断章102

 「中国の軍事専門サイト『新浪軍事』など複数の中国メディアは、中国で今年、空母護衛などを担う最新鋭のミサイル駆逐艦9隻が進水したと伝えた。駆逐艦の1年の進水数では『世界記録』と宣伝している。海軍力を増強して米軍に対抗する狙いが一段と鮮明になった。

 遼寧省大連の造船所では26日、駆逐艦2隻の進水式典が開かれた。排水量1万トン級でアジア最大の『055型』と、『中国版イージス』と称される『052D型』で、今年進水の9隻はいずれもこの2種の最新鋭艦となった。

 駆逐艦の建造ペースは、近年では米国が1992年に6隻を進水させたのが最多で、中国はこれを初めて塗り替えたとしている。

 進水した船は、試験航海などを経て来年にも就役する見通しだ。055型は対空ミサイルなどの計112の垂直発射装置を搭載し、空母に随伴する主力艦となる。進水済みの055型はこれで6隻目、052D型は23隻目となった。

 中国では今年、駆逐艦の他に、初の強襲揚陸艦『075型』1隻や、駆逐艦より小型のコルベット艦12隻も進水するなど、軍艦艇の増産を加速させている」(2019/12/28 読売新聞オンライン)。

 

 そして、「これから起こることのすべてを知りたい人は、これまで起こったことを学ばなくてはならない。いつの時代であっても、世界のすべてのものごとは、過去にも存在してきたのだ」「天空、太陽、元素、人間は、昔あった姿と、その運行、体系、働きを変えてまったく別物になったのではない」(マキャベリ)。

 

 例えば、ソ連フィンランドに侵攻した冬戦争である(注:日本には、「中国は平和勢力であるから、尖閣諸島に侵攻して来ることなど100%ありえない」という人がまだいる)。

 「1939年8月23日の独ソ不可侵条約の秘密議定書によって、独ソによる東欧の勢力圏分割が約束された後、ソ連バルト三国フィンランドへの圧力を強め、バルト三国とは軍事基地の設置とソ連軍駐留を含む相互援助条約を結ばせた。フィンランドにも同様に、国境線の変更や軍事基地設置とソ連軍駐留を含む要求を行ったが、フィンランド側は応ぜず、両国間の交渉は、11月に決裂した。

 ソ連は自らの国境警備隊フィンランド軍から発砲を受けたとして、1939年11月30日にフィンランドに侵攻した。明らかな侵略行為に対して国際社会から非難を浴びたソ連は、1939年12月14日に国際連盟から追放されるが、戦争を終結させる上では何らの実効性も持たなかった。ソ連の指導者スターリンは、実力行使すれば、フィンランドは和平を求めてくるだろうと考え、フィンランド軍のおよそ3倍の兵力を投入した」(Wiki)。

 「フィンランド人は自分たちの領土を守るために全精力を注ぎ、・・・この目的のために、小さいながらも機動力と土地勘がありさまざまな状況に完璧に対応できる部隊を使った。そういう部隊にはまた、民衆が無条件で協力し、兵糧を提供してくれる。彼らはこの完璧な戦略のもと、カレリア地峡でソ連兵の進軍を阻止するために奮闘した」(ペドロ・バーニョス)。

 

 現代日本の豊かさ、風土、まん延する「青臭いリベラル病」。それらは、「怠惰な風潮を助長する。人間を惰弱にし、軍事にたずさわれない腰抜けに変えてしまう弊害を妨げるために、賢明な立法者が、どのような方策を打ち立てたかを(歴史に)学ぶべきであろう」(『ディスコルシ』)。

 

【補】

 「日本の貧しさ」を誇張して語る人がいる。しかし、歴史と世界を見れば、現代日本はなお、“豊か”なのである。そのことは、ベーシックインカムをめぐる議論でも明らかである。「ベーシックインカムで一律一人毎月20万円受給できるとしましょう。そうなれば、世界中から貧しいひとが殺到するに決まっています。日本人と結婚して子どもを生めば、そのたびに毎月20万円入ってくるのですから。ベーシックインカム推進派の人たちは、世界には一日100円以下で暮らしている人がたくさんいることをぜったい言わない」(橘 玲)のである。

 

【参考】

 「中国南西部の貴州省で、極度の貧困のために十分な食事を取ることができず、栄養不良に陥っていた学生が死亡した。世界2位の経済大国で浮き彫りになった貧困の実態に衝撃が広がっている。

 貴州盛華職業学院の3年生だったウー・ホワイェンさん(24)は13日、貴州省にある貴州医科大学の系列病院で死去した。死因は明らかになっていない。

 ウーさんの窮状は昨年10月、地元メディアに取り上げられて脚光を浴びていた。当時の地元自治体の発表によれば、身長はわずか135センチ、体重は21.6キロだった。

 両親は亡くなり、月額300人民元(約4800円)の生活保護を受けて弟と2人で暮らしていたという。弟には精神疾患があり、ウーさんは弟の介護のために極端に切り詰めた生活を送っていた。

 国営メディアによると、普段は朝食を抜き、それ以外は米飯にチリを混ぜただけの食事をしていたという。

 10月には両脚が腫れる症状のため入院し、心臓弁の異常があると診断されて手術を受けた。窮状を知った北京の慈善団体がウーさんを救うための募金活動に乗り出し、手術費用の3倍の額が集まっていた。

 しかし今年に入って容体が悪化、13日に死亡した。中国のソーシャルメディア、微博(ウェイボー)では、国がなぜウーさんを助けられなかったのかと疑問をぶつける投稿が相次いでいる。

 中国は国内総生産GDP)で世界2位の経済大国だが、大都市と農村部の経済格差が拡大。国家統計局によると、2018年末の時点で1660万人が年間2300元(約3万6000円)未満で暮らす貧困層に分類されている」(2020/01/15 CNN北京)。

 

【補】

 「『我が国で6億人は、月収が1000元(約1万5000円)に過ぎない』。中国の李克強首相が5月28日、全国人民代表大会(=国会)閉会後の記者会見で明かした数字が中国国内で波紋を広げている。習近平国家主席は2020年までの『貧困撲滅』を公約に掲げているが、李氏の言葉によって低所得層の厳しい暮らしぶりや貧富の差の大きさが図らずも浮き彫りとなったからだ」(2020/06/01 毎日新聞)。