断章361

 「東西南北およびその中心も一切を党が支配する」と言う習 近平 ―― 中華人民共和国の第5代最高指導者。第5代党中央委員会総書記、第6代党中央軍事委員会主席、第4代国家軍事委員会主席、第7代国家主席 ―― と中国共産党が掲げる看板、すなわち「毛沢東思想」や「社会主義市場経済」なるものは、羊頭狗肉(注:良品に見せかけたり、宣伝は立派だが、実際には粗悪な品を売るたとえ。 羊の頭を看板にかけながら、実際は犬の肉を売ること)である。それらは、“スターリン主義”という俗流マルクス主義の中華的変異種(なれのはて)である。言葉や宣伝を信じないで、現実を見よ。

 

 すると、「大手国有企業『中国華融資産管理』の頼小民・元会長が、収賄汚職・重婚の罪で起訴され、その腐敗ぶりが中国で大きな衝撃を与えている。(中略)

 頼被告は今年で58歳。中国・天津市第2中級人民法院(地裁)で11日に開かれた初公判によると、頼被告は2008年から2018年にかけて、中国の金融当局・中国銀行業監督管理委員会弁公庁主任や中国華融資産管理の会長兼共産党書記などを歴任。その地位や職権を利用して、企業や個人から不正に金品を受け取ったという。頼被告は公判で罪を認め、判決は後日に言い渡される。

 頼被告の自宅からは2億7000万元(約41億5441万円)の現金がロッカーなどから見つかった。重さにすると3トンに上る。当局の摘発を避けるための資金で、これも贈賄側に要求して手にした金だった。頼被告はこの場所を暗号で『スーパーマーケット』と呼んでいた。自宅からはさらに、数台の高級外車や高級腕時計、絵画、黄金なども見つかった。

 『中国華融資産管理』は不良債権を処理することが主業務だが、頼被告は証券、信託、投資、銀行、先物取引などの子会社を次々と設立し、業務を拡大。会社の幹部は『元会長はとにかく短期の業績を求め続け、3年後や5年後のリスクもお構いなしだった。実際、すぐに資金が焦げ付き始め、不良債権を処理する会社が不良債権を生み出す事態となった。それでも元会長は追加投資をしてその場しのぎをしようとした』と証言する。

 中国メディアによると、頼被告は広東省の不動産開発プロジェクトで、120件の住宅物件のうち100件余りを不正に取得し、100人の愛人を住まわせていたという。かつての中国王朝の皇帝が妃(きさき)や女官を住まわせていた『後宮』のような状態だった。さらにこの愛人たちを、31社に膨れ上がった子会社の幹部ポストに就任させていた。また、自分の出身地の江西省瑞金市出身者を多く登用し、中国華融の幹部は『経営陣から食堂のスタッフまで元会長の同郷人ばかりだった』と証言している。(中略)

 頼被告の事件は、中国でたびたび起きる汚職の典型的要素が詰め込まれている。まずは『権力の一極集中』。頼被告は国営中国中央テレビCCTV)の反腐敗キャンペーン番組で、『私は会社の会長、法人代表、党書記を務めていた。(社内の監査部門の)規律検査委員会書記は私の部下にあたる。だから、誰も私を監督することはできなかった』と自ら語っている。

 さらに、『権色交易(権力と色欲の取引)』の問題。企業側が権力者に女性をあてがい、特別な便宜を図ってもらおうとする行為が今も横行している。汚職で逮捕された役人のうち95%は愛人がいたという調査もある。権力者が自ら愛人を囲う場合も多いが、企業側が『取引』として女性を提供するケースも多い。また、自分の身内として周囲を同郷人で固め、それ以外の人間を排除し、異論を封じ込める手法も目立つ」(2020/08/16 東方新報/AFPBB News)ことがわかる。

 

 しかも、紅色全体主義においては、こうした不正の摘発も、習 近平派に対抗する党内反対派を圧迫し弱体化させる手段のひとつなのである。それでも暗闘は続く。

 「中国の温家宝前首相が新聞に寄稿した亡母の追悼文がネット上で閲覧しづらくなり、『現指導部を批判する内容のため制限を受けている』との見方が出ている。首相経験者に対する言論統制の可能性があり話題となっている。

 温氏はこの3~4月、マカオ紙に4回に分けて寄稿。この中で『中国は公平で正義に満ち、自由の気質がなければならない』と訴えた。また、毛沢東が発動し多くの人が迫害を受けた文化大革命で、父が激しい暴力を受けたことなども記した」(2021/04/21 時事通信)。