断章398

 情報は断片的であり、操作されている可能性は大きいが ―― 、2月25日の日本経済新聞は、「『ロシアはウクライナ政権を無力化し、自らの統治手法を植え付けようとしている』。米国防総省高官は24日、記者団に対してロシア軍がキエフに向けて進軍する意図をこう推測した。ロシア軍の地上部隊はすでにベラルーシからウクライナに入っており『キエフに向かって進んでいる』という。

 ロシアのプーチン大統領が米欧に接近するゼレンスキー政権を転覆させ、ロシアに近い傀儡(かいらい)政権の樹立を目指しているとの見方が根強い。ロシアが侵攻を通じて殺害対象とするウクライナ人のリストを作成しているとの情報を米政府が入手したことも、キエフ侵攻で政変を画策しているとの疑念を深める根拠になっている」と伝えている。

 

 プーチンは、核兵器の使用をちらつかせながら大部隊で隣国に侵攻した。国内の「空想的平和主義」や「モンロー的孤立主義」のブレーキで制約されるNATOアメリカと違って、ロシアは今もコサックたちの“戦争文化”が命脈を保っている国だ。しかも、プーチンは元情報機関員だから、お上品な欧米の指導者たちと異なり、手を汚すことを厭わない。

 プーチンたちの「権威主義システムが自由民主主義制度を上回るという状況が時折起こるが、それは法的な訴えや立法部門による熟慮にわずらわされずに迅速な意思決定を行うことができるためである」(フランシス・フクヤマ)。

 さらに、欧米からの“制裁”についても、「北朝鮮」への“制裁”の無力さを見て、「制裁なんかこわくない」と、たかをくくっている。

 

 また困ったことに、当のウクライナにも問題があった。

 「民主主義を推進しようとする人たちは、専制的国家や略奪的国家の権力を制限することに焦点を置く。その理由は理解できる。しかし、そうした人たちはどうしたら効果的な統治ができるかについて、同じ位時間をかけて考えようとしない。(中略)

 それこそが、ビクトル・ヤヌコヴィッチを追い落として始まった2004年のウクライナオレンジ革命が犯した失敗であった。実効性のある民主的な政権が権力を握って、腐敗を一掃し国家機構への信頼を向上させていたなら、ウラジーミル・プーチンが力を取り戻してウクライナを揺さぶる前に、西部だけでなくロシア語話者の多い東部ウクライナも含めて広く正統性を打ち立てていたはずだ。そうはせずに、オレンジ革命後の連立政権は政争と怪しげな取引にエネルギーを費やし、結局2010年大統領選でヤヌコヴィッチの復帰を許し、2014年の騒乱で彼がロシアに亡命した後のウクライナ危機を招くことになった」(フランシス・フクヤマ)。それは、今の事態と直結している。

 

 中国や「北朝鮮」はこの事態から学び、さらに核兵器とミサイル(ICBM・IRBM)と通常戦力を強化するだろう。

 では、わたしたちの日本は、どうか?

 「『戦争に負けた国』という記憶 ―― それは、日本人から『戦う気力と能力』を奪った! 『戦争は悲惨だ』『戦うことは悪だ』という論理に支配され、『国を守るとは何か』『有事に際してどのように戦うのか』の研究と議論が置き去りにされてきた」(松村 劭)のである。