断章487

 「人類は30万年の歴史の大半において極貧だった。暮らしが少し豊かになるたびに人口が増え、結局、1人当たりの生活水準は生存可能なギリギリの線に戻ってしまうからだ。『マルサスの罠』と呼ばれるこの経済的停滞が、ほんの200〜300年前まで人類にとっては当たり前だった」(安田 洋祐・大阪大学教授)。

 その後、商品生産の量的形態である近代資本制的生産は、恐慌・戦争・後退を経ながらも庶民生活を大きく向上させた。

 ところが、すでに“赤色全体主義”のイデオロギーに変貌し、ドグマへと転化したマルクス主義に汚染された“目”で見れば、このファクトをすなおに認めることができない。

 マルクス主義者は、このファクトから目をそむけて、“資本主義”の搾取・収奪・抑圧・差別・疎外・弊害・破局・終焉だけを語っている。

 

 「共産党 ―― 引用者注:そして、“同じコインの裏”である反日共系セクトも ―― では、『イデオロギーの統一』は義務的である。人は単にマルクス主義者になる義務があるばかりでなく、指導部が望み、かつ指定する種類のマルクス主義をとりいれなければならない」(ミロバン・ジラス)。

 「共産党では、『イデオロギーの統一』、つまり世界観や社会発展観について、判を押したようにおなじ考えを抱くことが党員の義務なのである。これは党の上級機関で活動する人たちにだけあてはまる。下級の地位にいる他の人たちは、判を押したようにおなじ思想をおうむがえしに繰り返し、上からの命令を遂行するだけでいい」(同前)。

 

 朝鮮民主主義人民共和国の支配者たちと日本共産党は、このドグマ(歪んだイデオロギー)を信ずる“同志”である ―― 但し、「志を同じくする者」というよりも、同じ仲間、同じ種類の者という意味合いでの“同志”であるが。

 たとえば、1966年、「日本共産党代表団歓迎平壌市民大会」で、日本共産党代表団・宮本 顕治団長は、こう呼びかけた。

「親愛な金 日成同志

 親愛な同志のみなさん、友人のみなさん

 私はまず、われわれ日本共産党代表団にたいするあなた方の兄弟のようなあたたかい歓迎にたいし、深く感謝します。

 私は日本共産党中央委員会を代表して、金 日成同志を先頭とする朝鮮労働党の指導のもとで、国の社会主義建設と防衛のために日夜奮闘しているあなたがたに、熱烈な兄弟のあいさつをおくります。またこの機会に、南半部の解放と祖国の自主的、民主的統一のためにたたかっている南朝鮮の英雄的な人民にたいして、こころからの連帯のあいさつを送ります。

 日本共産党代表団が朝鮮民主主義人民共和国を訪問したのは、今回が4回目であります。私自身は1959年2月の訪問以来、今回で3回目であります。

 われわれ両党は、長い歴史の試練のなかで鍛えられ成長してきた党です。両党は共通の敵にたいする闘争のなかでたがいに支持しあい、戦闘的な友情によって深く結ばれているマルクス・レーニン主義の党であります」と。