断章433

 今は、21世紀である。しかし、ウクライナ戦争で示されたロシアの戦争形態は、太古の戦争形態と瓜二つであり、民族浄化である。

 「予言者モーセイスラエルの人々に『処女だけを残してその他のミディアン人を皆殺しにせよ』と命じたのは(『民数記』第31章第17節〜第18節)、人類の歴史において勝者がどのように振る舞ってきたかを示す典型的な例である。男を殺し、女をレイプし、最も若く美しい女を戦利品として略奪する。敵の抵抗によって、あるいは家族の抵抗によって女を略奪することができなければ、男や子どもと同様、女も敵の人口を減らすために殺された」(アザー・ガット)。

 

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まってからすでに2か月余。戦況は膠着(こうちゃく)しているようにみえる。

 ロシアの圧倒的な数の装甲戦闘車両や火砲に対抗して、「アメリカを始めとしたNATO北大西洋条約機構)加盟国は、ウクライナに口径155mmクラスの榴弾砲を次々と供給するようになっています。具体的には、アメリカ、オーストラリア、カナダが牽引式の軽量155mm榴弾砲M777を3国合計で100門以上、フランスは装輪式の155mm自走榴弾砲カエサル』を12両程度、オランダは装軌式(いわゆるキャタピラ式)の155mm自走榴弾砲PzH2000』を少数、ポーランドは装軌式の122mm自走榴弾砲2S1『グヴォズジーカ』を、加えて、一部欧米メディアが報じたところによると、イタリアとベルギーは装軌式の155mm自走榴弾砲M109を、スウェーデンは装輪式の155mm自走榴弾砲『アーチャー』を、スロバキアは装輪式の155mm自走榴弾砲『ズザナ』またはその原型である152mm自走榴弾砲『ダナ』を、チェコも同じく『ダナ』を供給する」(2022/05/04 乗りものニュース・白石 光)。

 しかし、民間人の犠牲にかまわず(むしろ畏怖させるために、あえて)無差別砲爆撃をするロシアに対して、ロシアの占領地に留まっている自国民の巻き添えを憂慮しながら攻撃するウクライナとでは、砲爆撃の激しさと規模に差があるにちがいない。この点でもまた、戦況の膠着は、ウクライナに不利である。

 ロシアの一日当たりの「戦費」を見積もって、「戦況の膠着はロシアにとって不利」という意見がある。だが、経済先進国の軍隊を参考にした「戦費」の算出では、ミスをする ―― 貧乏国の軍隊は「戦費」(含む食い物)もチープで、アメリカ軍のようにステーキやアイスクリームを必要としないのだから。

 

 ウクライナの主権、平和、自由のための戦いに心を寄せる人士のスローガンは、これまでは「奴らを通すな!」だった。それは、今や、「奴らをウクライナから叩き出せ!」でなければならない。

 「ウクライナ軍はロシア軍との戦闘で、西側から提供される対戦車ミサイル『ジャベリン』や地対空ミサイル『スティンガー』のほか、無人攻撃機『スイッチブレード』などを使用してきた。

 ホワイトハウスによると、米国は新たな武器支援として120機を超える(引用者注:新型自爆ドローン)『フェニックス・ゴースト』を提供する。国防総省のカービー報道官は『(東部)ドンバス地域でウクライナ軍が今必要とするものと非常に一致することから開発された』と説明した。航続距離や詳しい能力は明らかにされなかったが、攻撃用に設計されているという」(2022/04/21 ロイター通信)。

 

 「フェニックス・ゴーストについて判明していることは、・中規模の装甲車両に有効な使い捨て型無人機。 ・垂直離陸が可能。 ・目標の探索と追跡で6時間超の飛行時間。 ・赤外線センサーにより夜間運用が可能」(2022/04/23 YAHOOニュース・JSF)というものだ。

 膠着を打開する革新的な兵器が必要だ。フェニックス・ゴーストは、戦況を打開するゲーム・チェンジャーとなる可能性がある。