断章115

 今そこにある日本の危機は、4つであるとわたしは思う。実は、先日まで、3つだと思っていた。金は増えないが、心配事は増えるのである(いやいや、低学歴でアタマが良くないから、考えが浅すぎるのだという声が聞こえる)。

 

 1つ目は、大事なことなので何度でも書くが、巨大地震の襲来である。

 政府の地震調査研究推進本部地震本部)によると、今後30年以内にマグニチュード(M)8~9クラスの巨大地震が起こる確率は、静岡県から九州沖合にかけての南海トラフ沿いが70~80%と予測されている。さらに、北海道東部の千島海溝沿いを震源とする巨大地震も警戒されている。困ったことに、今日もナマズは元気だった。

 「2月1日(土)2時07分頃、関東地方で最大震度4を観測する地震がありました。震源地は茨城県南部で、震源の深さは約70km、地震の規模(マグニチュード)は5.3と推定されます」(2020/02/01 ウエザーニュース)。

 

 2つ目は、ブラックスワン(大金融恐慌)の飛来である。

 「1月31日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日ぶりに反落し、前日比603ドル41セント安の2万8256ドル03セントと約1カ月ぶりの安値で終えた。下げ幅は昨年8月23日以来ほぼ半年ぶりの大きさ。新型肺炎の感染拡大で世界景気の先行き不透明感が強まった。業績が景気動向に影響されやすい資本財・資源をはじめ幅広い銘柄に売りが強まった」(2020/02/01 日本経済新聞)。

 「現在大騒ぎとなっている新型コロナウイルスの(注:世界の相場への)影響はどのように捉えておけば良いのか。(注:ロイター通信の記事によると)2017年に発表された論文では、パンデミック・リスクから予想される年間損失は約5,000億ドル、つまり世界所得の0.6%と推定されている。またマーケットにおける価格形成に関しては、影響は限定的だとしている。2003年に中国当局SARS重症急性呼吸器症候群)の発生をWHO(世界保健機関)に報告した後、MSCI中国株価指数は世界の指数に比べて大きく下落したものの、わずか6カ月で失われた分を戻したとしている。

 (注:しかしながら、今回は)世界経済における中国の存在感が2003年当時とは比較にならないほど大きくなる中、前回の経験則はもはや役に立たないかもしれない」(1月30日 石原 順)。

 「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」。蝶がブラックスワンに変態することもあるのが、相場である。

 

 3つ目は、パンデミックである。今回の新型肺炎のような、「ある病気が国中あるいは世界中で流行すること。ある感染症の世界的な流行」(WIKI)のことである。

 「日本に持ちこまれた新型コロナウイルスが野生(というより、都市部に棲息する)動物を媒介に感染拡大する可能性にも言及しておく。ハクビシンが、いま東京都内で大量に発生しているのをご存じだろうか。

 たとえば、新宿区のホームページを覗けば、ここ十数年の間に、アライグマといっしょに急速に増えはじめ、対応に追われていることがわかる。都内での駆除数は毎年、数百頭単位で推移しているが、それでも追いついていかない。同区が貼り出した『野生鳥獣にエサをやらないで!』という注意書きポスターにはハトといっしょにハクビシンの絵まで描き込まれている。

 東京に持ち込まれた新型コロナウイルスを、再びハクビシンが媒介しないとも限らない。そうでなくとも、ハクビシンやアライグマは複数の人獣共通感染症を持つことで知られる。

 これだけ地球規模でヒトの移動がたやすくなった時代だ。春節を迎え、中国人が日本に押し寄せている。中国の旅行会社の調査によれば、中国人観光客に人気の旅行先1位は日本だそうだ。SARS発生当時と比べ、訪日中国人の数は20倍以上に膨らんでいる。

過去の経験に学ぶのであれば、少なくともここに記しただけのことは知っておきたい」(2020/01/25 東洋経済・青沼 陽一郎の記事を要約)。

 

 そして、4つ目は、中国・習近平指導部(紅い首領と貴族たち)の策略と軍事的冒険である。というのは、アメリカとの貿易交渉において、中国全体主義・特権官僚の権威は大きく傷ついた。そして、アメリカとの貿易戦争は一休み中にすぎない。そこに、今回の新型肺炎である。

 「WHOは30日夜ようやく緊急事態宣言を出すも、中国への渡航・交易制限を否定し、むしろ中国の努力を評価した。事務局長と習近平のチャイナ・マネーで結ばれた仲が、人類の命を危機に向かわせている。その罪は重い。(中略)

 WHOのテドロス事務局長(エチオピア人)と習近平国家主席とは入魂(じっこん)の仲である。テドロスは2005年から2012年まではエチオピアの保健大臣をしていたが、2012年から2016年までは外務大臣を務め、中国の王毅外相とも非常に仲が良い。

 エチオピアは『一帯一路』の要衝の一つで、たとえば鉄道建設などにおいて中国が最大の投資国(85%)となっている。チャイナ・マネーなしではエチオピアの国家運営は成り立たない。そのことを熟知している中国は、それまでの香港のマーガレット・チャンWHO事務局長(注:10年間務めた)の後任選挙でテドロスの後押しに走り回ったが、2017年5月23日のWHO総会における選挙で見事に成功している。中国の狙い通りテドロスが当選し、2017年7月1日に事務局長に就任したわけだ。(中略)

 中国紙は、習近平と会談したテドロスが概ね以下のように述べたと伝えている。

 ―― 中国政府が打ち出している政治的決心は尊敬に値する。習近平自身が自ら率先して予防対策と治療に関する指揮を行い、国を挙げて全力を注いでいるその姿は絶賛に値する。中国人民を守るだけでなく世界人民をも守ろうとするその姿勢に、WHO事務局長として感謝する。

 この日同時に、国連のグテーレス事務総長が『ほぼ同じ言葉』を用いて、中国を絶賛したのは注目に値する。グテーレスはポルトガル人。中国の特別行政区であるマカオをかつて植民地支配していたのはポルトガルなので、その関係を通して、『中国とグテーレス』は非常に緊密な関係にあり、2016年末で国連事務総長の任期が切れる潘基文(パンギムン)に代わってグテーレスを次期事務総長に押し上げるべく水面下で活発に活動したのも習近平政権だ」と、遠藤 誉は暴露している。

 このWHO事務局長と国連事務総長のあからさまな忖度(へつらい)があっても、中国・習近平指導部の権威失墜は、極めて大きなものであろう。全体主義国家の指導部としては、何とかして、権威・威信の回復を図らなければならない。かつてソ連が、最後の転落でアフガンに侵攻したようなことが尖閣諸島などで起きないとは言えないのである。国家、とりわけ全体主義国家は、軍事的冒険の勝利によって失墜した権威を回復しようとするのであるから。

 

【補】

 「台湾の国防部(国防省に相当)は2月10日、中国軍の轟(H)6爆撃機が同日午前、西太平洋に進出した際、護衛機が台湾海峡の中間線を越え台湾本島側に侵入したと発表した。中間線は中台間の事実上の停戦ラインで、中国軍機の中間線越えが明らかになるのは2019年3月末以来。

 国防部によると、侵入時間は『短時間』で、台湾側の戦闘機が無線で警告し、中国軍機は中国本土側に戻った。機種や詳しい飛行経路は明らかにしていない。

 中国軍は9日にも、H6と殲(J)11戦闘機、空警(KJ)500早期警戒管制機の編隊がバシー海峡から西太平洋に進出し、宮古海峡を経て基地に戻る訓練を実施している。

 中国国営新華社通信のサイトによると、中国で対台湾事務を主管する国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は10日、台湾の与党、民主進歩党の指導者が、『米台結託の新たな動きを画策している』と主張。軍の行動は台湾・頼清徳次期副総統の訪米に対抗したものだと示唆した。

 一方、台湾で対中政策を主管する大陸委員会は10日、中国当局新型コロナウイルスの感染の拡大防止に集中するべきで、『民族主義感情をあおって注目点をそらすな』とする声明を出した」(産経新聞)。

 

【補】

 「北朝鮮新型コロナウイルスの拡散を防ぐため中国やロシアとの国境を封鎖、海外との取引もほとんど絶たれており、国内経済への大きな打撃が懸念されている。経済発展を掲げる金正恩朝鮮労働党委員長にとって痛手は避けられない情勢だ。

 すでに近隣諸国との航空便や列車の運行を取りやめ、最近入国した外国人には数週間の強制検疫を実施、海外からの観光客受け入れも中止しており、国の閉鎖に拍車がかかっている。『彼ら(北朝鮮当局)は貨物の流入を許さず、中国人も締め出している』と、中国との国境付近の状況を直接知る人物は語った。

 北朝鮮ではこれまで新型コロナウイルスの感染は確認されていない。これは、同国が頼っている中国など経済的つながりが断絶され、あるいは極端に制限されていることも意味する。

 脱北者でソウル在住のカン・ミジン氏は『北朝鮮市場経済だけでなく、国の経済全体に大きな影響が及ぶだろう。北朝鮮は国産を推奨しているが、菓子であれ衣服であれ原料は中国から輸入している』と述べた。

 ウラジオストク極東連邦大学のアルチョム・ルキン教授は、北朝鮮の経済的リスクの度合いは、閉鎖の長さにかかっていると指摘。『数か月あるいはそれ以上になれば、相当な悪影響を与えることは確かだ』と述べた。

 最近の韓国の貿易協会のリポートによると、2001年には17.3%だった北朝鮮の対外貿易に占める中国の割合は、去年91.8%に達した。数千人の中国人観光客も大きな経済効果をもたらしている。

 米国との非核化交渉が暗礁に乗り上げるなか、今回の新型ウイルス危機で北朝鮮の立場が弱まることも考えられる。

 ルキン氏は、経済的苦境を埋め合わせるため、北朝鮮が長距離弾道ミサイル発射や核実験など挑発行為に出る可能性を指摘。『コロナウイルス問題がすぐに解決されなければ、北朝鮮の状況は今年一層厳しくなる』と述べた」(2020/02/04 ロイター通信)。