断章53

 またまたルトワックである(おもさげながんす)。

 

 戦後日本の「進歩的」文化人、自称「知識人」リベラルたちが書いたものは、時を経ればほとんど読むに堪えない、時代に耐えないものばかりである。

 しかし、ルトワックが書くものは、・・・

 第一に、戦略(の逆説的論理)を解き明かして、時を経ても読むに堪え、時代に耐えるものである。

 第二に、時代の要請に答えている。ここでいう時代とは、「日本は、政府も国民も、過去70年間、『リスクを取ること』そのものを頑(カタク)なに避けてきた。リスクを避け、戦わず、死者を出さないこと、これこそが真の平和だと思っていたのだ。しかし、それは錯覚だった。このような“空想的平和主義”が通用した古き良き時代は終わった」(宮家 邦彦)後の、今である。

 

 「戦略とは、一般的には特定の目的を達成するために、長期的視野と複合思考で力や資源を総合的に運用する技術・応用科学である」(Wiki)。

 

 『自滅する中国』(原題は、「戦略的論理から見る中国の台頭」 日本語版2013年刊)の第16章から、韓国に関連するところの《要約紹介》をする。

 

 「あらゆる独立国家は、必ず絶対的な主権を主張するものだ。しかしすべての国家が、外国への従属に抵抗するような政治文化に動かされているわけではない。中には言いなりになる国家もある。そしてたいていの場合、言いなりになる国家の動機は『恐怖』にあるものだ。しかし、韓国の場合、中国にたいする『恐怖』­­­は、二次的かつ間接的な要因でしかない。むしろそれよりも大きな動機は、中国と中国人への文化面での深い敬意--------この敬意は(一般国民ではなく)エリート層のアメリカと米国人への反感に見ることができる-------であり、そして結局のところは、韓国が『中国市場の相対的な重要性が益々増している』と痛感していることにある。(中略)

 13世紀に新儒教宋明理学朱子学陽明学など)が紹介されると、その熱狂的な信者となった朝鮮人は、自らを『小中華』・・・と位置づけたのである。その結果、朝鮮では中国よりも日本からの文化の押しつけの方が怒りを残すことになってしまった。(中略)

 北朝鮮からの攻撃にたいして即座に確固とした態度で相応の報復をしようとしていないことからもわかるように、実際のところ韓国政府は、米国と中国に依存する従属者となってしまっている。(中略)

 中国への見苦しい媚び方の中でもとくに注目すべきなのは、韓国政府がダライ・ラマへの訪問ビザ発給をいつまでも拒否していることだ。(中略)

 現在の政策を保ったままの韓国は、いわゆる『小中華』の属国として、しかも米韓同盟を続けたまま、中国による『天下』体制の一員となることを模索しているのかもしれない。(中略)

 このような韓国の安全保障の責任逃れをしようとする姿勢は、『日本との争いを欲する熱意』という歪んだ形であらわれている。ところが日本との争いには戦略的に何の意味もないし、日本へ無理やり懲罰を加えても、韓国側はリスクを背負わなくてもすむのだ。2010年に韓国は北朝鮮から深刻な攻撃を二度受けたが、それにたいして抑止行動も懲罰も行っていない。ところがその攻撃の間ですら、37名の韓国の国会議員は公開討論会を開催し、日本の対馬に対する韓国の領有権の宣伝に努めていたのだ。(中略)

 2011年12月14日には『従軍慰安婦』を表現する上品ぶった韓国人少女の像が日本大使館の向かい側で除幕された。これは毎週開かれる賠償請求デモが一千回を迎えたことを記念したものだった。当然のことだが、これは韓国に全く脅威をもたらさない国を最もいらだたせるような行為であった」。

 

【参考1】

 「イギリスや日本など国連人権理事会加盟の22カ国は、中国・新疆(ウイグル自治区)におけるウイグル族の処遇について、中国政府を批判する共同書簡に署名した。

 共同書簡は国連人権高等弁務官あてのもので、10日に公開された。『新疆のウイグル族などの少数派を特別に対象とした、大規模な収容所や監視、制限の拡大』に関する報告書を引用し、新疆の現状を非難している。

 その上で中国政府に対し、国連や独立した国際組織の査察団へ、『新疆への実質的なアクセスを認める』よう強く促している。」(2019/7/12  BBC news)

 7月12日現在、韓国は署名していない。

 

【参考2】

 2018年、韓国の中国に対する部品貿易黒字は459億ドル。日本に対する部品貿易赤字は151億ドルである。

 

【参考3】

 「韓国軍が、垂直離着陸(VTOL)型のF35Bステルス戦闘機およそ10機を搭載できる3万トン級の軽空母の建造を推進する。今回の決定は、このところ韓日関係が最悪へと向かう中、日本の軽空母保有の動きに対応しており、注目される」(2019/7/23 朝鮮日報)。