断章391

 2020年9月、内閣総理大臣だった菅義偉は、日本学術会議が推薦した会員候補のうち一部を任命しなかった。すると、白井 聡と仲の良いあるインテリが、「俺たち知識人に喧嘩を売ってんのか!」と吠えた。その時、わたしは心の中で、「どんだけ~(自分たちは偉いと思っているのか・・・)」と、ひとりごちた。ここにインテリが、マルクス(理論)に引き寄せられる理由のひとつがある。

 

 「マルクス主義を含めて社会主義の教説とは、プロレタリアートの利益の実現の名において、その実、知識労働者つまり種々の“インテリ”の集団的利益を擁護する理論であり、実践にほかならない。

 社会主義の名で企てられる革命は、事実上、知識労働者(インテリ)が新しい特権階級として国家権力を彼らの集団的利益のために独占行使し、集団的に肉体労働者を搾取する『国家資本主義の搾取体制』を産み落とすだろう」という予言は、全体としては当たった。

 

 マルクス主義の、「階級なき社会、人間による人間の搾取の根絶、これに代わる人間による事物の管理、一切の強制力なき『自由の国』、国家の死滅、知的労働と肉体労働の分裂の解消、各人の発達が万人の発達の条件となるべき社会、万人がアリストテレスゲーテとなるような社会、こうした限りなく美しい理想」(勝田 吉太郎)は、勤労大衆を革命の戦場に一般兵卒として動員して利用するための“インテリの武器”である。

 

 上田 篤盛によれば、かつて旧・ソ連KGBプーチンも所属していた情報機関・秘密警察。軍の監視や国境警備も担当していた。東西冷戦時代にはアメリカの中央情報局と一、二を争う組織と言われていた)は、外国で獲得する内通者の目標を「モラルに欠ける政府職員」「甘やかされっ子」「不満を持つ知識階級」「孤独な秘書」の4つに置いていたという。

 そして、それは成功した。イギリスのオックスフォードなど名門大学で内通者をリクルートし、ソ連のために働かせることができたのである。

 

 インテリ本人の主観的意図(思い)はどうであれ、彼らの活動(実践)が客観的に意味していること、それがもたらす結果をわたしたちは洞察しなければならない。