断章185

 日本のマスコミだけを見ていれば、あたかも、「日本は住みにくく生きづらい国」の代表のようである。ところが、諸々の世界ランキングにおいて、日本はさほど悪くは見られていない。例えば・・・

 

 「オーストラリア・シドニーに本部がある国際関係シンクタンクの経済平和研究所(IEP)が12日に発表したことしの「GPI=世界平和度指数」(各国の犯罪件数や警察・軍事力などをもとに算出)に関する報告書では、もっとも平和な国はアイスランド(1.078点)で、2008年から1位の座を守っています。以下、ニュージーランド(1.198点)、ポルトガル(1.247点)、オーストリア(1.275点)、デンマーク(1.283点)がトップ5に入った。そのほかカナダ、シンガポールチェコ、日本、スイスの順で後に続いた。

 もっとも平和でない国はアフガニスタン(3.644点)で、シリア、イラク南スーダン、イエメンなどが下位に名を連ねました。

 一方、経済平和研究所は、ことしは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で各国の政治経済状況や国際関係が悪化するなど、世界平和においてもネガティブな影響を与えるだろうと分析しています」(2020/06/19 ニフティ・ニュース)。

 

 また、昨年9月26日、「米国の非営利団体である社会発展調査機構は、『社会発展指数(SPI)2019』(いわゆる世界の住みやすい国ランキング)を発表した。

 SPIは持続可能な発展のために国際連合(UN)が設定した17の目標に基づき各国・地域の状況を評価し、生活の質を調査する。

 今年最も住みやすい国に選ばれたのは、90.95点を得たノルウェーだった。ノルウェーは前年に続き2年連続で1位となった。以下、デンマーク、スイス、フィンランドスウェーデンがトップ5にランクイン。そのほかにもアイスランドニュージーランド、ドイツ、カナダなどが上位に入った。

 一方、アジアでは日本が10位、韓国が23位、中国が89位だった」(chosun online)。

 

 祖国に対する否定的な見解が多い原因については、まず日本マスコミの自虐僻を指摘したい。と同時に、次のような知見もある。

 「日本の食事のレベルは、海外と比べても本当に高いと思います。アメリカのセブン・イレブンに行くと、そのことがよくわかります。失礼ながら、日本人が見ると、まずいパン、甘いだけの巨大なケーキ、干からびたサラダに驚きます。

 日本人は幸せを感じるのが下手になっているようです。本当はもう十分幸せなのに、そのことに気づいていない。

 牛丼を食べて、『こんなにおいしいものがたった400円で食べられるなんて、自分はなんて幸せなんだろう』と感じるか、それとも『400円の牛丼しか食べられないなんて、自分はなんて不幸なんだろう』と感じるか。これをどう感じるかで、幸福度は決まるのです。

 物質的な面でも、インフラの面でも、恵まれた暮らしを享受しています。なのに、なぜ日本人は『もっと多くの財産があれば幸せなのに』と思ってしまうのでしょうか。

 理由の1つとして、日本人の生まれ持った遺伝子が関係していると考えられます。別名『幸せホルモン』と呼ばれる、セロトニンという神経伝達物質をご存じでしょうか。このセロトニンが脳内から減ると、人は不安を感じたり、気分が落ち込んだりしやすいと考えられています。

 セロトニンの分泌量を左右するのが、『セロトニントランスポーター遺伝子』です。この遺伝子にはセロトニンの分泌量の少ない『S型』と、分泌量の多い『L型』の2種類があり、その組み合わせによって、『SS型』『SL型』『LL型』の3つに分かれます。

 SS型の遺伝子を持っている人は不安を感じやすい人、LL型の遺伝子を持っている人は楽観的な人、SL型はその中間ということになります。不安を感じやすいかどうかは、ある程度、生まれつき決まっているのです。

 調査によれば、日本人の遺伝子はSS型が65%を占めています。SL型は32%、LL型はたった3.2%にすぎません。一方、アメリカ人は、SS型が19%。SL型が49%、LL型が32%という結果が出ています。

 つまり、日本人は不安を感じやすい民族なのです。『もっと多くの財産があれば幸せなのに』と思う人が多いのは、日本人が強欲だからではなく、心配症だからなのでしょう」(2020/06/10 東洋経済:前野 隆司 ・ 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)。

 

【参考】

 「イースターブルックが行った調査によれば、アメリカとヨーロッパでは1950年代からこれまでの半世紀を超える歳月で、富はめざましく向上したが、人々が感じる幸福度は横ばいで、しかも不安や抑うつの発症率は大きく上昇している。その他複数の調査でも、人々の幸福度がすこしも増加しておらず、多くの人が未来について深い悲観を抱いているという結果が出ている。社会の物質的な豊かさと、そこに住む人々が感じている幸福や安心の度合いには何の関連も認められなかった」(引用:『脳科学は人格を変えられるか?』)。