断章129

 「金融市場の混乱が止まらない。3月9日、ニューヨークダウ平均株価は一時2000ドルを超す急落となり、S&P500指数はサーキットブレーカーが発動されて売買が停止される事態となった。・・・さらに、原油価格も先週、サウジアラビアとロシアが減産で合意できず、サウジが一転、増産を示唆したことで、WTI原油で1バレル当たり41ドルまで下げ、先物では30ドルも割り込んだ。産油国の財政悪化という材料も加わり市場の混乱に歯止めがかからなくなった」。

 これまでバブルに踊ってきたニューヨーク市場の関係者は、「気が狂いそうな相場展開だ。新型コロナウイルス懸念で市場が不安定になっているところに、今度は(協調減産決裂による)原油安が追い打ちになった。原油価格の急激な値下がりで第2の金融危機が訪れる恐れもある。金融機関はただでさえ金利低下で収益が低迷しているのに、ここにきて原油安となれば石油会社への打撃は免れず、銀行が抱える不良債権も膨らみかねない。こうした金融危機再来の危険性は先週末に原油が急落するまで想定外だった」と語った。(2020/3/10 日本経済新聞

 

 「アメリカは大規模な財政政策を発動するしかない。それはトランプの再選を助ける、中間層向けの大幅減税かもしれない。

 FED連邦準備制度)が日銀のように直接株式(ETF)を買うようにする方法か、政権と歩調を合わせ、財政出動を支えることだろう。

 いずれにしても、それで長期金利は反発する。長短金利のスプレッドが復活すれば、銀行株を中心に、株は一時的に戻る」(東洋経済・滝澤 伯文の記事を再構成)。

 

 しかし、その後に予想されること(「予想はウソヨ、予測はクソヨ」だが)は・・・

 「今回の新型コロナウイルスの感染拡大や景気の減速によって、将来的に一番警戒すべきなのは、中国をはじめとした生産の落ち込みによってサプライチェーンが分断され、コスト・プッシュ型の悪いインフレが起きるというシナリオである。

 今回の原油価格急落によって、そうした懸念がさらに高まることになるだろう。

 一方で、シェールオイルなどの開発が滞り、生産が伸びなくなってきたころに、FRB米連邦準備制度理事会)をはじめとした世界の主要中銀の積極的な緩和策や政府の財政出動によって景気が持ち直し、原油需要がしっかりと回復してくるならば、需給が急速に引き締まる中で価格が70~80ドルまで一気に回復することがあっても、何ら不思議ではないところだ。

 その後、こうした原油価格の急反発がインフレの進行に拍車を掛けるようになれば、FRB金利引き上げに転じざるを得なくなることも十分にあり得るところだ。まだ十分に景気が回復していない段階で、こうした事態に陥るようなことがあれば、せっかく回復の兆しが見えた景気も、改めて大きく落ち込むことになるだろう。景気が後退する中でインフレが進行するというスタグフレーションに陥るリスクは、一段と高まったと考えておいた方がよい」(2020/03/09 東洋経済・松本 英毅)。

 

 そして、「その先に待っているリスクは、金利が上がることによる、債券市場のバブル崩壊の可能性である。実はそれが『新型コロナショックの本番』の可能性がある。混乱は、リーマンショック時のような信用不安よりも先に、現金が不足する事態への対応力だろう。恐らく、そこで普遍的なUBI(最低所得保障)が始まるかもしれない」(東洋経済・滝澤 伯文の記事を再構成)。

 ユニバーサルベーシックインカムであれ、ユニバーサルベーシックサービスであれ、実態は生存ギリギリラインの下級国民への“配給”を意味する。ここでは、ユニバーサルベーシックインカムの導入が仄(ほの)めかされているにすぎないが、この時に起きていることは、世界金融恐慌であろう。