断章72

 韓国の『検定版 高等学校韓国史』では、「 Ⅱ 高麗と朝鮮の成立と発展」の「まとめ」として“重要内容”が列記してある。「1.高麗は後三国を統一し、渤海遺民を受け入れて民族を再統一した。その後王権を強化して体制を整備し、儒教理念に立脚した中央集権国家として発展した。2.高麗は豪族が中央貴族化して門閥貴族社会として発展した。武臣政権が樹立した後、モンゴルの侵略と干渉を受けて権門勢族が新しい支配勢力になり、新進士大夫が成長し始めた。3.高麗は宋と親善関係を維持してさまざまな交流をしたが、契丹やモンゴルなど北方民族とは絶えず抗争を繰り広げた。開京遷都後は元との交流が活発になった。4.朝鮮を建国した新進士大夫はさまざまな制度を整備し、儒教中心の中央集権体制を確立した。15世紀後半に成長した士林は士禍にも負けず、政権を掌握して朋党政治を展開した。5.朝鮮前期にはハングルが創製され、さまざまな器具が発明されるなど民族文化が大きく発展した。16世紀には性理学、書院や郷約など、士林文化が発達した。6.朝鮮は事大交隣を外交の基本政策とした。しかし、任辰倭乱と丙子胡乱を経て国土全体が荒れ果て、国家財政が苦しくなった」。

 これだけである。つまり、「素晴らしい朝鮮民族は、高麗も朝鮮も自立して立派にやっていたのだが、日本とモンゴルがブチ壊してしまった」と、言いたいのだ。

 

 後世についても、同じ構図で語られる。

 「『優秀な韓国はもっと豊かになれるはずだったのに、日帝の搾取のせいでそれが遅れ』『精神的主柱であるべき名前や文字、国王を日帝に奪われた』『韓国人は仲間内で足を引っ張り合うことなく、団結して日本帝国主義に勝った』

 このように何でも日本のせいにすれば、複雑な国内事情や党派争いを暴露する必要もなく、民衆を発憤・感動させやすい。おまけに日本には反日日本人・進歩的文化人なる厄介な存在があり、自ら団結して反日・反国家教育を押し進めてきた。こうして国外と国内で反日が手を結び合うという奇怪な現象に至っている」(『立ち直れない韓国』黄 文雄)。

 

 一方わたしたちは、「李朝の社会がどれほど、おぞましいものであったのか、李朝時代がどのような歴史的な経緯によってもたらされたものか、ということを知らずには、今日の韓国人の心理や、その行動様式を理解することができない。

 北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国と称しているが、李氏朝鮮がまさに名前だけ変えて存続しているといえる。文字どおりの虐政が行われており、民主とも、人民とも、まったく無縁である。李朝という下敷きがなければ、北朝鮮のような体制は出現しえなかったろう。

 韓国は・・・国内における民主的覚醒が進んでいるものの、青瓦台として知られる大統領官邸への権力の過度の集中や、法を軽視した人治主義や、収賄構造が深い根を張っているのは、韓国民が李朝の呪いから抜け出すことができないからである。

 李朝では、権力がすべてだった。権力の座にすわった者が、暴虐の限りを尽くした。法は権力者によって、好き勝手に用いられた。権力の奪い合いは、凄惨をきわめた。民衆はただ搾取の対象となった。

 権力者は美辞麗句を弄(モテアソ)んだが、人命も、道徳も、顧みることがなかった。民衆は苛酷な社会のなかで生き延びるために、偽ることが日常の習い性となった。」(「朝鮮史」萬 遜樹)と見ている。史実は、これからさらに明らかにされる。

 

 まず確認しておくべきは、朱子学の弊害である。「(李朝朱子学の絶対性と硬直化は、儒教経典の一字一句の解釈にこだわり、たまに我田引水してこじつけ、世の中をすべて正邪善悪の価値観で測り、白か黒かをはっきりさせようとすることだけにエネルギーを費やしたのだ」(『立ち直れない韓国』)。

 例えば、「一人の王妃が死んだことについて、服喪を一年間にするか、三年間にするか、天下国家を論ずる大儒・名儒といった儒学者の重鎮が、飽きもせずに延々と十数年の歳月をかけ、こうすべきであるとか、ああすべきであるとかを命をかけて闘い、最終的には、国王の鶴の一声で決着すると、敗者に待っていたものは、刑場行きと流刑ばかりであった。たとえば、東人党首、李潑は、捕らえられ拷問死の後、弟と老母、息子たちは杖死、婿、孫たちは圧死、奴婢(奴隷)全員が厳罰に処せられた」(同書)のである。

 それだけではない。「一旦悪人と断罪されれば死んだ後でも、非難を免れることを許さない。全ての人間の善悪を明確にし、当人だけでなく、子孫にも永遠にその結果を及ぼすのが中国・朝鮮のような本場の儒教の考え方である。それと同時に、『水に落ちた犬を叩く』という言葉が示すように、一旦権力の座から落ちたものは、過去の罪が容赦なく暴かれ、とことん弾劾されるのが朝鮮の伝統でもある(引用者注:だから「戦犯日本は永遠に謝罪せよ」となる)。

 最近の例で言えば、韓国併合時に日本政府に協力した李完用は戦後、親日反民族の元凶としてやり玉に挙がっただけでなく、死亡後80年たった2005年に親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法で、子孫の土地が国家に没収された」(『本当に悲惨な朝鮮史』)。

 

 「韓国の憲法第13条は、次のように規定しています。

  1. すべての国民は、行為時の法律により犯罪を構成しない行為により訴追されず、同一犯罪に対して重ねて処罰されない。
  2. すべての国民は、遡及立法により参政権の制限を受け、又は財産権を剥奪されない。
  3. すべての国民は、自己の行為ではない親族の行為により、不利益な処遇を受けない。

 ところが、憲法裁判所はこの憲法の規定に反して作られた『親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法』を合憲とする決定(2011年3月31日)を出しています」

 「つまり韓国には、『国法』に優先する“国民情緒法”と称すべき超越的な法が事実上存在するということです。(中略)これは簡単に言えば、『国民情緒に合致するものなら、司法はあらゆる実定法に拘束されない判断を下せる』という、民主国家にあるまじき超越的な法規の考えが、韓国には厳然たる不文律としてあるのです。(中略)韓国の歴代民主政権は、明らかに『国民主権』の意味をはき違えているのです」(『北朝鮮化する韓国』)。