断章310

 「もし自由社会が、貧しい多数の人々を助けることができなければ、富める少数の人々も守ることができないだろう」(ジョン・F・ケネディ)。

 

 「コロナ緊急事態宣言が延長され対象地域も拡大されることで、新たに約1兆円の経済損失が生じるという試算が明らかになった。

 野村総合研究所の試算によると、緊急事態宣言が4都府県で20日間延長され、愛知、福岡も追加されることで、さらに1兆620億円の経済損失が生じるという。個人消費が落ち込むことが主な要因で、GDP国内総生産)は年率で0.19%押し下げられるとしている。先月25日から今月31日までの合計でみると、経済損失は1兆7600億円にのぼり、失業者は約7万人増加すると試算している」(2021/05/08 ANAニュース・ABEMA TIMES)。

 

 「国全体でもマイナスの影響はありますが、一番大きな問題は、困らない人と困る人の差が著しいことです。外食、宿泊、小売は1年間も厳しい立場に置かれています。協力金も支給が遅れており、私のところにも悲鳴が聞こえています。一方で年金生活者、公務員、テレワーカーは経済的には困っていません。一部の人に負担を押し付けている今のやり方ではこの問題は解消されません。政府は緊急事態宣言の副作用をもっと真剣に考えるべきです」(石川智久:日本総合研究所)。

 

 劣化したエリートは、悲劇を招く。

 例えば、ノモンハン事件を見よ。ノモンハン事件ソ連側の呼称・ハルハ河の戦闘)で日本軍と戦ったソ連軍指揮官・ジューコフ兵団長は、日本兵の評価を聞かれて、「日本軍の下士官兵は頑強で勇敢であり、青年将校は狂信的な頑強さで戦うが、高級将校は無能である」と答えた。日本軍の高級将校は、無謀な作戦と過大な自己過信と敵への侮りの結果、戦いに惨敗した。生き残った兵たちはだれもが思った。「ああ、みんな死んでしまったなあ」。

 

 あるアマゾンレビュワーは、『ノモンハンの夏』(文春文庫)のレビューに、「高級将校の無責任な体質は、現代日本においても明らかに受け継がれているのは、東日本大震災の際に東電の高級役員が家族を海外に退避させるとか、事故を起こしておきながらその原発を海外に輸出させようとするような狂気の沙汰をみても明らかである。だからきっと、このままでは日本はまた同じような轍を踏むことになるだろう」と書いた。