断章452

 夢をみた。50年ほど昔にあったこと・・・?

 三角公園に赤テントが張られ、芝居をしていた。「社会主義を待ちながら」という演目のプログラムは、思いのほかきれいな色刷りだった。幕が開く。ホームレスに扮した役者たちが、何もない殺風景な舞台の上でセリフを言う。

 役者A:「社会主義、それは生産手段を共有化しての生産の社会的計画化・組織化と各人の労働量に応じた消費手段の分配のことである」。

 役者B:「ありえへん」。

 役者C:「自立した自由な個人のアソシエーションを社会主義というのだ」。

 役者D:「おとぎ話だな」。

 役者E:「社会主義とは、生産手段を社会化することのはずです」。

 役者F:「はずれだ」。

 役者G:「社会主義は、今日は来ないが明日は来る」。

 役者も観客も飽き飽きしているが、なぜか赤テントが畳まれることはない。

 

 同じ頃、西成あいりんセンター前のあちら側には、893につながる手配師たちがいた。

 こちらには、手配師たちに反発する日雇いたちと助けたい(あるいは利用したい)連中がいる。

 眉間にシワを寄せた手配師が、「月夜の晩だけちゃうで」と吠える。

 ドヤ暮らしの長い活動家が、「どこの組やねん」と挑発する。

 行きつ戻りつする“私服”が顔をみる。

 後の方では血の気の多い日雇いが、石をタオルでくるんでいる。

 「もう~、めんどくせ~」と顔に描いてある機動隊員たちが、横目でそれを見る。

 数人のホームレスが、何かが起きるのを期待して待っている。

 やがて、ひとりが「何も起こらへんね~」とつぶやいた。