断章354

 「裕福な家庭に生まれ、良質な教育を受けて、多様な進路を自由に選択できる環境にあった人もいれば、そもそもそのようなチャンスを与えられなかった人もいる。親の愛情に恵まれた人もいれば、酷い虐待を受けて育った人もいる。健康な身体をもった人もいれば、長く病に臥しがちな生活を余儀なくされてきた人もいる。それらはいずれも、いわゆる『自己責任』に帰すことができる事柄ではない」(古田 徹也)。

 

 「皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も『マネープランクリニック』。今回の相談者は、高齢のお母さんと2人暮らしの45歳パート勤務の女性。病気治療中のお母さんの医療費負担が大きく、貯蓄も少なく今後に不安を感じているとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

 ▼相談者

 あいさん(仮名)。女性/パート・アルバイト/45歳。東北/持ち家(一戸建て)

 ▼家族構成

 母(78歳)

 ▼相談内容

 正直、お恥ずかしい話ですが、何をしていいのかわからない状態です。母が病気になり、昨年入院しました。わずかな蓄えは病院への支払いで消し飛びました。現在は通院していますが、限度額適用認定証を使っても、私の収入からいくと医療費は大きな割合を占めます。医療費はこれ以上抑えられないでしょうし、母の体力維持のためにも食費はあまり削りたくありません。

 今後も母は入院することになりそうですし、病状や年齢を考えると、もしもの時のことも考えないといけないと思います。でも現在、そのための備えといえるものはなく、今口座にたまたま先月の給与が数万円残っているという感じです。

 小遣いの金額は医療費です。雑費には私の奨学金返済(減免してもらい月2万~3万円)を含みます。母の病気発覚以降、趣味は捨てました。母を失うかもしれない怖さで孤独が募り、数少ない友人との縁を切りたくなくて、月に1、2度会いに行くこともありましたが、これもやめるべきでしょうか。

 収入面で転職も考えましたが、悩みが次々と出てきて頭がいっぱいなせいか、私の思考能力や記憶力はかなり低下しています。一から新しい仕事を覚える自信がありません。また、今の職場は私の事情を理解してくれて、急な欠勤にも応じてくれますが、勤怠も覚えも悪い中年女を新しい職場が歓迎するとは思えません。なので転職はせず、深夜か早朝に副業をしようかと思っています。ただ、体力に自信がない(だから以前は勤務時間が短かった)ので、本業に更に迷惑をかけることにならないか不安です。

 今の私の生活は母の年金に頼る部分も大きいです。電気代は最近、私が払うようになりましたが、基本的に光熱費、ケーブルテレビ代、食費や日用品の購入の半分程度(恐らくこれらで月3万円ほど)、固定資産税は母が払っています。これも私が払っていくようにしたいのですが……。

 また、持ち家が老朽化していますが、修理するお金がありません。ローンで修理をしたいのですが、この収入、非正規雇用では難しいと思います。売却し賃貸に住むことも考えていますが、現状では家賃を払うのが厳しいです(家賃相場は最低5万円~)。公営住宅は訳あって申し込めません。家賃が安くても病院から遠いところには住めません。売却したお金で家賃を払うのは何だかおかしな話に思えますが、そうでもないのでしょうか。

 たった一人の家族である母を失ったら私は心の拠り所を失い、このままでは生きる手立ても失います。何のために、どうやって、生きるつもりなのかなと思っています。孤独やお金の不安をいつも感じながら、人様や行政に迷惑をかけながら、何年も生きていくのは耐えられなさそうです。母に苦労をかけず、これからも私たちが生きていけるお金の使い方はありますか」。

 

 ―― 個人的にできることがあれば何かしてあげたいような相談が多い『マネープランクリニック』である。下級国民で下流老人である、わたしに今できることは、なにか?

 これまで日本を主導してきた政・財・官の“既得権益層”の既得権益を守るための政治とは異なる、横柄な権力に屈することのない、貧しい同胞を見捨てることのない、〈救国救民〉の政治を探求することである。