断章196

 〈だけども 問題は 今日の雨 傘がない〉(♪井上 陽水)

 「9月1日は13時時点で『新型コロナ』関連の経営破たん(負債1000万円以上)が5件(倒産2件、弁護士一任・準備中3件)発生、2月からの累計は、全国で446件(倒産390件、弁護士一任・準備中56件)に達した。また同日、これまで全国で唯一発生していなかった高知県でも発生したことで、コロナ関連破たんは全都道府県に広がった。月別推移では2月2件、3月22件から4、5月は80件台に急増。6月は単月最多の103件が発生したが、7月は80件、8月は67件と前月を下回って推移した。このほか、集計対象外だが、負債1000万円未満のコロナ関連の小規模倒産は累計18件。緊急融資や金融機関・取引先のリスケ対応などの各種支援が効果を見せ、コロナ関連破たんの大幅な増加という事態は避けられている。ただ、支援に依存しながら経営を維持している企業は多く、悪影響が長引けば長引くほど、体力の乏しい企業の脱落は避けられない。引き続き、コロナ関連破たんの動向は予断を許さない状況が続いている」(2020/09/01 東京商工リサーチ)。

 

 わたしは、出来高払いの飛び込み営業を辞めて独立・自営に転換した。その後、実母の痴呆が進んで目を離した隙に徘徊し始めるまで、25年間ほど小商売をした(もっとも、つれあいは、「もう少し長く商売すればよかった」と言う ―― 人間は、すぐに過去を忘れる。実母が徘徊していた頃は、商売そっちのけで探し回っていたのに)。

 ある意味、ラッキーだった。というのは、コロナ禍の現在なら、飛び込み営業も商売開業も、おそらく無理だったと思うから。

 だから、「仕事がない。金がない」ということが、他人事とは、思えない。そうしたことが続けば、人としての誇りも失われていくのだから。

 

 「新型コロナウイルスの感染拡大後、日本は主要国で初めて政治リーダーが交代する。安倍晋三首相が辞任を決断した背景にはコロナ対策に空白を生まない道筋をつけたことがあった。国会審議を経ずに支出できる約10兆円の予備費が支える。次期政権でも医療や経済への対策を切れ目なく実行する土台となる。

 『コロナ対応に障害が生じるようなことは避けなければならない。新体制移行はこのタイミングしかないと判断した』。首相は8月28日夕、辞任の意向を表明する記者会見の冒頭で、検査能力の拡充や医療提供体制の強化といったパッケージを発表した。

 同日午前、首相と麻生太郎財務相の会談に途中まで同席したのが財務省の太田充次官、矢野康治主計局長ら同省幹部だった。対策を裏付ける財源が予備費だからだ。近く閣議決定し、支出を始める。

 政府関係者は『首相は第1次政権で“投げ出し”批判を浴びた。コロナ対策に空白が生まれる状況では辞められなかった』と推し量る。秋の臨時国会で第3次補正予算を成立させるまで待つならば、首相が退陣を判断する障壁になっていたかもしれない。(中略)

 予見が困難な新型コロナの感染状況を踏まえ、20年度第1次補正では1.5兆円、第2次補正は10兆円を計上した。例年の約20倍にも上る異例の金額だ。計11.5兆円のうち9月3日時点で使ったのは1.4兆円で、まだ10兆円程度残る。

 第2次補正で計上した10兆円は財務省が与党からの主張を飲んだ経緯がある。『予備費50兆円を積むべきだ』。緊急事態宣言が解除される前の5月、自民党の会合ではこんな強硬論が相次いだ。当時、1次補正の規模が不十分との批判を浴びていた財務省では『やむを得ない』との雰囲気が漂った。『ポスト安倍』政権はこの巨額の予備費を活用できる」(2020/09/04 日本経済新聞)。

 観光宿泊、飲食、小売りなどの業種への打撃は極めて深刻であるが、今なお、高齢化社会やデジタル化を支える人材への引き合いは強い。職業訓練制度などの再設計・充実を図ったりして、職種転換を国ぐるみで推し進めなければならない。