断章25

 ココイチさんで「手仕込みササミカツカレー」(5月末までの限定)と玉子サラダを食べました(ココイチの創業者・宗次徳二氏の人生は知る値打ちがある)。

 

 カレーを食べて、インドを思ったのである。

 アヘン貿易にまで手を染めた邪悪なイギリスは、産業革命期には綿工業のライバルであった「(植民地の)インドで、作業ができないように職人の腕を切り落としたり目をくり抜くなどの悪辣非道のことまで行って、インドの織物産業を壊滅させようとした」(佐藤けんいち)のである。

 あるイギリス人軍事史家は、「第二次大戦戦時下のインドでは英国の失政から200万を越える餓死者が発生した。その点で筆者の母国である英国が『傲慢な帝国主義国家』の筆頭であったことに疑いの余地がない」と述べている。

 

 七つの海を支配し世界の覇権を握っていたイギリスであるが、19世紀後半には急速に発展してきたドイツに挑戦されたのである。新興ドイツは、「トゥキディデスの罠」に嵌(ハマ)り、イギリスの覇権に挑んだのである。

 

 「トゥキディデスの罠とは、古代アテナイの歴史家、トゥキディデスにちなむ言葉で、覇権国と新興国との緊張関係が戦争を引き起こすほどに高まる現象)」(Wiki)

 「トゥキディデスのわなに陥った過去500年の実例を見ると、16のうち12で戦争が起きています」(林 哲矢)

 「小豆島のサル山のボス、マッチョは2番オスに攻撃を受け・・・このオスにボスの座を取ってかわられた」(産経新聞 2017/12/26)。

 

 とまれ、列強間の不均等発展による世界覇権の争奪戦は、第一次世界大戦第二次世界大戦に帰結したのである。

 

 なお、第一次世界大戦を通じて「ソヴィエト連邦」、第二次世界大戦を通じて「中華人民共和国」などが成立したのであるが、その「主観・イデオロギー」を除いてみれば、(全体主義的な)「国家」としてはありふれたものにすぎなかったのであるソ連崩壊後に明らかになったレーニン極秘指令書。ドイツ・ソ連不可侵条約「秘密議定書」などを参考のこと)。

 

 第一次世界大戦第二次世界大戦を経て、世界の覇権はイギリスからアメリカに移った。

 アメリカは現在の帝国主義世界においても覇権を握っているが、新興・中国の挑戦を受けているのである。

 「米国防総省は2日、中国の軍事動向に関する年次報告書を発表し、中国がサイバー攻撃による最先端技術の窃取などで軍事力の近代化を進めていると批判した。巨大経済圏構想『一帯一路』を通じた海外への軍事展開の可能性も指摘。長期発展戦略『中国製造2025』も軍近代化を直接支援しているとした」(毎日新聞 5/3)。

 「米国と中国の摩擦は根の深さが見えてきた。これをエネルギーの視点で見れば、世界最大の生産国である米国と、世界最大の消費国である中国の攻防と捉えることができる。

 急増する石油・天然ガスの生産量をテコに、『エネルギー支配』に動く米国に対し、エネルギーの次世代技術を押さえて米国の支配に挑戦する中国の構図である。

 米国の原油生産量は2018年に前年比17%増の日量1095万バレルとなり、ロシアやサウジアラビアを抜いて世界最大の産油国に躍り出た」(日本経済新聞 5/5)。

 

 「米中は経済的に相互依存の関係だ。だから戦争は起きないという意見については、第一次世界大戦を思い起こすことが重要だ。当時、英国とドイツは経済的な結び付きが極めて強く、現在の米中に似ていた。当時のベストセラーをご存じだろうか。ノーマン・エンジェルの『大いなる幻想』だ。

 同書は『(貿易や投資により)経済的な相互依存関係が高まっているため、戦勝国は勝利によって手にするよりも多くの価値を戦争で失う。だから戦争を起こすことは不可能である』と主張した。だが現実には、第一次世界大戦の勃発は免れなかった」(グレアム・アリソン)。

 

 核兵器の出現により全面戦争は起きにくくなった(先般のインドとパキスタンの衝突も以前なら戦争になっていただろう)。しかし、列強間の争いが全面戦争の形をとりにくくなったということは、戦争がなくなったということではないし、為替操作・貿易摩擦・ブロック化・代理戦争がなくなったわけでもない。

 しかも、「世の中には旧来型の戦争観をもっている国がある。・・・民主主義国は、極力戦争を回避して外交によって解決しようとする。ところが戦利品が獲れるという発想をもつ国は、本気で戦争をやろうとする。すると、短期的には、戦争をやる覚悟を持っている国のほうが、実力以上の分配を得る」(『新・戦争論』佐藤 優)のである。

 

 平和の青い鳥を探して、「空理空論」の夢にまどろんでいれば、オオカミに食べられてしまうだろう。力の裏付けのない平和は、真の平和ではないのである。