感覚がおとろえた。では、近代日本にとって、時とともに変化する環境とは、何か? それは今も昔も国際情勢と科学技術である。第3期(引用者注:昭和戦前期の)エリートは、それらに対する鋭敏な感覚を失ってしまった」と、磯田 道史は言う。

 蒸気船や蒸気機関車を見て、欧米の先進科学技術を学び取り入れなければ、日本は植民地にされるとの必死の思いは、明治維新後30年ほどでゆるんでしまったのだ。

 

 平成日本のエリートは、戦後日本の安定と繁栄による“慢心と油断”によって、昭和戦前期エリートと「同じ轍(てつ)を踏んだ」。国際情勢と科学技術に対する鋭敏な感覚を失ったのである。

 その結果は、第一に、韓国の世界的な「反日プロパガンダへの反撃の遅れであり、第二に、先端科学技術への立ち遅れである。「20年かけて政府が積み上げて来たIT戦略やITインフラは新型コロナ対策で全く役に立たなかった。まさにデジタル敗戦だ」(平井 卓也デジタル庁大臣)なのである。

 

 しびれを切らして、ついに自ら乗り出した経営者もいる。

 「4月3日、京都市内で行われた京都先端科学大学の入学式。日本電産CEOで同大運営法人の理事長である永守重信氏は、既存の大学教育への問題意識と大学改革についての思いを、集まった約2500人の新入生と保護者に訴えた。

 京都先端科学大学は4月1日に名称を京都学園大学から変更した。2018年3月に永守氏が大学を運営する学校法人京都学園(現・永守学園)の理事長に就任。100億円を超える私財を投じ、同大の改革を推し進める。

 永守氏が大学教育に一石を投じる背景には、今までの大学教育で『期待する人材がまったく出てこなかった』ことがある。永守氏は具体的な不満を次のように例示した。 『(大学を)卒業しても英語も話せない。経済学部を出ているのに、企業の経理に回されても決算書さえ作れない』。

 さらに永守氏は『多くの企業家はそんな人材を生み出す今の大学教育に失望している』『今の大学は偏差値とブランド主義に凝り固まっている』などと述べ、大学教育がいかに社会の変化に対応せず名ばかりになっているかを指摘した。

 今年度から京都先端科学大学では、学生の実践的な英語力向上のために通信教育大手ベネッセグループ傘下の外国語学校『ベルリッツ・ジャパン』から講師を受け入れる。2020年度には工学部の設置を計画しており、京都市内にある太秦キャンパスでは新学部向けなどの新校舎が建設ラッシュだ。

 永守氏はさらに日本電産の主力製品であるモーターについても言及。これからエンジンではなくモーターがさらに必要となる電気自動車時代を見据えて、『日本電産は世界最大のモーターメーカーだが、そのモーターの技術を学べる大学はどこにあるか』と大学の教育カリキュラムが実需に合っていないことも指摘した。設置を計画する工学部でもモーターを学べるカリキュラムを用意する予定だ」。

 さらに、「永守重信会長兼CEOは17日、自身が運営法人の理事長を務める京都先端科学大学のビジネススクールについて2022年にも開校する方針を示した。

 自身が『塾頭』に就任し、社内外から受講生を受け入れる。技術者出身の経営者を養成する。日本電産株主総会やその後の記者会見で構想を語った。永守氏は『日本では技術者が経営のことを知らない。技術系の人が将来、社長やCEOになれる経営を教える。“永守起業塾”をつくる』と述べた。場所はJR京都駅前を想定し、仕事を終えた受講生らが帰宅前に学ぶかたちを検討する。

 永守氏は1月の講演会でビジネススクールを開設する構想を公表していた。さらに医学部や小学校、中学校、高校を設ける考えも明らかにしている」(2020/06/18 日本経済新聞)。

断章227

 差し当たり、今冬の失業者に10万円の給付を。さらに、プログラミングなどを無料学習できる学校、訓練校コースなどの建設・拡充を急げ。

 

 「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」とも言うが、凡そ、「勝ちには勝つ理由があり、負けには負ける理由がある」ものである。そして、勝つ理由のほとんどは、オーソドックスなもの(正道)である。

 それは、国家としての「勝者」と「敗者」を分けたものは何だったのかを探った『強国論』の結語が、「たゆまぬ努力が必要、奇跡など起こらない、完璧などありえないし、千年王国も天啓もありはしない、懐疑的な信念を持ち、独断を避け、注意深く耳を傾け、目をこらし、目的を明らかにし、手段を選ぶことが大切」(David・ S・ Landes)だと言うことからも明らかであろう。

 ―― 「正道(せいどう)」とは、自分にとって正しいということだけではなく、天に恥じることのない、人間として生きるべき正しい道という意味。「人間として何が正しいか」という極めてシンプルなポイントに判断基準を置き、それに従って正しいことを正しいままに貫いていく。つまり、嘘をつくな、正直であれ、欲張るな、人に迷惑をかけるな、人には親切にせよ。人間として守るべき当然のルール、「当たり前」の規範に従いつつ、日々努力を継続することである。

 これは、素朴な「処世訓」にすぎないように見える。しかし、「最初の素朴な見方は、概して後の時代の形而上学的な見方よりもヨリ正しい」(エンゲルス)とは、こうした「世俗の知恵」についても言えることなのである。

 

 もし、「雨にも負けず 風にも負けず 雪にも夏の暑さにも負けないで」まっとうに、オーソドックスに「正道」を貫いて生きてきたが、思いがけないコロナ禍により失業し、「刀折れ矢尽き(かたなおれやつき)」て暮らしに困窮する国民がいれば、それを助けることは、日本国家の、日本の政治家としてのミッションである(ちなみに、2020年分の政党交付金の総額は317億7368万円である)。

断章226

 「新型コロナウイルスの感染拡大に関連した解雇や雇い止めの人数(見込みを含む)が初めて7万人を超えた。厚生労働省によると6日時点で7万242人に達した。雇用情勢の厳しさが改めて浮き彫りになった。

 厚生労働省が2月から全国の労働局やハローワークを通じて日々の最新状況を集計している。9月23日に6万人を超えてから、約1カ月半で1万人増えた。6月に累計で2万人を超え、以降は1カ月1万人ペースで増加してきた。増加のペースはやや鈍化している。厚労省が把握できていない事例もあるため、実際の人数はもっと多い可能性がある。ただ、解雇後の状況を逐一把握できるわけではないため、既に再就職できた人も集計に含まれている。

 4~5月は緊急事態宣言に伴う外出自粛などで宿泊業が大きな影響を受けた。夏以降は製造業で解雇・雇い止めの人数が増加している。業種別では10月30日時点で、製造業(1万2979人)が最多となった。飲食業(1万445人)や小売業(9378人)、宿泊業(8614人)の順に多い。特に非正規労働者の雇用環境が厳しい。厚労省によると新型コロナ関連の解雇・雇い止めのうち3万3千人超を非正規労働者が占める」(2020/11/09 日本経済新聞)。

 

 中国共産党のおはこ(十八番)は、「中国の特色ある社会主義」という“デタラメ”である。あっけらかんと、社会主義市場経済なんて“用語”を造語する。

 日本共産党も同類である。「市場経済といいますと、何か資本主義と同じものだと思っている方もおいでですけれども、市場経済というのは自由に商品が売買され、市場で競争し合う仕組み、体制のことです。これは資本主義に向かう道筋にもなれば、条件によっては社会主義に向かう道筋にもなりうるのです」と、いけしゃあしゃあと語る。

 「おいおい、おまえたちは、ちゃんとマルクスを読んだことがあるのか?」と突っ込んでも、なにかしら虚しい。なにしろ、この人たちは、旧・ソ連や中国を「社会主義国」(地上の楽園)だと全力で宣伝していた人たちなのだから。

 

 なぜ、差し迫った日本の雇用の危機の話題で、中国共産党の「中国の特色ある社会主義」を持ち出したのか。それは、日本の経済体制が、「日本の特色ある資本主義」とでも呼ぶべきものであるからである。

 「株式会社とは、倒産を前提に考えられた仕組みで、前提である『会社の倒産』が起これば、従業員は失業します。つまり、会社は倒産だけでなく失業も前提にしているということなのですが、日本における会社のとらえ方は違うようです。

 本来、会社というのは、『やってみないとわからないから、やってみよう』『失敗したら、次をやってみよう』という仕掛けなのですが、日本ではそのようには考えられていないのです。それはなぜかというと、日本の会社はそもそも、投資の『器』として誕生したわけではなかったからでしょう。

 日本の会社は『ムラ社会の法律的表現型』である。そのように考えれば合点がいきます。

 日本の会社が年功序列制であることも、労働市場流動性がないことも、入社以来のプロパー社員が重用され、例外はあるものの一度会社を離れると非常に条件の悪いキャリアパスを歩まないといけなくなることも、納得がいきます。『倒産』を認めない慣行も理解できます。

 日本において会社は投資の『器』ではなく、法律で表現された『ムラ』であるから、『あ、ダメでした』で済ませることはせず、社会が支えようとするのでしょう。一方で、倒産した場合は『ムラ』としての責任を取らされます。

 まず大企業の場合、しばしば政府は倒産させないように救済します。それはムラの存続にかかわる問題であり、『倒産のインパクトが大きすぎて倒産させられない』状況にあるからです」と、阪原 淳は言う。

 

 かつて小室 直樹は、「資本主義の論理は市場原理である。市場原理(market principle)とは淘汰の法則である。企業は淘汰されて破産する。労働者(経営者をも含む)は淘汰されて失業する(失業者となる)。破産と失業とは資本主義の生命(いのち)である。市場原理が作動せず、破産と失業とがなければ資本主義は死ぬ。市場原理が作動しない経済というのは、実は社会主義なのである。(中略)

 日本経済も死につつある。破産と失業の覚悟ができていないからである。資本主義における覚悟は、破産と失業である。資本主義における危機管理とは、破産と失業のときどうするか、の準備である」。ところが、「日本には、その準備がない」「とりわけ、日本の戦後教育は、こんな大事なことを教えていない」と警告した。

 

 大量失業に備え、第2第3の失業者救済策を準備し、のみならず、さらに大胆に、既得権益を、戦後教育を見直し、以ってコロナ禍を転じて福と為さなければならない。

断章225

 「新国立劇場・2019/2020演劇シーズン、シリーズ『ことぜん』の第一弾は、ロシアの作家ゴーリキーの『どん底』を上演します。この作品は我が国の演劇界において、1910年(明治43年)に『夜の宿』と題して初演されて以来、百年を経た現在でもたびたび上演され、数々の名舞台を産み出してきた名作です。母国ロシアでの初演が1902年だったことを鑑みると、そのわずか八年後の日本初演も画期的であれば、その後上演され続けてきたことも驚異的で、我が国で最も愛された海外戯曲のひとつと位置付けることも可能です」(新国立劇場HPから)。

 

 血を吐いて長期療養する生存の「どん底」。爪に火を点すような経済的「どん底」。山谷・釜ヶ崎といった「ドヤ」暮らしと大差はなかったのである。そして、日ごとにおのれの思いと隔絶していく組織(集団)との関係の「どん底」。わたしの「どん底」は、三重苦だった。

 

 現代日本の医療・福祉のおかげで生存の「どん底」を抜けた。その後に心がけていたことは、完全食品の「納豆」を食べることだった。

 その効能については、コロナ禍中にも、以下のような記事があった。

 「新型コロナは感染後、基礎疾患や高齢により悪化しやすいが、普段の栄養状態も関係すると言われている。欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)は早くから、新型コロナ患者のための栄養ガイドラインを提示していた。

 なかでも注目されているのは、動脈や骨の健康に欠かせないと言われるビタミンKだ。昨年くらいから健康に敏感な人たちのあいだで密かなブームとなっていたようだが、さらにこの度、オランダの医師たちがビタミンKと新型コロナ症状緩和に関連性を見出したことから、にわかに注目が集まっている。K1とK2があるが、体内吸収率のより高いK2が非常に多く含まれる納豆が特に注目されている。(中略)

 ビタミンKには血液を凝固させる作用や、骨中のカルシウムを内外に移動できる特殊なタンパク質を活性化する働きがある。(中略)ビタミンKにはK1とK2があり、K1はほうれん草や小松菜などの緑黄色野菜に多い。体内吸収率のより高いK2はチーズなどに多く含まれるが、なかでも注目されているのが納豆だ。納豆には1パック(40g)あたり約240μgものビタミンK2が含まれる。ちなみに、ドイツ栄養学会(DGE)の推奨する1日の摂取量が51歳以上の女性で約65μg、男性で80μgであることからも、その豊富さがわかるだろう。

 オランダの研究者たちは現在、臨床試験補助金の申請をしているようだが、プロジェクトを率いるロブ・ヤンセン博士はガーディアンに『私はロンドンで日本人科学者と一緒に働いたことがあるが、彼女は日本で納豆をたくさん食べる地方ではCovid-19による死者が1人も出ていないと言っていた。だから、試してみる価値はある』と述べている。

 この発言を受け、ヨーロッパでは納豆を紹介するサイトなどが増え始めている。納豆は免疫力を高めることでも知られているので、一石二鳥だ」(2020/06/23 ニューズウィーク日本語版・モーゲンスタン陽子)。

 

 爪に火を点すような経済的「どん底」は、現場仕事からセールスマンに転じて抜け出した。商売人としてのセンスが無かったので、結局、大儲けできなかった。なので、暮らしは、いまだに下級国民である。

 

 日ごとにおのれの思いと隔絶していく組織(集団)との関係の「どん底」は、抜け出すことができないだろう。

 というのは、わたしは、低学歴で(つまり高等教育での論文指導をされたりしたことがない)、読書量が少なく教養がなく、したがって視野が狭く理論的に極めて貧困である。そうした場合、わたしが属する国、あるいは政党、あるいは集団が、おのれの思うところと隔絶(あるいは乖離)していくことに対して、思想的理論的には戦うことができなかった。漸(ようや)くにして、独学を再開する機会を得たときには、もはや人生の残り時間が少ないという残念な現実。だが、まだ生きている。学び続けよう。「どん底」とかつて一度も面々相対したことのないお気楽な自称「知識人」リベラルや空想的「左翼」学者たちと戦うために。

断章224

 「歴史をみてわかるのは、宗教はいくつもの命をもち、繰り返し復活するということである。神と宗教は、過去に何度死と再生を経験したことか」(『歴史の大局を見渡す』)。

 

 例えば、キリスト教について言えば、「ローマ皇帝コンスタンティヌスキリスト教に改宗するまでの300年間に、多神教徒のローマ皇帝キリスト教徒の全般的な迫害を行ったのはわずか4回だった。地方の管理者や総督は独自に、反キリスト教の暴力をいくらか煽った。それでも、こうした迫害の犠牲者を合計したところで、この3世紀間に多神教のローマ人が殺害したキリスト教徒は数千人止まりだった。これとは対照的に、その後の1500年間に、キリスト教徒は愛と思いやりを説くこの宗教のわずかに異なる解釈を守るために、同じキリスト教徒を何百万人も殺害した。16世紀と17世紀にヨーロッパ中で猛威を振るったカトリック教徒とプロテスタント(新教徒)との宗教戦争は、とりわけ悪名が高」(『サピエンス全史』)かった。

 

 それでも、「1801年、歴史に精通したナポレオンはピウス7世と政教条約を結び、フランスとカトリック教会の関係を修復した。18世紀のイギリスは無宗教だったが、ヴィクトリア朝に入るとキリスト教と和解した。国が教会の上に立ち、教会区司祭は大地主に従属するという暗黙の了解のもと、国は国教会を支えることに同意し、知識階級は懐疑的態度を控えることにした。アメリカでは19世紀に信仰復興運動が起き、建国の父の合理主義が信仰に変わった。

 厳格主義と快楽主義(気持ちや欲望の抑圧と表出)は歴史の中で交互に生じている。一般的に法の力が弱くモラルによって社会秩序を維持しなければならないとき、宗教と厳格主義が勢いを得る。一方、法と政治が力を増し、教会、家庭、モラルの力が社会の安定を脅かさない程度に落ちるとき、懐疑主義と快楽主義が広がる。

 現在は国が力を得、信仰心とモラルが低下していることから、快楽主義が幅を利かせている。そして、おそらくこれが行き過ぎると、また別の反応が生まれるのだろう。モラルの乱れが信仰を復活させるのだ。無神論者は(1870年以降のフランスでみられたように)、子供を再びカトリック系の学校に送って信仰心を身につけさせるかもしれない」と、ウィル・デュラントは言う。

 

 朝、元気に出勤した夫が、火災現場のバックドラフトで殉職する。お友達との会食と買い物を楽しみに街に出かけた娘が、自殺の巻き添えで亡くなる。この世は、無常であり不条理である。ならば、宗教が死んでしまうことはない。

 

 では、マルクス主義はどうだろうか。

 マルクス主義もまた、「人民の敵」「帝国主義のスパイ」「反階級的脱落者」と見做(みな)した者たちを処刑して集団墓地に大量に投げ捨てたが、今日なお命脈を保っている。

 旧ソ連圏、「北朝鮮」、「ポル・ポト民主カンプチア」、「ベネズエラ」、「中国」の現実を知った後でも、「果たせなかった約束 またひとつ増えただけ それでも明日を夢見」(♪『夢の続き』)て、マルクス主義を信じ続けるインテリたちがいる。

 

 それは、第一に、宗教が人間=社会の普遍本質に根拠をもつように、マルクスの知見も現代資本制社会に根拠を置いているので、現代世界の解剖学として役立つからである(但し、解剖学を知っても手術ができるわけではない)。

 第二に、インテリは“全能の体系”を自称するイデオロギー・思想が大好きだからである。

 第三に、共産主義(地上の楽園)はインテリたちの見果てぬ夢だからである。

 

 日本のインテリは、マルクス主義の“ドグマ”によって、おのれ自らをデラシネ ―― フランス語で根なし草、転じて故郷や祖国から離れた、もしくは切り離された人を意味する ―― にした人たちである。故郷や祖国に帰る道を見失っているのだ。

 「人生でいちばん苦痛なことは、夢から醒めて、行くべき道がないこと」(魯 迅)である。だから今なお、マルクス主義に、共産主義の夢を見続けることに固執しているのである。

断章223

 「強い者、賢い者が生き残るのではない。変化できる者が生き残るのだ」(ダーウィン)。

 大事なことなので、また書きましたよ。

 

 「コロナ禍による収入減や雇用不安、テレワークの浸透などを背景に、副業を始める人が増えている。ネット上で仕事を受発注する『クラウドソーシング』大手のランサーズが2020年7~8月に行った調査では、同社サイトで副業をする人のうち約3割が『新型コロナ感染拡大が始まった2月以降に副業を始めた』と回答した。ユニ・チャームエイチ・アイ・エスなど大手企業の副業解禁が相次いだ2018年の『副業元年』から2年余り。コロナ禍を機に新たな『副業ブーム』が生まれつつある。

 北海道在住の20代男性は、今年3月にランサーズを通じてプログラミングの副業を始めた。本業の勤務先は、東証1部上場のメーカー。『以前は1カ月の残業時間が100時間になるほど忙しかったが、コロナ禍で会社の業績が悪化。人件費削減のため業務量を減らされ、余剰時間が生まれた』。さらに、テレワークの実施で通勤時間がなくなり、副業のための時間を確保することが容易になったという。

 副業では表計算ソフトのエクセルに含まれるプログラミング言語VBA』でプログラミングを行う。中小企業からの案件が主で、『エクセルの請求書と商品データを自動で紐づけてほしい』といったものが多い。本業の業務でVBAを使っていたが、『社内でVBAが使えるのは自分だけだったため、社外でもこのスキルを生かせるのではないかと考えた』。案件は月3件程度で、受注から納品にかかる時間は約5日間。副業を始めてから約8カ月間の売り上げは、累計約160万円にのぼるという。

 副業の経験を積む中で、VBA以外のプログラミング言語も習得したいと考えるようになった。そこで毎朝5時に起きて勉強し、プログラミング言語Python(パイソン)』を習得。『会社からの帰宅後は自宅でネット動画を見て過ごし、朝はギリギリの時間に起きて出社する』というコロナ前の生活が一変したという。『副業を始めて人生の選択肢が増えた。以前は今の会社であと40~50年勤め続けるしかないと思っていたが、現在はプログラミング技術を使う仕事への転職を考えている』と話す。

 都内在住の29歳の女性も副業で選択肢が増えた一人だ。コロナ前はシェアオフィス運営会社で広報として働いていたが、コロナ禍後も出社前提の働き方を変えない会社に疑問を持つようになり転職を決意。『在宅勤務を実施している会社への転職を考える上で心理的な支えとなったのが、3年ほど前から行っていた広報・PR関連の副業収入だった』。無事転職に成功し、9月からIT(情報通信)企業でマーケティング職として働く。

 副業では3社と業務委託契約を結び、広報を担当する。ニューズレターやウェブ媒体向けにPR記事を執筆するのが主な仕事だ。副業収入は月30万円程度。本業は残業しないスタンスで毎日17時に業務を終え、その後の2~3時間で副業をこなしている。『複数の会社で実績を積むことで、より多くの業界で使えるスキルを磨きたい』。

 経営環境の急速な変化を背景に、副業を解禁する企業は増加傾向にある。エン・ジャパンが運営する転職サイト『エン転職』の岡田康豊編集長によると、現在副業を認めている企業は全体の2~3割程度だが、今後数年かけて5割程度まで増加する見込み。『コロナ禍での業績悪化による社員の収入減などを受け、副業を認める会社は増えるとみている。特に、今まで副業をあまり行ってこなかった年収600万~800万円程度の層が副業を始めるようになるだろう』と岡田さんは話す。

 社員の副業を認めるだけでなく、外部の人材と業務委託契約を結び『副業として働くこと』を前提に仕事を依頼する会社も増えている。5月にはライオンがが新規事業の立ち上げなどに向けて、週1日勤務からの副業人材を公募。ダイハツ工業も9月に、週1日程度の勤務でサービスの企画などを行う副業人材の募集を行った(両社とも募集は終了)。リモートワークの推進で柔軟な働き方が可能になり、社外に優秀な人材を求める動きが生まれている。

 Zホールディングス傘下のヤフーは、7月に副業人材を100名程度募集したところ、4500人以上の申し込みがあった。採用者とは月5万~15万円程度の報酬で業務委託契約を結ぶ。『IT企業以外にも、金融業や製造業、コンサルティング業をはじめ、日本のあらゆる業種を制覇しているのではないかと思うほど多様な職業の人から応募があった』(ヤフーコーポレートPD本部長の金谷俊樹さん)。副業人材は、今後も継続的に募集していく意向だ」(2020/11/01 日本経済新聞 日経マネー・大松佳代)という。

 

 「捨てる神あれば拾う神あり」であり、「衰退する業界にも伸びる会社はある」。希望はいつも、色々なところにある。「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」(リクルートの社是)という。

 そして、国や自治体や企業は、「より多くの業界で使えるスキルを磨きたい」という声に応えなければならない。AIやロボットやICTに対応できるようになる教育制度(職業訓練)、職業(職種)転換のための補助金、企業内研修の整備拡充をしなければならない。