断章405

 「鳩山 由紀夫元首相(75)が3月1日、ロシアのウクライナ侵攻に対し、<私はあらゆる戦争を非難する。ロシアは一刻も早く停戦すべきだ>とした一方、<同時にウクライナのゼレンスキー大統領は自国のドネツク、ルガンスクに住む親露派住民を『テロリストだから絶対に会わない』として虐殺までしてきたことを悔い改めるべきだ。なぜならそれがプーチンウクライナ侵攻の一つの原因だから>と書き込んだ。

 ゼレンスキー大統領をめぐっては、ロシア軍が侵攻した際、欧米各国による国外退避の呼び掛けを聞かずに首都キエフにとどまり、SNSなどで国民に徹底抗戦を呼びかける姿が世界中に拡散。<キャプテン・ウクライナウクライナの最初の本物の大統領、英雄、指導者>などと称賛する声が広がっている。

 このため、鳩山氏の投稿に対し、ネット上では<このタイミングで戦時大統領に反省を求めるのはいかがなものか><ロシア軍が侵攻している最中に何を……>などと批判的な意見が続出した。

 ゼレンスキー大統領については、前東京都知事舛添要一氏(73)も2月27日に出演したABEMA『ABEMA的ニュースショー』で、『知恵が働かない。能力がない』と突き放していたが、果たしてゼレンスキー大統領は『英雄』なのか『能力がない』のか。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は、『まず、ゼレンスキー大統領が英雄かそうではないか、を論評するのは、彼を民主的な選挙で選んだウクライナ国民であり、他の国民が口を出す資格はないでしょう』と言い、こう続ける。『その上で、本当に“能力がない”のであれば、ロシア側の停戦交渉にあっさりと妥協したでしょうし、さらに言えばロシア軍が侵攻する前にとっくにロシアの傀儡政権になっていても不思議ではありませんでした。もともとは反ロシア主義の人物ではないのですから。いずれにしても、すでに戦時となっている状況下で、安全な立場からゼレンスキー大統領の能力云々を言うのはどうかと思います』と語った」(2022/03/01 日刊ゲンダイデジタル)。

 

 あるネット民は、「安全な場所の日本で、状況も分からずに、極限状態に置かれていたゼレンスキー大統領をよく、そのときの思い付きで上から目線の批判ができるものだとあきれる。鳩山にせよ、舛添にせよ、自分自身の危機管理もできずに下野することになった人間であり、国家の危機管理を偉そうに述べるような資格はない。

 戦争は始まってしまったが、キエフにとどまり続け、正確な情報を発信し、ロシアのフェイクニュースを無効化し、ウクライナ将兵や国民を鼓舞、勇気づける姿は、立派なリーダーだ。また、開戦前、あれだけ傍観者だった欧米を味方につけることに成功し、世の中の流れを変え、追加の武器・資金供与はもちろん、ロシアへの激しい制裁を勝ち取った手腕は見事だ。鳩山や舛添にできることではない」と断じている。

 

 ロシアの“虐殺”プロパガンダを真に受けたマヌケはさておき、舛添たちの意見は、つまるところ、在大阪中国総領事館の薛剣総領事の主張、すなわち「弱い人は強い人にけんかを売るような愚かな行いをしてはいけない」の言い換えにすぎない。それは、「逆らうな。服従せよ」ということである。

 

【補足】

 「今まことしやかに語られている『NATOの東方不拡大の約束をアメリカが破ったことがそもそも悪かったのだ』といった議論はプーチン大統領の都合の良い嘘であることが、慶應義塾大学細谷雄一教授によって詳細にまとめられています。こういう議論をよく知らずに拡散してしまうこと自体が、プーチン大統領の侵略に加担する行為になってしまうでしょう」(倉本 圭造)。

 

【参考】

 「ロシアでは、停戦協議については報じられているが、侵攻については報じられていない。 ロシア国営テレビなど主要メディアの報道は、親ロシア派武装勢力が支配しているウクライナ東部の情報ばかりで、民間の建物が攻撃を受け、死者が出ていることなど一切報じられていない。そのため、ロシアの人は、ロシア軍がウクライナに侵攻していると認識している人はほとんどいない。むしろ、ウクライナが大量虐殺しているという、プーチン政権のプロパガンダを信じている人が多い。若い人は、SNSなどで情報を入手しようとしているが、ウクライナ側のサイトは接続状況が悪く、写真や動画が更新されにくい状態。正式発表はないが、ロシア当局が『フェイク』として、ブロックしている可能性がある。ロシアは、徹底的な情報操作で世論を誘導し、国内からの反発を抑え込もうとしている」(2022/03/01 FNNプライムオンライン)。