断章266

 唾棄すべきは、日本の自称「知識人」リベラルである。

 彼らは、大半がシャンパン・リベラル ―― 貧困・格差是正・難民受け入れなど口では「正義」「公正」「平等」などメディアで聞こえのよい主張で人気取りのパフォーマンスをし、上から目線で勤労大衆を馬鹿扱いしつつ、実生活では自らの富・地位・特権を維持したままの二枚舌で偽善的な左派インテリ ―― である。

 最近も、概ね次のようなツイート(ブログ)があった。

 「『若者に平等に貧しくなれ』といってる上野千鶴子は、都心のタワーマンションに住み、八ヶ岳山麓に別荘を持ち、高級外車を乗り回している団塊金持ちだということは、もっと知られるべきである。自分は高度成長期の繁栄を享受しておきながら、下の若い世代には繁栄を与えず、裕福な自分の生活は手放さない。その上で、上から目線で貧困になれと平然と言う。吐き気を催す邪悪だ」。

 

  人間は、十人十色である。見習いたい人もいる。

 こつこつ貯めた5億円を九州大学に寄付した中本博雄さんは、旧満州から終戦翌年に帰国した。生計をたてる親に代わり、弟をおぶって小学校に通った時期もあった。科学や数学が好きで九州大学への進学を勧められた。「高校の先生が家に5回も来てくれたが、おやじは返事をしてくれなかった」。家計を考えると、泣く泣くあきらめた。あきらめるしかなかった。

 高校を出て父が営む商店で働いた。仕事の一つが設計図の複写。感光紙に焼き付ける青写真が主流だった。「普通の紙に複写できれば便利なのに」。仕事を終えた夜、開発に没頭した。静電気、元素の性質、設計。独学して6年。「なんべんも失敗した」末に、「静電気を使った任意変倍可能な複写装置」の試作機が完成した。「幸福の女神は透明で、深く考えた時に初めて見える。なにせ考えることです」。「情熱が執念に変わるまで勉強すれば道は開ける」。

 米国でも日本でも特許を得た。今のコピー機の元祖の一つだが、特許料はもらっていない。「大学の卒業証書のつもりでした」。
 1987年に製図や印刷の会社を福岡市で創業。2004年に経営を次男に譲り、郊外で妻と暮らす。愛車は軽自動車、自宅は築45年である。「苦労してためたお金ですが、貧しくても勉学したい人が使えば何十年か後に生きると思うんです」。

 子どもも孫もいるが、「相続しすぎると独立心が育たない」と考え、かつて進学を目指していた大学への寄付を決めた。妻の稔恵さん(74)も二つ返事で賛成してくれた。

 「死んで財産を残すよりも若い方に渡した方が、お金が生きる。そこから新しい発明や発見が出て、日本が栄えていけばいい。あの世に行ったときは財産ゼロという死に方をしたい」。