断章219

 『独学大全』 読書猿  ダイヤモンド社・2020年刊

 自らを「拳を握って立つ女」と名乗る、アマゾン(ベスト1000)レビュアーは、「評点5つ星のうち5.0。本書があれば学習法・研究法に関する本をもう買う必要はない」と断言する。

 ―― 以下は、そのレビューのコピペ。

 「著者の読書猿氏。知的好奇心を持つ読書好きや研究者たちの間ではちょっと知られた人物です。著者のブログには、様々な分野の知(識・恵)とその学び方からアウトプット全般に関し、我々が抱く疑問や悩みに答えるノウハウや技法について紹介されています。

 ただし、本書は大学受験などをゴールとした狭義の『勉強』『独学』を目指す方にはオススメしません。他のレビュアー様がお書きのように、そこまでであれば地道な予習や復習などで間に合うからです。大学受験のみならず難関の各種試験は、比較的目的やゴールどころか動機さえ明確で、客観的評価である点数や合否もありますし。

 もちろん、読書猿氏はそうした狭義の『勉強』も包摂してはいますが、むしろ大学入学以降や社会人に向けた独学論を展開しています。そうした人々こそ学ぶ必然性や外圧がない中で、何を学ぶかはそれぞれですが、自身で学ぶ『独学』こそが身を立てる環境にあるわけです。そして己のために己で学ぶ、その目的や必然性を内発的に見出し、継続していくゆえの固有の難しさがあり、それらを扱い論じているのが本書です。

 本書を手に取る際には、『独学』の前提となるご自身の『勉強』の意味をよく問い直してニーズのズレがないようにした方がいいです。

 著者のブログや本書では、ある学問や分野を修めるならどのような形で入っていくべきか、入門書の選び方、ノートの取り方、記憶法、難解な本の読み方、図書館やDBの利用の仕方。そもそも、その前提となる、なぜ学ぶのかの動機付けや挫折の克服、継続法を最初に扱ってます。

 およそ『学習者』が遭遇することになる課題について、著者の独りよがりな極論や持論ではなく、我々の先達である『学習者』たちの知見を著者が吸収し、噛み砕いた形で紹介してくれています。

 私自身、幼少より常に劣等生としてコンプレックスを抱えて生きてきました。人よりも読むのが遅く、理解も浅い、覚えていない、答えられない。学びを喜び、いや、悦びとまで感じる人たちと己を比べるたびに、一冊の本さえ読み切れずにいる自分の弱さを呪っていましたし、いくつもの学習法や読書法、記憶法の本などを読み漁って(正確には挫折して)きました。読書猿氏のブログとの出会いはそうしてもがいている中でした。

 彼のブログは、必ずしも平易で誰にでも理解できる記事ばかりではありませんが、学ぶことを諦めたくない人が何とかその手を放さないでいるための手掛かりを、求める人に与えてくれるものです。読書猿氏の過去2冊の著作『アイデア大全』と『問題解決大全』は、膨大に学んで得た『知識のエッセンス』にあたるでしょう。

 一方で、本書は彼のように知識をエッセンスとして『吸収する方法』といえます。学習法、読書法、記憶法、自己管理など、あえて広い意味で自己啓発と呼べるものに関する本は、これまで膨大な数が出版され、これからも出版され続けるでしょう。

 しかし、その多くはタイトルや技法名は変わっていても、表向き手を変え品を変えただけで、本質はどれも同じことを言っているだけです。それは我々の悩みやコンプレックスの本質が変わっていないからであり、多くの人は耳ざわりがよく、魔法のように寝て起きたら、自分を変えてくれているようなものに憧れているからでしょう。

 本書には、魔法のような方法は紹介されていませんが、学ぶことを諦めたくないと欠片でも思っている人が貫徹すれば、確実に習得できる実用的な技法が網羅されています。

 凡百の自己啓発書のほとんどは、実際には、数百ページもある割に1冊の中で肝心の部分は数行や数ページであって、さらにその要諦(要点)は『読むだけではなく、実践してはじめて』習得できるものです。しかし、我々はそうした1冊を数日もしくは数週間費やして読み、要諦が何であったかより、『読んだという満足感』だけ得て、また次の本に飛びつきます。

 本書は我々が欲し、習得すべき本質的ともいえるいくつかの要諦を示してくれているのであって、あえていうなら、もう新たなものは買う必要のない、最後とすべき学びに関するものです」。

 

 最後に、本書の「序文」から・・・、

 「この本は確かにあまり賢くなく、すぐに飽きるしあきらめてしまう人たちのために書かれた。独学の凡人である私には、これが精一杯である。

 しかし独学の達人が書いた書物よりもきっと、繰り返し挫折し、しかしあきらめきれず、また学ぶことを再開したような、独学の凡人であるあなたの役に立つだろう」。