断章204

 台風、巨大高潮、集中豪雨、土砂崩れ、地震。日本は災害列島と揶揄(やゆ)されるほど、毎年多くの大規模な自然災害に見舞われる国である。また、戦後に整備された各種社会インフラの老朽化もすすんでいる。なので、防災・減災の手を緩めることはできない。

 

 地震ひとつとってみても、例えば、「9月4日午前9時10分ごろ、福井県嶺北地方で震度5弱を観測する地震があった。消防によると、福井市の1歳女児がベッドから落ちあごに軽傷、坂井市の80代女性が自宅で転倒し左足に軽いけがを負った。

 また、坂井市のショッピングセンター『アミ』では商品が棚から崩れ落ちたり天井が複数壊れたりする被害が出た。地元のえちぜん鉄道は一時全線で運行を取りやめた。JR北陸線も一時運転を見合わせたが、安全を確認した上で運転を再開した。杉本達治知事は定例会見で被害状況について説明し『火事のような大きな被害の報告はない。軽傷者2名と聞いている。大きな物的被害の報告は入っていない』と述べた。

 気象庁によると、震源地は、福井県嶺北で、震源の深さは約10km、地震の規模(マグニチュード)は5.0と推定される。津波の心配はない。原発の異常は報告されていない。県内で震度5弱以上の揺れを観測した地震は、最大震度5を観測した若狭湾を震央とする1963年3月27日の地震以来。その前は1948年6月28日の福井地震までさかのぼる」(2020/09/04 福井新聞)。

 あるいは、「9月12日11時44分頃、東北地方で最大震度4を観測する地震がありました。 震源地は宮城県沖で、震源の深さは約40km、地震の規模(マグニチュード)は6.1と推定されます。この地震による津波の心配はありません」(ウエザーニュース)と、続いている。

 しかも、東日本大震災(2万2,000人余の死者・行方不明者、被害額は約16兆9,000億円)以後の諸々の災害からの生活再建も、地方自治体の財政的制約や居住者の高齢化により、なお道半ばの地方が多くある。

 

 日本は、これまで約500兆円以上の大金を公共事業に投じてきた。おかげで、地方の建設・土建業界がうるおい、儲けた地方の金持ちが自民党の地盤・看板・カバンを支えてきたのである。

 今ここで改めて、公共事業のあり方(費用対効果など)を再検討しなければならない。そうして、地方の金持ちをうるおすだけでない、真に役立つ防災・減災事業と被災者の生活再建に役立つ公共事業に選択的に資金投下するべき時がきたのである。

 

【補】

 「老朽化した地方の橋やトンネルの5割が修繕などに着手できていない。5年周期で点検し、早めに対応するルールが形骸化している。人口減少などで必要性が薄れる道路インフラは廃止・集約も選択肢になる。国土交通省は2021年度からの社会資本整備重点計画で、市町村に再編計画の策定を促す検討に入る。(中略)

 インフラ劣化は全国共通の課題だが、対策が進んでいるのは一部にとどまる。国交省の道路メンテナンス年報によると、自治体が管理する橋やトンネルなどで14年度に点検したうち緊急・早期に措置を講じるべきだと判断したのは9497件。5年たった19年度末時点で修繕などに着手していたのは52%だけだった。

 橋やトンネルは14年7月から5年に1回、目視で点検する義務がある。12年12月に山梨県の笹子トンネルで起きた天井板落下事故の反省から、道路法の改正で導入されたルールだ。緊急・早期に措置が必要な施設は次回の点検までに対応する。

 この仕組みに従えば、14年度の点検分は19年度までに対応が進んでいるはずだ。サイクルが2巡目に入り、ルールの趣旨が守られていない実態が明らかになった。

 同じ14年度の点検分でも国交省の所管は97%、高速道路会社は99%が対応に着手している。自治体の遅れは著しい。財源や人手の不足が背景にあり、国も再編を積極的に促してはこなかった。

 国交省によると、築50年以上のインフラの割合は今後15年で、道路橋で25%から63%に、トンネルで20%から42%に跳ね上がる。手をこまぬいていれば老朽化が加速し、危険が高まりかねない。

 古いインフラを漫然と抱え続けているとコストも膨らむ。国交省の推計では、維持管理・更新費は18年に5.2兆円。計画的に対応する予防保全に取り組んでも、30年後には最大6.5兆円になる。場当たりの後手な修繕だけでは最大12.3兆円に拡大する見込みだ。

 そもそも日本のインフラは過剰とのデータもある。インフラの総量を示す公的固定資本ストックの国内総生産GDP)比は米国で61%、ドイツで45%にとどまる。日本は126%に上る。景気対策も兼ねた公共投資を進めてきた結果だ。(中略)

 国交省は5年ごとの社会資本整備重点計画の次の期間が21年度から始まるのに合わせ、自治体にインフラ再編を促す。集約・廃止を計画する自治体数の目標設定を検討する。国・地方とも財政は厳しさを増す。必要なインフラに絞って予算を投入する仕組みを整えなければ、地域の安全の確保はおぼつかなくなる」(2020/09/28 日本経済新聞を引用・紹介)。