断章160

 スターリン・モデルのロシア共産主義は、軍隊的でサディスティックな全体主義だった。

 毛沢東・モデルの中国共産主義は、アジア的専制的な全体主義だった。

 習近平・モデルの中国共産主義は、官僚制的に緩和された全体主義であるが、テクノロジーにたけた全体主義である。デジタル技術をフル活用する一党独裁である。デジタル・レーニズムと呼ばれている。

 

 「中国の権力者は共産党による一党支配体制の動揺を恐れるあまり、外からの批判を敵視し猛攻撃する。格差などに不満をためる庶民は居丈高な外交に『強い祖国』をみて留飲を下げる。海外の冷えた視線には鈍く、独善ぶりはトランプ氏の米国第一主義と似る。

  異なるのは権力の失敗を市民の意思で修正する民主主義が働かないこと。いくら強固な監視社会を築いても、不都合な情報に目を背け、かえって危機を深めるもろさがつきまとう。習氏は2018年の憲法改正で『2期10年まで』という国家主席の任期制限をなくし、2023年以降も権力の頂点にすわる意思を示した。習氏からみれば失点の恐れがある改革より、内政の不安を潰す統制強化にいそしむことが最善となる。

 『来年の私は生きているだろうか』。香港の民主活動家、周庭(アグネス・チョウ)氏は5月27日、東大主催のウェブ討論会で悲壮なひと言を漏らした。翌日、中国は『香港国家安全法』の導入を決めた。司法の独立や言論の自由という香港の価値の礎がゆらぐ」(2020/06/21 日本経済新聞・大越 匡洋)。

 

 「中国の国会に相当する全国人民代表大会全人代)常務委員会委員の譚耀宗氏は22日、『香港国家安全維持法案』が外国人にも適用されるとの見方を示した。香港はアジアの金融・ビジネスセンターとして外資系企業が多数進出しており、運用面で世界的に懸念が高まる可能性が出てきた。

 日本経済新聞のインタビューに答えた。譚氏は『法案の立法作業は順調だ』として、今月28~30日に開かれる常務委で可決される可能性を示唆した。

 譚氏は親中派の重鎮で香港唯一の常務委の委員として法案成立に向けた議論に参加している。国家安全法案について『国籍や人種、経歴、職業に関係なく法律に違反することはできない』と述べ、誰もが例外なく適用されるとした。香港には日本企業も含め外資系企業が多く拠点を置く。法案の運用に懸念が高まる可能性が高い。

 同法案には中国政府が管轄権を行使できる規定が盛り込まれる見通し。譚氏は『非常に極端なケースだ。どのような場合に適用されるか取り決めもできる』としつつ、『起訴や裁判が中国本土で行われる場合があり得る』と明言した。香港で拘束した容疑者を本土に送り、裁判にかけるケースを示唆した発言だ。

 また譚氏は、まだ明らかになっていない刑罰をめぐり法案の原案段階では『軽微な罪は禁錮3年、そのほかは禁錮5年から10年』とした。そのうえで『(この罰則では)寛大すぎるという意見が多く、今後の立法作業に反映する』と述べた。政権転覆などの重大な罪はさらに刑罰が重くなる見通しを示した」(2020/06/22 日本経済新聞)。

 

 日本をおとしめるためなら、どんな些細な事にも反応する、日本の自称「知識人」リベラルたちは沈黙している。寂として声なし、である。

 

【補】

 「香港の公共ラジオRTHKなどは17日、国家政権転覆扇動罪に問われていた中国の弁護士・余文生氏に、江蘇省徐州市の裁判所が懲役4年、政治権利剥奪(はくだつ)3年の判決を言い渡したと報じた。連絡を受けた妻によると、余氏は無罪を主張し、上訴を求めているという。

 人権派の弁護士として知られる余氏は2018年1月、国家主席の選任に民主選挙導入などを提言する公開文書を発表し、北京で当局者に拘束された。2019年5月に徐州で非公開の裁判が始まっていた」(2020/06/17 読売新聞オンライン)。

 

【補】

 「中国の両会(政治協商会議と全国人民代表大会)の開幕を10日後に控え、反体制人物に対する中国当局の逮捕と軟禁が続いている。当初3月初めに開催される予定だった両会は今年、新型コロナウイルス感染拡大の影響で21日に開幕する。

 香港サウスチャイナモーニングポスト(SCMP)の12日の報道によると、中国の憲法学者の張雪忠氏は9日、全国人民代表大会(全人大)に出席する代表に公開書簡を送ったが、翌日の10日夜に上海の自宅で警察に逮捕され、連行された。

 張雪忠氏はWeChatに公開書簡を載せ、これは当日、中国オンラインを騒がせた。張氏は『表現の自由のために戦う最善の方法は、すべての人があたかもすでに表現の自由を得たように話すことだ』とし、政府を批判した。

 今年43歳で、海外メディアを通じて中国の政治体制を批判してきた張氏は、現代的な憲法の不在が中国の支配体制を大きく後退させたとし、『新型コロナの発生と拡大がこうした中国体制の問題点を表す良い例だ』と指摘した。

 張氏は『武漢が封鎖される前にも武漢当局は李文亮医師を含め、今回の伝染病の出現を知らせた市民を取り調べて処罰した』とし『これは社会に対する政府の弾圧がどれほど強く、また恣意的に行われているかを見せている』と述べた。

 張氏は中国の政治体制が透明性欠如と社会監督の不在を招いていると批判した。『1月3日以降、中国外交部は定期的に米国政府にコロナ状況を知らせたというが、なぜ中国疾病統制センターは自国民にこうした事実を知らせなかったのか』とし『自国民にこのように無責任な態度はあまり見たことがない』ともコメントした。『コロナ発生を調査して報道する独立的なメディアもなく公衆に独立的な忠告をする医療専門家も中国にはいない』と嘆いた。
 また『中国社会と人民に対する政府の長期間にわたる強い統制が中国社会の機構と自立能力を徹底的に破壊した』と主張した。したがって『全人代の代表が“過渡政府”を作り、現代的な政治原則に基づく憲法を作るべきだ』と強調した。張氏は全人代がすべての政治犯を直ちに解放し、政党と民間報道機関の設立を認める決議案を採択しなければいけないと指摘した。

 張氏は華東正法大学で講義をしていた2013年に解雇された。その後、人権弁護士として活動してきたが、昨年、弁護士の資格までも取り消しになった。張氏の知人は、張氏は公開書簡を発表した後、逮捕される覚悟をしていて、10日夜にパトカー3台が自宅に来て連行したと伝えた。

 一方、香港明報は11日、湖北省で中国政府に批判的な見解を表出してきた杜導斌氏が5月から自宅軟禁中と報じた。杜導斌氏が当局のコロナ対応を批判したことに対する報復だと、杜氏の知人らは伝えた。

 新型コロナ拡大初期に杜氏は中国政府の対応を批判した徐章潤清華大法学教授に賛辞を送った。徐教授は『怒る人民はもう恐れない』と題して、中国のコロナ対応失敗は市民社会言論の自由の抹殺のためだと主張した。

 杜氏は『徐章潤氏こそが権力を恐れず国家の進むべき方向を知らせた本当の男だ』と称賛した。しかしその後、警察が杜氏のマンションのベランダに鉄条網を設置し、外部との連絡を遮断した後、死を迎えることもあると脅迫までしていると、杜氏の知人らは伝えた。

 現在3人の警察が杜氏の自宅に常駐し、毎日、反省文の作成を要求していると、明報は話した。今年56歳の杜氏湖北省の地方公務員だったが、2000年からインターネットに反政府的な掲載を始め、2004年には国家転覆罪で懲役3年を言い渡された」(2020/05/12 韓国紙・中央日報)。