断章94

 情報弱者であるから、詳しいこと、その後のことを知らない。ただ、報じられている話では、「11月28日、れいわ新選組山本太郎代表と野党統一会派に参加する馬淵澄夫国交相が主催する『消費税減税研究会』の2回目の会合が国会内で開かれた。この研究会に参加予定だった立憲民主党の石垣のり子参院議員(45)は、喜悦大の高橋洋一教授を講師として招いたことに反発。『レイシズムファシズムに加担するような人物を講師に呼ぶ研究会には参加できません』とTwitterで発信した」。

 石垣議員はこう主張した。「馬淵澄夫さん山本太郎さん主催の消費税減税研究会。初回の講師は、高橋洋一氏とのこと。これから始まるという時に大変残念ですが、当初言明したように私は、レイシズムファシズムには一切加担しません。よって、レイシズムファシズムに加担するような人物を講師に呼ぶ研究会には参加できません。ファシズムレイシズムも、憲法の根本原理である『個人の尊厳』を踏みにじる思考であると同時に暴力である。

 基本的人権の尊重、国民主権、平和主義が憲法の三大原則の日本社会において、レイシズムファシズム憲法を否定するものであり、憲法遵守の立憲主義に立つ政治家として許容し得ない」。

 

 当の高橋洋一はどう受け止めたのだろうか。

 「私も同じ日にTwitterで、『私がレイシズムファシズムということですが、何を根拠とされているのでしょうか教えていただけますか』と発信しました。けれども、彼女からは一切返事はありませんでした」と高橋氏。

 高橋氏は東京大学を卒業後、大蔵省(現・財務省)に入省。理財局資金企画室長、内閣府参事官、総務大臣補佐官などを歴任し、第一次安倍内閣で経済政策ブレーンを務めた。消費税増税には反対の立場をとっている。

 「私が、レイシズムファシズムに加担しているなんて、今まで言われたことがありません。石垣議員とは会ったことも喋ったこともないのに、Twitterで何故あんな発信をしたのか全く理解できません。狐につままれたようなものです。これは立派な名誉棄損になりますよ」と高橋氏は語ったそうである。

 

 この石垣のり子は、「宮城教育大学を卒業後、エフエム仙台に入社。21年間アナウンサーを務めた後、今年7月の参院選宮城県選挙区から出馬した。TwitterFacebookで支援者を募り、自民党の現職を約9000票差で破って初当選を果たした」立憲民主党所属の参院議員である。

 わたしは、筒井康隆の『現代語裏辞典』の「アナウンサー」の項に、「女子学生用語では、悪口などを言い触らす人のこと」とあったのを思い出し、思わずポンと膝を打ったのである。

 

 西 義之の『誰がファシストか』(ファッショには右も左もない! あなたの“自由”を脅かす見えない魔物の正体を暴く!)を、また読むべき時が来たようである。

 さしあたり、本書の推薦文3つを抜き書きしておこう。

 「近頃は、何でも気に入らないものを『ファシズム』とか『ファシスト』とか罵るのが流行である。流行というのは不思議なもので、そう罵られると、誰でも、一瞬、ひるむ気持ちになる。そこに目をつけて、実はファシズムに一番近いと思われる政治組織(引用者注:共産党のことだ)が、この手口を好んで用い始めている。危険な世の中である。しかし、ファシズムとは本当は何なのか、誰が本当にファシストなのか」(清水 幾太郎)。

 「この本で西君の意図したのは、日本人の間にあるファシズムについての誤った観念を打ち破ることである。日本の知識人の間には、自分たちに反対するものはみなファシズムと呼んで、否定しようという傾向がある。西君からみれば、それ自体がファシズムと同根である」(杉森 久英)。

 「西 義之君は、勇気と先見に富む人物である。まだだいぶまえ、ヒトラーの名まえをきくだけで、世人がおぞけをふるうような時期に、いち早くみごとなヒトラー研究の本を書き上げた。今度は、ファシズムを取り上げて、その正体をじっくりと解剖してくれようという。実際、現在のところ、ファシズムは蛇蝎(ダカツ)のごとく忌み嫌われている。それだけに小利口な言論人、無責任な政党は、気に入らぬ相手をすぐファシストよばわりをする」(佐伯 彰一)。

 小利口な言論人、無責任な政党、腹に一物ある集団は、昨今、気に入らぬ相手を、「ファシスト」「レイシスト」「歴史修正主義者」と罵っている。

 

【補】

 石垣議員の「レイシズムファシズムに加担」という指摘について、山本太郎氏は彼女の名前は伏せ、立憲民主党の女性議員から電話があり、22分間話したことを明かした。女性議員は高橋氏について、韓国に対していい発信をしていない。レイシズムファシズムだと話したという。