断章124

 平成の30年間、日本は黄昏(たそがれ)てきた。ここでの「黄昏」の意味は、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」のことである。

 黄昏の後、藍色の空が広がるひとときのことを「禍時(まがとき)」という。「禍時(まがとき)」は、「逢魔時(おうまがとき)」とも言う。読んで字のごとくである。禍(わざわい)や魔(ま)が訪れる時刻である。日本は、ついに「禍時」に入りつつあるのだろうか?

 不運は重なり、「弱り目には、祟り目」となりがちである。巨大地震・疾病拡大・スタグフレーション・金融崩落。さらに《備え》を固くしなければならない。

 

 「感染が拡大している新型肺炎をめぐり、医療機関に診察を断られる『たらい回し』とも言える事態が生じている。市中感染が疑われる患者も出始めているが、ウイルス検査の要件が厳しく、すぐに受けられない人も。関係者は『検査基準があいまいで、医療現場も混乱している』と指摘する。

 厚生労働省によると、検査対象となるのは、新型肺炎患者との濃厚接触や流行地域への渡航歴があり、37.5度以上の発熱と入院が必要な肺炎が疑われる症状がある場合。ただ、実際に検査するかは医師の総合的判断に委ねられている。

 東京都内に住む公務員の30代男性は、17日に39度の高熱が出て病院に行き、台湾への渡航歴を伝えると、帰国者・接触者相談センターを案内された。センターでは検査対象外の地域と言われ、別の2カ所の病院でも設備の不備などを理由に診察を断られた。ようやく受診できた総合病院で肺のX線撮影をしたが異常はなかった。その後、回復し仕事に復帰した男性は『時期が時期だけに仕方ない』と話した。

 武漢市に滞在していた人と接触歴がある東京都新宿区の男性会社員(29)も12日夜に39度発熱し、だるさや下痢の症状が出た。同センターに連絡したが、濃厚接触ではなく一般の医療機関を受診するよう促された。都内の病院には診察を拒否され、勧められた感染症専門病院で受診した。

 新型肺炎は症状からの判別が難しく、感染しても重症化しないケースが大半とされる。千葉県疾病対策課の担当者は『実は感染していたが治ったという人も多いのでは』と推測する。20日に感染が確認された同県の70代女性は当初、経過観察となり、16~18日に観光バスなどを利用したツアーに参加。その後も症状が続いたため訪れた病院で初めてウイルス検査を受け、陽性と判明した。

 東京都の担当者は、受診拒否について『(院内感染のリスクなどを恐れ)医療機関も過剰反応しているのでは』と指摘。『検査基準の〈医師の総合的判断〉という文言があいまいで、現場も混乱している可能性がある』と話す。

 NPO法人医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんによると、感染が疑われるが軽症で検査できない人が連日のように訪れている。上さんは『重症でなければ検査できないという基準はおかしい。政府は患者の不安に応える視点が欠如している』と批判した」(2020/02/24 時事通信社)。

 

「2020年1月24日~1月30日。

根室半島南東沖の地震で最大震度4を観測 今期間中、全国で最大震度4を観測した地震が1回、最大震度3を観測した地震が3回発生しました。

1月31日~2月6日。

茨城県南部の地震で最大震度4を観測 今期間中、全国で最大震度4を観測した地震が1回、最大震度3を観測した地震が1回発生しました。

2月7日~2月13日。

福島県沖の地震、及び択捉島南東沖の地震で最大震度4を観測 今期間中、全国で最大震度4を観測した地震が2回、最大震度3を観測した地震が1回発生しました。

2月14日~2月20日

千葉県北東部の地震で最大震度4を観測 今期間中、全国で最大震度4を観測した地震が1回、最大震度3を観測した地震が3回発生しました」(気象庁週間地震報告)。

 

 「先週20日に発表されたアメリカの2月フィラデルフィア連銀製造業景況指数は36.7と、予想の11.0、1月の17.0から大きく上昇した。この数値は3年ぶりの高水準だった。だがこの日のNYダウの引け値は128ドル安の2万9219ドルと低調。日本や韓国など中国外での新型コロナウイルスのまん延を嫌気し、一時は388ドル安まであった。

 そして翌21日のダウは227ドル安の2万8992ドルと続落した。2月製造業PMI速報値が50.8と、1月の51.9から予想以上に悪化し、昨年8月来で最低となった。またサービス業PMI速報値も49.4と予想外に50を割り込み、新規受注も2009年以降で初めての50割れで、総合PMIは49.6と、政府機関が閉鎖された2013年10月以降で最低を記録したことが下げの原因だった。

 冒頭のように強い景気指標が出ても、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に株を売り、21日のように景気指標が悪いとそのまま売り材料とするNY市場の『場味』(引用者注:感触のこと)はこの2日間極めて悪い。

 しかし、この間、株安に逆らうように、米ドルは1ドル=112円台に急騰した。ここで注目すべきは、ダウの下げを優先させたとは言え、大きなサプライズであった『ドル円112円』に対する日本株の反応の悪さだ。このところずっと続いていた『円安=株高』の構造が変わったかと思わせるような動きで、日本株の場味はさらに悪い。

 円安が株高につながらないのは、今回の112円の円安がドル高半分、日本売りの円安が半分で出来上がっているとの見方が多いからだ。新型コロナウイルスの景気に与えるダメージを警戒し、世界が結束して景気支援策を出す中で、日本の出遅れが目立つ。

 すでに異次元緩和を出し続けている日本としては、もはや打つ手がないのかとの印象を世界に与えている。しかも、今の国会の主役はコロナでも景気でもなく『さくら』(引用者注:桜を見る会)では、世界の売り屋ファンドに狙われるのは当然だ。彼らから『世界で最も安心して売れる日本株』との声が聞こえて来るのは極めて残念なことだ。筆者には、円安も、日本株の低迷も、アベノミクスの追加緩和策発動への催促相場(政策当局などに対応を迫る相場)に見えてならない。

 20カ国・地域(G20財務相中央銀行総裁会議サウジアラビアの首都リヤドで22日開催された。麻生太郎財務相は初日の討議終了後の会見で、財政余地のある国には果敢な措置への期待を表明したことを明らかにした。日銀の黒田東彦総裁も前日の月例経済報告関係閣僚会議で、新型コロナウイルスが内外経済に与える影響に日銀として最大限の注意を払うと強調したというが、日本は率先垂範できるのだろうか。

 実際、国内景況感は極めて厳しい。2019年10~12月期実質GDP速報値は前期比1.6%減、年率換算では6.3%減となった。コロナウイルスの影響を考えるとおそらく1~3月期もマイナスとなる可能性が高い。2四半期連続マイナス成長なら『テクニカル・リセッション、景気後退期入り』となる。

 ところが、その後発表された2月月例経済報告では、輸入は、前回の『おおむね横ばい』から『このところ弱含んでいる』に判断を下方修正したが、個人消費は『持ち直している』との表現を維持した。これでは金融緩和策追加的出動はイメージ出来ず、売り方ファンドは安心して日本を売れるはずだ」(2020/02/24 東洋経済・ケイアセット代表 平野憲一)。

 結論として「ここはあわてず焦らず、全体株価の回復を静かに待ったらどうか」と言って、パニック売りを戒めてはいるけれども、信号は完全にイエローである。