断章149

 日本共産党に対して、「かろうじて命脈を保っている」とすることは、過小評価ではないだろうか?

 というのは、2019年現在、日本共産党は、衆議院議席数12 / 465(3%)、参議院議席数13 / 245 (5%)、都道府県議数 138 / 2,668 (5%)、市区町村議数 2,503 / 29,762 (8%)、党員・党友数 約280,000人の党勢を維持していたからである(出所・ウィキペディア)。

 

 1990年代初めのソ連圏の崩壊、国際共産主義運動の壊走から実に30年近くになる。にもかかわらず、なぜ、これほどの党勢を維持できているのだろうか(しかも、衆院議席に限っていえば、小選挙区制の下では、ちょっとした“風向き”で議席数をさらに増やせる)。

 

 第1に、マルクス主義共産主義)は、「科学的社会主義」を自称するのであるが、それは、実は《教義》と化している。日本共産党の古参党員たちにとっては、もはや宗教的なアイデンティティでもある。だから、ソ連圏の崩壊、国際共産主義運動の壊滅を横目に(思想的判断停止をして)変わりなく過ごせたのである(注:「神に頼る事ができず、民衆からも遊離した」迷えるインテリにとって、宗教的な天国への希望に代わる、「共産主義」という地上の天国の夢を与えたマルクス主義は、“救済”だった)。

 

 第2に、保守の思想家・理論家たちは、事実としてのソ連圏の崩壊と国際共産主義運動の壊滅に満足して、この問題だらけの現代社会そのものが、繰り返し“マルクスリバイバル”を呼び起こすことを見過ごし、マルクス主義共産主義)を“思想的理論的に完全に葬り去る”営為に取り組むことを怠ってしまった。だから、日本共産党はこの“マルクスリバイバル”を利用して延命を図ることが出来たのである。

 

 第3に、日本共産党が、マスコミ、教育、医療、福祉、消費生活の現場に、ネットワークを戦略的に涵養し育ててきたからである。市町村レベルでは福祉住宅や雇用促進のサービス利用において日本共産党は今も頼られる存在である。

 

 パレスチナガザ地区を実効支配しているのは、イスラム原理主義組織ハマースだという。ハマースは、これまで創設者のアフマド・ヤシンなど多数の幹部を、イスラエルによって殺害された。今も、イスラエルのドローン攻撃で傘下軍事組織の要員を暗殺されている。これまであったイスラム圏からの支援も減少しているらしい。

 それでも、ハマースは健在である。なぜなら、第1に、メンバーが宗教的信念を有しているからである。第2に、教育、医療、福祉などの分野で地道な活動を継続して民衆の支持を獲得しているからである。

 日本共産党も又、ハマースと同じ構造的な強さを持っているのである。