断章263

 「我々は、何度も読み直して彼の言葉を味わうべきだ。日常のビジネスや生活で忘れてしまいがちだが大事なことを、時にとてもシャープな表現で、しっかり思い出させてくれる。『ドラッカーからはもう学ぶことがない』などという日本人経営者がいるとすれば、それは大切なことを思い出す貴重な機会をみすみす逃しているのだ」。

 「またドラッカーはこうも言った。『ビジネスはたった2つの基本的な機能からなる。イノベーションマーケティングだ』。どちらか一方が強くても企業は成功できない。両方とも強い必要がある、と」(フィリップ・コトラー by日経ビジネス)。

 油断大敵である。経営者が、「ドラッカーからはもう学ぶことがない」と公言するような企業は、敗退するだろう。

 

 例えば、すでに「米アップルのスマートフォンの構成部品で韓国メーカーの存在感が高まっている。新型の『iPhone12』を分解調査したところ、価格ベースで韓国製の比率が27%と前モデル(iPhone11)と比べ9ポイント上昇し、日本との差が広がった。サムスン電子製を中心に有機ELパネルの採用が増えた。日本が強みを持つ分野が限られてきた」(2020/11/21 日本経済新聞)という情勢である。

 

 今のところ日本が優位を保っているロボット技術もあっという間に勢力図をひっくり返されるかもしれない。

 「新型コロナウイルスの感染拡大で患者が急増したスペインのある病院。疲れを知らぬ体力で猛活躍する看護士がいる。通常の看護士と服装が違った。白の代わりに黄色いガウンと帽子を着用した。業務にとても熱中したのか目も赤く充血している。ところが詳しく見ると…? そうだ。ロボットだ。重要なのはこれらの国籍(製造国)だ。中国だ。18日に中国環球時報はスペインFM96.7ニュースを引用し、スペインの各病院に中国製看護ロボットが投入され活躍中だと伝えた。スペインでも新型コロナウイルスが再拡散している。当然医療陣の業務負担が大きい。特に患者と緊密に接触する看護士が感染リスクに最もさらされている。上海のある企業が作ったこの看護士ロボットが医療陣の負担を減らし好評を受けているという。モデルは2種類だ。簡易型は患者に薬や食事を伝達する。高級型は病室内消毒、患者の状況観察、医師と患者の対話連結業務を担う。購入費用は簡易型が13,000ユーロ、高級型は4万ユーロだ。それでも人気爆発だ。高齢者療養施設でも注文要請をしている。

 ロボット分野も中国の威勢がすごい。韓国科学技術政策研究院(STEPI)が昨年末に出した報告書を見よう。中国はすでに2011年に日本を追い越して世界最大のロボット生産国になった。2015年には世界の産業用ロボット市場の4分の1に達する販売高を上げた。しかもロボットは2025年に製造業強国になるという『中国製造2025』政策の核心分野だ。

 昨年の世界のロボット市場規模は294億ドルだ。このうち159億ドルと最も大きな割合を占めるのが産業用ロボットで、中国製の割合は30%だ。STEPIは『中国の自動車産業が発展し需要が爆発的に増えている』と分析した。サービスロボットも中国内の物流流通・サービス革命が進みながら急成長中だ。2016年から増えている無人書店、無人商店、無人レストランで猛活躍する。これまで1位と2位である米国と日本企業を脅かす。

 スペインの看護ロボットはこうした中国の成長を見せる端的な例だ。しかしこの成長はまだ中身が空っぽだ。『核心技術』が国産化できていないからだ。ロボット市場の『越えられない壁』は日本だ。STEPIによると日本は現在ロボット関連特許の43%を持っている。2位である米国の20%を2倍以上上回っている。中国は韓国の12.7%に次ぐ4位で9.6%だ。実際にロボットを動かすロボットの核心部品とモジュール関連特許のシェアで見れば格差はさらに広がる。

 ファナックが20.2%、安川電機が15.9%、ホンダが13.6%と日本企業3社が特許全体の半分以上を占めている。50%を寡占している。このほかにセイコーエプソンが6.9%、パナソニックが5.0%、ソニーが4.9%、三菱が3.7%などだ。上位10社のうち韓国のサムスン電子(9.0%)を除くとすべて日本企業だ。当然中国企業はない。俗な言い方をすれば名刺を差し出こともできない。いくら中国製ロボットが世界にその名をとどろかせているとはいっても内部の部品と作動技術の権利はほとんどが日本にあるという意味だ。表側は中国製、中身は日本製と言っても過言ではない 報告書をまとめたSTEPIのペク・ソイン副研究委員が『中国のロボット製造技術は一部を除き自国企業の技術競争力が弱く、核心部品は国産化が遅れておりグローバルサプライチェーンの下端で停滞している』という評価をした理由だ。ペク副研究委員は『現在中国では無分別なロボット団地設立による供給過剰現象が発生しており政策支援の効果性が低い』と付け加えた。

 それでも無視することはできない。やはり中国の執拗さのためだ。『できるまでやる』『できなければ金で買ってでも成し遂げる』(引用者注:それでもダメなら産業スパイやサイバー攻撃知財窃盗する)という戦略はロボット分野でも通用できる。実際に2016年に家電企業の美的はドイツのKUKAとイスラエルのロボットベンチャー、サーボトロニクスを買収した。また別の企業の埃夫特もイタリアのロボット関連企業2社を買収した。ロボット関連技術が最初から無いわけではない。ペク副研究委員は、『中国は人工知能とコンピュータビジョンなどロボットのソフトウエア分野では中国企業と大学が優秀な成果を出している』と話す。いわば今後ロボットの未来領域を担当する技術だ。ここに実際のロボット稼動技術まで国産化するならば、中国のロボット技術はあっという間に勢力図をひっくり返すかもしれない」(2020/08/26 韓国・中央日報)。