断章198

 以下は、9月7日付けの韓国・朝鮮日報の記事である。

 「『海外勤務可能なDRAM設計者募集△担当業務:10ナノメートルDDR4設計△経歴:S、H半導体関連部門勤務社優遇△年俸は最高条件で待遇可能、住宅提供、子女のインターナショナルスクール就学保証』

 最近韓国の求人サイトに掲載された広告だ。中国で勤務するDRAM技術をスカウトする内容だ。サムスン電子(S)とSKハイニックス(H)での勤務者を優遇するとうたっている。30ナノメートル以下のDRAM設計技術は国家核心技術に指定されている。

 8月初めには研究開発費100億ウォン以上が投じられた最新のディスプレー工程技術を中国企業に売り渡そうとした一団が検察に摘発された。一団にはサムスンディスプレーの元首席研究員や同社と取引がある設備業者の代表らが含まれていた。

 半導体、ディスプレー、バッテリーなど韓国の先端技術と人材を引き抜こうという中国の試みはますます露骨になっている。これまではヘッドハンターなどを通じ、ひそかに人材を採用する方式だったが、今では堂々と求人サイトで募集をかけている。米国の制裁で半導体などの先端部品・技術の供給を受けられなくなった中国が技術の自立に向け、韓国の技術と人材の確保に乗り出したというのが業界の見方だ。

 中国による韓国からの技術・人材を確保しようとする動きは今に始まったことではないが、最近はその動きがますます強まっている。今月1日現在で求人サイトには半導体エッチング工程技術者(次長・部長クラス)、半導体熱処理工程の経歴者、OLED中間体材料研究開発(役員クラス)、自動車パワーバッテリーシステム開発(部長クラス)などの募集が掲載されている。勤務地は全て中国だ。

 中国のバッテリーメーカー、寧徳時代新能源科技(CATL)は昨年7月、大規模な採用を行い、韓国の人材を対象にそれまでの年俸の3~4倍という破格の条件を提示した。部長クラス以上には税引き後で3億ウォンに達する年俸を提示したとされる。子女のインターナショナルスクール入学、清華大など名門大学への入学を保証するなどと言って接近する例もある」。

 

 「因果はめぐる糸車」である。かつては、韓国企業が同じことをしていたのである。

 例えば、「東芝の企業秘密を韓国の半導体大手『SKハイニックス』(以下、SK社)に漏洩したとして、杉田吉隆被告(52歳)が不正競争防止法違反(営業秘密の不正開示)罪で起訴された。

 『韓国の企業から億単位のカネを稼いできた。一生働かなくても遊んで暮らせるカネがある』。周囲にそう吹聴していたという杉田被告。そのカネは東芝が営々と築いてきた最先端技術をスパイし、韓国企業に横流しすることで得られたものだ。

 杉田被告は米半導体大手『サンディスク』日本法人に在職中の'08年1月から5月にかけて、提携先の企業である東芝の主力製品『フラッシュメモリー』の研究データを違法にコピーしたとされる。サンディスクは東芝フラッシュメモリーなどの共同開発事業を行っていて、杉田被告は東芝四日市工場に勤務していた。(中略)

 窃取した研究データを手土産に、杉田被告は2008年7月にSK社に転職する。年俸はサンディスク時代の約2倍で、千数百万円の役員待遇。韓国清州市にある高級マンションをあてがわれ、同市内の工場に勤務した。(中略)

 だが、杉田被告の幸福な日々はあまりに短かった。肝心の機密情報さえ手にすれば用済みとばかりに、SK社が2011年6月をもって契約を打ち切った」(2014/04/25 週刊現代)。

 

 あるいは、「最近、トヨタ自動車が中国・宝武鋼鉄集団の製品を一部で採用すると話題になった電磁鋼板。トヨタは、中国でハイブリッド車の需要が爆発的に増えるとにらみ、日鉄やJFEスチールなどの日系メーカーだけでなく海外鉄鋼メーカーにも調達先を広げるとみられる。

 電磁鋼板は変圧器、モーターの鉄心に使う磁性がある鋼板で、電力ロスを減らすほか、磁力を高める働きを担う。日鉄によれば、特に自動車向けは需要が急増して2025年度には2017年度のおよそ7倍に増える見込みという。

 電磁鋼板には因縁がつきまとう。日鉄(当時は新日本製鉄)は、2012年4月に変圧器などに用いる方向性電磁鋼板の製造技術を不正に取得して使用したとして、元従業員と韓国・ポスコに賠償金を求めて提訴した。2007年にポスコが争った別の裁判において、ポスコが不正に得た技術情報が中国の宝武(当時は宝山鋼鉄)に流出していたことが分かっている」(日経ビジネスの記事を抜粋・再構成)件などである。

 

 ぼうっとしていれば、やられる。やられれば、国は、勤労大衆は貧しくなるのである。