断章300

 視界は、まるで黄砂におおわれているように、コロナで不良である。

 「新型コロナウイルス禍で中小の飲食・宿泊業の資金繰りが悪化している。銀行の口座情報から資金の流れを調べたところ、収入が不動産賃料などの支出より少ない支出超過の飲食・宿泊業は1月時点で6割と1年前に比べて倍増した。運転資金を賄えず、銀行借り入れなどに頼っている」(2021/03/29 日本経済新聞)。

 インフレの気配すらある。「日清オイリオグループは、3月9日、原料価格の高騰が続いていることを受け、6月1日納入分から家庭用食用油などの価格を引き上げると発表した。すでに発表している4月1日納入分からの価格改定に続き、今年に入り2度目の値上げとなる。家庭用食用油の価格を1キログラムあたり30円以上引き上げ、2度の価格改定で計50円以上の値上げとなる」(2021/03/09 日本経済新聞)。

 

 すでに、コロナ禍の前から、「資本主義は、大きな富の格差を生み出し、それが機会の格差を生み出し、今私たちが見ているような方法でシステムを脅かしている。富の格差は、富裕層の子供たちがより良い教育を受けられるという理由で不公平な優位性を与え、機会均等という概念を根底から覆している。機会均等という概念が損なわれる。公平ではなくなり、機会均等を得る人の数が減ると、その社会成員の中から優秀な人材を見つける可能性が減り、生産性が損なわれる。そうなると、『持っていない人』は、経済状況が悪い時に資本主義システムを破壊したいと考えるようになる。このダイナミズムは歴史の中で常に存在してきたし、今も起こっている」(レイ・ダリオ)と言われていた。

 

 そして、「調査会社リサーチ・アンド・マーケッツの予測では、産業用ロボットの市場は27年に1017億ドル(約11兆円)と20年の2.3倍に膨らむ。人工知能(AI)の進化もめざましい。

 価値の源泉がモノからデータやソフトウエアに移り、『GAFA』に代表されるIT(情報技術)企業が力を握る時代。労働者は勤勉さでは評価されず、優れた頭脳とスキルをもつ一握りの人材が『高評価』を得る。

 生み出す付加価値の差は賃金に反映される。米労働省の2019年の統計によるとコンピューター・情報関連の職種の年収(中央値)が8万8千ドルにのぼるのに対し、製造部門の職種は半分以下の3万6千ドルと大差がついた。激動期、労働者の痛みがいつ収束するかは見えない。だが技術の進歩を拒んだ国家や社会は衰退の道をたどる」(2021/03/31 日本経済新聞)のである。

 

 なので、「自動車産業の黎明期を引っ張った欧州。業界団体や独フォルクスワーゲンVW)などの企業、有力大学は産業競争力に加え、『経済的・社会的責任を果たすため、労働力の再教育に多大な投資が必要』との考えで一致した。毎年労働者の5%にデジタル関連などのスキルを習得してもらう投資を始める。数年で対象は70万人、総額70億ユーロ(約9100億円)との試算もある」。ヨーロッパだけではない。アメリカの富豪たちは、ICT教育のために巨額の寄付をしている。

 

 日本は、やはり立ち遅れている。

 「菅義偉首相は、31日の衆院内閣委員会で、マイナンバー制度に関する国費支出の累計が関係法成立後の過去9年で約8,800億円に上ると明らかにした。立憲民主党後藤祐一氏が『コストパフォーマンスが悪過ぎるのではないか』と指摘したのに対し、『確かに悪過ぎる』と認め、マイナンバーカード普及や利便性向上などの改善に全力を挙げる考えを示した」(2021/03/31 時事通信)。

 国費支出の累計が約8,800億円というにとどまらず、“制度設計の失敗”による日本の機会損失は、さらに尾を引きそうである。