断章434

 人類(ヒト)は、途方もなく長い歳月、小規模血縁集団の社会で生活していた。その後、人類史上の第一の大変革の波である「農耕」の開始にともない、部族社会、首長制社会、やがて古代国家形成へと変遷した。

 農耕・牧畜を主たる生業(なりわい)とする農耕民の増大は、農耕に適さない高原地帯の住人たちにも作用を及ぼして遊牧という独自の生業(なりわい)を生じさせた。古代国家と遊牧民の攻防のルツボから、「帝国」が生まれた。

 「遊牧民が手に入れた騎馬と騎射の技術は、遊牧民による農耕民に対する攻撃と征服を可能にし、そのピークは13世紀のモンゴル帝国の成立である」(湯浅 赳男)。

 17世紀~18世紀に至って、人類は人類史上の第二の大変革の波、「産業革命」を迎えた。工業化・近代化による「資本制社会」の誕生と拡大は、それに適合した「国民国家」を生んだ。

 そして世界は、主権をもつ「国民国家」による仁義なきサバイバルの世界になった(今この地表は、失敗国家や破綻国家、ならずもの国家やマフィア国家を含め、196ほどの「主権国家」によって分割されている。分割済みであるから再分割の試みは戦争になる)。

 仁義なき戦いの世界の「警察官」は、旧・ソ連の崩壊後、アメリカだけになった。時代は、情報通信革命(パソコン・インターネット)と交通運輸革命(大型航空機とコンテナ輸送)による第二次グローバリゼーションを迎えていた。ところが、アメリカは、イラクアフガニスタンの深い砂に足をとられ、またグローバリゼーションによる国内産業の空洞化と中間層の崩壊と国内政治の分断に悩まされた。一方、中国、ロシア、ドイツは、第二次グローバリゼーションから大きな利益を得て、自信を高めていた。中国やロシアは、「アメリカ一極支配の終焉」を語った。

 

 「今や世界政治は、先進的な国民国家によってではなく、米・中・ 露・ EUの四帝国によって動かされる時代となっている。国民国家の基盤はネーションであるが、帝国の基盤は文明である。そのために帝国は何らかの意味で膨張主義的であり、複数の文明の接触する地域では、帝国同士の摩擦や衝突が起きやすい」。

 「現在のEUをドイツを核とする帝国と見なすことには、相当の抵抗があるかもしれない。なぜなら、ドイツはEUのルールによってその行動に大きな制約を受けた国家だからである。しかし、見方を変えれば、EUの中で8,000万を超える人口を擁し、経済力において突出しているドイツは、EUのルールを通じて広汎なヨーロッパを支配しているとも見なしうる」。

 「ドイツは、NATOEUの枠組みを巧みに利用しながら、米英仏などの諸国との決定的な対立を避けつつ、自己の影響力の拡大を追求して」きた。

 「ヨーロッパの中心でのドイツによる『中欧帝国』の建設の進展にともなって、英、仏、伊などの周辺諸国は、その波紋に否応なくもてあそばれることになる。それと同じように、東アジアの中心地帯で中国による『帝国』の再編成が進行すれば、周辺の日本や韓国や東南アジア諸国などは、それがひき起こす影響を免れることはできない」と言ったのは、野田 宣雄である。

断章433

 今は、21世紀である。しかし、ウクライナ戦争で示されたロシアの戦争形態は、太古の戦争形態と瓜二つであり、民族浄化である。

 「予言者モーセイスラエルの人々に『処女だけを残してその他のミディアン人を皆殺しにせよ』と命じたのは(『民数記』第31章第17節〜第18節)、人類の歴史において勝者がどのように振る舞ってきたかを示す典型的な例である。男を殺し、女をレイプし、最も若く美しい女を戦利品として略奪する。敵の抵抗によって、あるいは家族の抵抗によって女を略奪することができなければ、男や子どもと同様、女も敵の人口を減らすために殺された」(アザー・ガット)。

 

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まってからすでに2か月余。戦況は膠着(こうちゃく)しているようにみえる。

 ロシアの圧倒的な数の装甲戦闘車両や火砲に対抗して、「アメリカを始めとしたNATO北大西洋条約機構)加盟国は、ウクライナに口径155mmクラスの榴弾砲を次々と供給するようになっています。具体的には、アメリカ、オーストラリア、カナダが牽引式の軽量155mm榴弾砲M777を3国合計で100門以上、フランスは装輪式の155mm自走榴弾砲カエサル』を12両程度、オランダは装軌式(いわゆるキャタピラ式)の155mm自走榴弾砲PzH2000』を少数、ポーランドは装軌式の122mm自走榴弾砲2S1『グヴォズジーカ』を、加えて、一部欧米メディアが報じたところによると、イタリアとベルギーは装軌式の155mm自走榴弾砲M109を、スウェーデンは装輪式の155mm自走榴弾砲『アーチャー』を、スロバキアは装輪式の155mm自走榴弾砲『ズザナ』またはその原型である152mm自走榴弾砲『ダナ』を、チェコも同じく『ダナ』を供給する」(2022/05/04 乗りものニュース・白石 光)。

 しかし、民間人の犠牲にかまわず(むしろ畏怖させるために、あえて)無差別砲爆撃をするロシアに対して、ロシアの占領地に留まっている自国民の巻き添えを憂慮しながら攻撃するウクライナとでは、砲爆撃の激しさと規模に差があるにちがいない。この点でもまた、戦況の膠着は、ウクライナに不利である。

 ロシアの一日当たりの「戦費」を見積もって、「戦況の膠着はロシアにとって不利」という意見がある。だが、経済先進国の軍隊を参考にした「戦費」の算出では、ミスをする ―― 貧乏国の軍隊は「戦費」(含む食い物)もチープで、アメリカ軍のようにステーキやアイスクリームを必要としないのだから。

 

 ウクライナの主権、平和、自由のための戦いに心を寄せる人士のスローガンは、これまでは「奴らを通すな!」だった。それは、今や、「奴らをウクライナから叩き出せ!」でなければならない。

 「ウクライナ軍はロシア軍との戦闘で、西側から提供される対戦車ミサイル『ジャベリン』や地対空ミサイル『スティンガー』のほか、無人攻撃機『スイッチブレード』などを使用してきた。

 ホワイトハウスによると、米国は新たな武器支援として120機を超える(引用者注:新型自爆ドローン)『フェニックス・ゴースト』を提供する。国防総省のカービー報道官は『(東部)ドンバス地域でウクライナ軍が今必要とするものと非常に一致することから開発された』と説明した。航続距離や詳しい能力は明らかにされなかったが、攻撃用に設計されているという」(2022/04/21 ロイター通信)。

 

 「フェニックス・ゴーストについて判明していることは、・中規模の装甲車両に有効な使い捨て型無人機。 ・垂直離陸が可能。 ・目標の探索と追跡で6時間超の飛行時間。 ・赤外線センサーにより夜間運用が可能」(2022/04/23 YAHOOニュース・JSF)というものだ。

 膠着を打開する革新的な兵器が必要だ。フェニックス・ゴーストは、戦況を打開するゲーム・チェンジャーとなる可能性がある。

断章432

 皇帝ダース・プーチンと大ロシア民族主義のロシアが脅威であることは、周知のことだった。ファントム・メナス(見えざる脅威)だったのではない。脅威が存在しないかのように目を閉じてきたのだ ―― 日本のお花畑思考のリベラルのように。

 

 2016年に出版された『地政学で読む世界覇権2030』で、ピーター・ゼイハンは、「本書の執筆時点では、ロシアはすでに伝統的な『マイノリティ保護』という口実を設けてクリミアを奪い取り、ウクライナ東部の蜂起を促している。経済的、政治的、軍事的な圧力を交互にかけてウクライナ国家を弱体化させる間に、ロシアはカフカスベラルーシカザフスタンという、西側諸国の関心がはるかに低い地域に照準を合わせるだろう。これらの地域の平定後、ロシアはウクライナに関心を戻し、ロシア系住民の多い東部と南部の『助けを求める声』に応じて『救援』活動を始めるに違いない。また(もちろん活発な宣伝活動を行ったうえでの)ウクライナ西部の軍事侵攻も必要になる。そして最後にくるのが最もハードルの高い挑戦であり、EU/NATO加盟国であるポーランドルーマニアバルト三国がターゲットとなる」と予測した。

 ロシアにはウクライナにこだわる理由がある。ピーター・ゼイハンは、次のように述べている。

 「・ウクライナ旧ソ連の小麦生産地帯では唯一の最も生産性の高い土地(最も南に位置し、最も安定的な降雨がある)に位置している。ロシアの労働力と資本の不足が深刻化するにつれて、最も低投入・高収益方の土地を支配する意味はますます大きくなるだろう。

 ・ウクライナモルドバとともにベッサラビアの開口部を構成している。この開口部を支配下に置けば、今後国力を回復するトルコがロシアの中心部をうかがうことは不可能になるだろう。

 ・ウクライナにはロシア国外では最大の数のロシア民族が住んでいる(クリミア半島ウクライナの一部でなく、ロシアの一部とみなした場合でもこれは正しい)。したがって彼らをロシアに編入すれば、(引用者注:現在のロシアの急激な人口減少による)国家の終焉をさらに数年先延ばしできるだろう。

 ・ウクライナ東部の産業基盤は、ロシアの産業基盤のすぐ近くに位置している。したがって両者を統合すれば、ロシア経済全体の数年の延命につながるだろう。

 ・ロシアがヨーロッパに向けて輸出する原油天然ガスの半分近くがウクライナ国内を通過する。したがってウクライナに対して政治的影響力を行使できれば、その意味は財政的利益に劣らず大きい。

 ・モスクワからウクライナの国境まではわずか480キロメートルの平坦な地が続くため、ウクライナは ―― 控えめに見ても ―― 緩衝地帯として役に立つ。

 ・旧ソ連の唯一の航行可能な川であるドニエプル川ウクライナ領内を南に向かって流れている。そのためウクライナ黒海マルマラ海、そしてその先の世界と経済的に統合されている。この川のおかげで、ウクライナはおそらくホルドランドで最も資本が豊かな国であるうえ、ロシアから完全に独立して運命を切り開くことのできる唯一の国でもある。しかしロシアにはこれを許す余裕はない。

 ・ドニエプル川の河口に位置するクリミア半島には、ロシアの数少ない不凍港である軍港セヴァストポリがある。クリミア半島セヴァストポリがロシアの支配下にある限り、ウクライナは経済的に完全に独立することができず、トルコをはじめとする海洋国も黒海を支配できない。ロシアの影響力拡大の動きは2014年前半にクリミアで始まった。それがこの地で終わることはないだろう」。

断章431

 あらゆる戦争は、虚飾のベールをはぎ、世界の真実を垣間見せる。ウクライナ戦争があばいたことのひとつは、ドイツの問題性である(以前、E・トッドは、「ドイツ帝国」こそが問題なのだ、と言ったことがある)。

 

 今、ドイツでは常軌を逸したようなエネルギー価格の急騰がみられるという。「いうまでもなく、ウクライナでの戦争によりロシアからの輸入がストップするかもしれないという市場の懸念を反映している。ドイツ経済輸出管理局などによると、2020年の統計では、ドイツの天然ガスの55.2%、石炭の48.5%、石油の33.9%がロシア産だ。

 国の要(かなめ)であるエネルギーを、ここまで他国一国に依存するのは明らかな失政で、安全保障上の思考が一切働いていなかったと非難されても仕方がない。ロシアへのガス依存は30%を超えるべきではないということは、それこそ20年も前から言われていた。しかし、メルケル政権は16年間、その不文律を完璧に無視し、粛々と55%まで依存を増やしてしまった」(川口マーン恵美)。

 「こんな国はEUには他にない。なぜ、こうなったかというと、ドイツとロシアがバルト海の海底に敷設した直結パイプライン『ノルドストリーム』が大きく関わっている。2011年に稼働した巨大なパイプラインだが、いわば、これでロシアからドイツへのガスの輸送に弾みがつき、ロシアシェアが鰻登りになったのである。もちろん、この安いガスで、ドイツ経済は繁栄した(ドイツは、石炭の48.5%、石油の33.9%もロシアからの輸入)。

 その後、味をしめたドイツとロシアはノルドストリームの第2弾を建設し、バルト海経由のガス輸入を文字通り倍増させようとした。『ノルドストリーム2』である。ただ、2020年に完成するはずが、トランプ大統領がさまざまな制裁をかけて妨害したので、全長1230kmのうちの最後の140kmを残したまま、建設がストップしてしまった。ところが、バイデン大統領は、2020年5月、就任後、初めてのメルケル首相との会談の後、突然、その制裁を外し、工事継続にゴー・サインを出した。ちなみにメルケル首相は、バイデン大統領の就任当初から、『これで米国に民主主義が戻ってくる』などと、歯の浮くような賛辞でバイデン大統領をヒーローのように持ち上げていた」。

 そこに、ロシアがウクライナに侵攻した。

 「4月3日、駐ベルリンのウクライナ大使アンドリー・メリニクが、『(ドイツの)シュタインマイヤー大統領は、プーチン大統領が仕掛けた蜘蛛の巣に絡めとられている。彼は、プーチン大統領のドイツでの代弁者だ』と批判した。すると、4月4日、ドイツのシュタインマイヤー大統領は、『ロシアからドイツへ直接ガスを輸送するパイプライン、ノルドストリーム2(NS2)の建設に尽力したことは、誤りだった。私は、プーチン大統領の真意を見抜けず、東欧諸国などの警告を受け入れなかった』という声明を出し、対ロシア政策の失敗を認めた。シュタインマイヤー大統領は、2014年にロシアがクリミア半島を併合したにもかかわらず、その4年後にドイツ政府がNS2の建設を許可したのは失敗だったと断言した。

 シュタインマイヤー大統領は、シュレーダー政権の連邦首相府長官、メルケル政権の外務大臣として、ロシアとの緊密な経済関係を構築した責任者の一人である。大統領が、過去の外交政策の誤りを公に認めるのは、極めて異例だ。

 ドイツ・ショルツ政権は、ロシア産原油と石炭の輸入は今年末までに終えられるが、ロシアからのガスの輸入を停止できるのは、2024年の夏になると説明している。だがブチャの虐殺が明るみに出てからは、ウクライナや東欧諸国から『ドイツはいつまでロシアに多額の金を払い続けて、プーチン大統領侵略戦争を間接的に支援するのか』という批判が高まることは確実だ。たとえばリトアニア政府は、『ロシアは、もはや文明国には属さない』として、4月1日をもってロシアからのガスの輸入を停止した。

 ウクライナと東欧諸国は、ドイツ政府に対し『自国経済の安定』と『ウクライナ人の生命』のどちらを重視するのかという問いを突き付けるだろう。ショルツ政権のガス禁輸の決定が一日遅くなるごとに、同盟国のドイツへの信頼は崩れていく。数十年に及ぶ対ロシア政策の失敗は、同国の外交史上最も深刻な『蹉跌』である。この政策破綻は、欧州のリーダー国だったドイツを深い袋小路に追い込みつつあり、出口はいまだに見えない」(以上、新潮社フォーサイト・熊谷 徹の記事を再構成・紹介)。

 

 ドイツは、はなはだしいエコノミック・アニマルである。メルケル前首相は、中国の人権問題に目をつぶって、2005年の就任後に12回も訪中し、同行企業団は競って中国側と大型契約を交わし、最大の貿易相手国になった。

 リベラルたちは、ドイツを「正しい歴史認識と謝罪」のお手本と持ち上げてきた。だが実は、ドイツの「正しい歴史認識と謝罪」は、国家目的 ―― かつてドイツが侵略・占領したヨーロッパ諸国への大量の工業製品輸出(注:ドイツは内需より輸出である) ―― のための手段でもあったことを見逃している。

 ヨーロッパ諸国は、さしあたり実利を取って“謝罪”を受け入れた。しかし、ドイツがさらなるウクライナ軍事支援に難色を示せば、かつてドイツに侵略・占領されたヨーロッパ諸国の古傷がうずいて、ドイツの欺瞞と偽善をあばくに違いない。

断章430

 それは2020年10月のことだった。「シュレーダー前ドイツ首相夫妻が『平和の少女像』撤去指示に抗議し、ドイツ当局に決定を撤回するよう要請する手紙を送った。(中略)

 シュレーダー夫妻は書簡で『区長の決定は、絶対に理解できない。それは、暴力の犠牲者として苦痛を受けた元慰安婦のおばあさんたちの痛みを見捨てる反歴史的決定』と批判した。

 また『日本政府が、このような残忍な戦争暴力の歴史を清算するどころか、むしろ沈黙するように圧迫することは歴史を忘却する処置』とし『ベルリン・ミッテ区長がドイツ外務省の指示を受けるものとみられる日本の圧力に屈しないことを願う』と強調。

 その上で『ドイツはナチスの歴史を清算し、世界中から尊敬されている』とし『ドイツ官庁は、日本の戦争犯罪隠ぺいに加担してはいけない。独立市民団体は、日本の戦争犯罪を公開的に知らせ、指摘している』と述べた。(後略)」(ハンギョレ新聞)。

 

 世界中がドイツを尊敬? 

 「<東独出身のメルケル時代から長年対ロ融和政策を続けた挙句、対ウクライナ武器供与にもロシア産エネルギーからの脱却にも及び腰のドイツは、「再び歴史の間違った側に踏み出そうとしている」と、西側同盟国からの不信が募っている>

 ボリス・ジョンソン英首相のウクライナ通商特使に任命されたキャサリン・マイヤー貴族院議員(保守党)は、ロシアの軍事侵攻が続くウクライナへの支援をためらうと歴史の間違った側に立つ恐れがある、とドイツの指導者たちに警告した。

 マイヤーは、4月25日にロンドンのウェストミンスター宮殿で行われた地政学評議会のイベントで講演し、ドイツ政府を批判。ドイツはロシアのウクライナ侵攻後、国防費を大幅に増額すると発表したが、EUの対ロシア制裁強化への参加やウクライナへの重火器供与を躊躇しているところを見ると、本当に歴史的な方向転換をしたのかどうか『疑わしい』と語った」(2022/04/28 ニューズウィーク日本語版)。

 

 「ドイツのシュレーダー元首相(78)への批判が高まっている。ロシアのプーチン大統領の長年の友人で、ロシア軍によるウクライナ侵攻開始後も、ロシアの複数のエネルギー企業幹部にとどまり巨額報酬を得ているためだ。所属する社会民主党SPD)からの離党や、シュレーダー氏個人に制裁を科すことを求める声も強まってきた。

 1998~2005年に首相を務めたシュレーダー氏は、プーチン氏の求めに応じ、パイプライン事業『ノルドストリーム』を推進。ドイツが天然ガスの“ロシア依存”を強める契機となった。シュレーダー氏は首相退任後も、同パイプライン運営会社の株主委員会会長や石油大手ロスネフチ取締役会会長など、数々のロシア企業の役員を務め、ロビー活動に協力してきた。ショルツ首相らによるポスト返上の求めにも応じていない。

 シュレーダー氏は23日の米紙NYタイムズのインタビューで、ロシアとの関係を『過ちとは認めない』『過去30年はうまくいってきた』などと強弁。戦争は過ちとしつつ、戦争を終えられる唯一の人物の信を失ってはならないと、プーチン氏との関係を続ける意向を示した。実際に両氏は3月にモスクワで面会したが、成果は何もなく終わったもようだ。

 ウクライナ侵攻後、独連邦議会(下院)内のシュレーダー氏の事務所職員は、長年の側近も含め全員辞任。エスケンSPD党首は、シュレーダー氏のプーチン氏擁護は『全くばかげている』と離党を求めたほか、複数の与野党議員が制裁を科すことを主張。ビルト紙が28日公表した世論調査でも、59%が制裁に賛成した」(2022/04/29 時事通信)。

 

 シュレーダーと韓国人妻との結婚は、こみいったものだった。韓国紙によると・・・

 「ドイツのシュレーダー前首相(74)が、再婚相手の40代の韓国人女性の元夫から訴えられた。元夫は「前首相のため婚姻関係が破綻した。精神的苦痛に伴う慰謝料を支払え」と主張し、ソウル家裁に1億ウォン(約1000万円)の損害賠償請求訴訟を起こしたという。シュレーダー氏は1月の記者会見で「秋頃の結婚を考えている」と表明していたが、独メディアは今月、すでに2人は結婚していると報道。シュレーダー氏にとって人生5度目の結婚は、話題を呼んでいるようだ」(2018/05/18)

 そして、「シュレーダー元ドイツ首相が妻キム・ソヨン氏の元夫A氏が起こした損害賠償訴訟で敗訴後に控訴せず、判決がそのまま確定した。

 17日、法曹界によると、シュレーダー元首相は先月20日、キム氏の元配偶者A氏が自身を相手に起こした損害賠償請求訴訟で、一部敗訴した。しかし、期限内に控訴状を提出しなかった。当時、ソウル家庭裁判所は、A氏が請求した1億ウォン(現レートで約980万円)の損害賠償訴訟でシュレーダー元首相に3000万ウォンの賠償責任を認めたが、この判決がそのまま確定した。

 A氏は2017年11月にキム氏と離婚し、条件としてシュレーダー元首相と決別することを要求した。しかし、キム氏は2018年にシュレーダー元首相と結婚した。A氏はキム氏が約束を破ったとし、シュレーダー元首相に1億ウォンの賠償を求める訴訟を起こした。

 シュレーダー元首相側は、自身とは関係なくA氏とキム氏の関係がかなり前から破綻していたと主張してきた。しかし、裁判所はこれを認めなかった。裁判所は、シュレーダー元首相がキム氏に配偶者A氏がいることを知りつつも不貞行為を行い、この不貞行為によりA氏の夫婦共同生活が破綻に至ったと判断した」(2021/06/17)。

断章429

 イギリス国防省筋は、ウクライナ軍の戦果を伝えている。しかし、誰もが秘かに思っているように、戦局が膠着すれば、時間はロシアに味方する。

 「国防費を一瞥(いちべつ)するだけで両国の差は浮き彫りとなる。先週発表された国際戦略研究所の報告書『ミリタリー・バランス』によると、ウクライナの2021年の国防費は47億ドル(約5,400億円)。これは核兵器を持つロシアの458億ドルの10分の1程度に過ぎない」(2月26日 CNN)。ロシアの装甲戦闘車両は15,000台余もあるという。

 

 そもそも、ロシアの酷薄な戦争文化を軽視してはならない(ナポレオンやヒトラーも敗北した)。

 自国領土を焦土化しても抗戦する。容赦なく督戦隊 ―― 軍隊において、自軍部隊を後方より監視し、自軍兵士が命令無しに勝手に戦闘から退却或いは降伏する様な行動を採れば銃撃を加え、強制的に戦闘を続行させる任務を持った部隊 ―― を配置する。敵を畏怖させるためには、レイプを許し、民族浄化さえ躊躇(ちゅうちょ)しない。資源大国であり、農業大国でもあるから、後は武器さえあれば、飯を食い戦争を継続できる。

 資源もなく食糧自給もできないまま戦争に突入し、「粘土の足の巨人」と揶揄(やゆ)された戦前日本とはまったく違うのだ。しかも、ロシアの背後には、ロシアの敗北を望まない中国が控えていることを忘れてはならない。

 

 エストニアの首相カヤ・カラスは言った。「ウクライナは、正気を失った人間による一度きりの誤算の犠牲者ではない。私たちが目撃しているのは、人的犠牲があろうとも、力づくで近隣諸国を支配しようとするクレムリンによる長期にわたる計画的なキャンペーンだ」。

 

 ようやく、4月27日になって、「ドイツ政府がウクライナへの新たな支援として、対空戦車を送ると明らかにしました。ドイツ国防省は26日、ウクライナへの新たな支援として『ゲパルト対空戦車』50台を提供すると発表しました。『ゲバルト』はドイツ製の対空戦車で、すでに退役し、現在は使われていないものです。ウクライナのゼレンスキー大統領は、西側諸国に軍事支援を何度も呼びかけてきましたが、ドイツは慎重な姿勢を崩さず、ヘルメット5,000個などを送るにとどめていました。戦闘が長期化するなかで『ヘルメットしか送らない』という強い批判を受けて、政策を転換し、初めて重火器を提供します」(テレ朝ニュース)。重火器というが、小粒で、腰が引けている。ドイツには、「レオパルト」という優れた戦車がある。なぜ、「レオパルト」を提供しないのか? 

 

 ロシア軍をウクライナからすみやかに駆逐すべきである。戦局が膠着すれば、時間はロシアに味方する。

 第一に、すでに、EUNATOを揺るがすべく、エネルギー資源の供給制限で脅しをかけている。

 「ロシアのプーチン大統領がついに後戻りできない一線を越えた。ポーランドブルガリアへの天然ガス供給を止め、他の欧州諸国に対してルーブルで代金を払えという自らの要求に従うか、ガス供給停止措置を受け入れるか迫っているからだ。これで欧州連合EU)は否応なく、その団結力を試される重大な局面に突入する」(2022/04/27 ロイター通信)。

 第二に、占領地で着々と“ロシア化”“併合”の既成事実化をすすめている。

 「ロシア国営メディアは28日までに、同国の占領下にあるウクライナ南部ヘルソン州の使用通貨が来月1日からロシア通貨ルーブルに移行する見通しだと報じた。ヘルソン州行政当局の幹部はRIAノーボスチ通信に対し、移行期間は最大4カ月で、その間はルーブルウクライナ通貨フリブナの両方が流通することになると語った。その後ルーブルに完全移行するという。 CNNは幹部の発言を独自に検証できていない。CNNは先の報道で、ロシア軍が26日にヘルソンを統治する新たな地方政府を据えたことを確認した。ロシア軍はその数日前にヘルソン市の市庁舎を制圧。選挙で選ばれた市政府を排除し、治安要員をロシア兵に置き換えていた」(2022/04/28 CNN.co.jp)。

 

 「今日は人の身の上、明日は我が身の上」である。すでに日本は、ロシアから「非友好国」と認定された。いまさら誰の顔色を見ているのか? ヘルメットと防弾チョッキだけでよいのか?

 

【補足】

 「ポーランドのメディアは29日、同国が保有する旧ソ連開発のT72型戦車をウクライナに供与したと報じた。台数は200両以上という。このほか、ドローン(無人機)や砲弾なども含め、軍事支援額は16億ドル(約2070億円)規模になるという。

 ロシア軍によるウクライナ侵攻開始から2カ月以上が経過し、依然として戦闘が収束しない中、ロシア軍の攻勢に耐える兵器の支援が不可欠と判断した模様だ。ポーランドにはウクライナからの難民が多数押し寄せている」(2022/04/30 毎日新聞)。

断章428

 日本が自衛し、未来のために戦えるように働く者もいれば、化石化したアタマのままで過去にしがみつき原稿料を稼いでいるインテリもいる。

 

 モーリー・ロバートソンは、「ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ガラパゴス化していた日本の言論空間にも『現実』がなだれ込んできました。例えば、『国を守るより命が大事。ウクライナは早く降伏すべき』と主張する一部の論客に対しては、国際政治や軍事の専門家が『一方的な侵略に屈した後の国家の悲惨さを想像すべきだ』ときっちり反論し、世論も降伏論へ傾いてはいません。また、ウクライナのゼレンスキー大統領による国会でのオンライン演説を巡っても、立憲民主党の泉 健太代表がツイッターで『内容の調整』の必要性を訴えると、専門家から総ツッコミが入りました。こうした“本筋からズレた意見”の問題点がはっきりと示され、かつそれが広がり、本丸となるべき議論に軸が置かれ続けているのは大きな変化だと感じます。ある面ではようやく『戦後』が終わろうとしている、ともいえるかもしれません。戦後70年以上にわたり培われてきた日本独自のエコシステムの中で、世界の現実とはかけ離れた『平和』を語ってきた知識人の多くは、おそらく引き出しからどんなボキャブラリーを探しても、今の状況で人々に響く言説を展開することは難しい」と、4月4日、週刊プレイボーイで述べた。

 

 それでもまだ相変わらず、“本筋からズレた意見”を広めているインテリがいる。

 たとえば、山口二郎は、4月25日付け韓国・ハンギョレ新聞で、「ロシアの侵略は、中国に同様の軍事的抑圧行動を促すのではないかと懸念する声もある。北朝鮮がミサイル開発をいっそう加速していることも事実である。これに対応して、日本国内では戦争放棄をうたった憲法9条を改正すべきという主張も広がっている。しかし、戦争はおびただしい死と破壊をもたらすだけだというのが現実である。民主主義と自由を保ち、人命に最高の価値を認める国々は、戦争を起こさせないための話し合いの努力を強化しなければならない。日本が取り組むべきは、まず日韓関係を修復することである」と、ボケている。

 

 この世界(戦争と外交)の真実を知るためには、ソ連に長く支配されてその残虐さや恐怖を体験し、EUNATO加盟国でありながらもロシアの次のターゲットではないかと指摘されるバルト三国の声を聞くことが有益であろう。

 デジタル変革を遂げ、電子国家として知られるエストニアの首相カヤ・カラスが、ウクライナで見られるロシアの残虐行為は、かつてエストニアが経験したものだと、イギリス誌に寄稿した。「クーリエ・ジャポン」に転載されていたので紹介したい。

 

 「私がこの原稿を書いているのは、ウクライナの首都キーウ近郊にあるイルピンやブチャの惨状を見て、世界が目を覚ました頃だ。ロシア軍によって殺害された市民や集団墓地の写真を私たちは目にする。

 これらの写真は、ソビエト政権とその秘密警察であった内務人民委員部(NKVD)による殺戮をエストニアの人々に思い起こさせる。その国家によるテロリズムマシンは、まったく同じように市民を殺害したのだ。

 ロシアに送還する前に尋問をする浄化キャンプや強制送還について耳にすると、私やすべてのエストニアの家族は、ソ連占領下の抑圧や収容所での辛い思い出に引き戻される。

 民間人を狙うのはロシアの戦術だ。その証拠に、ウクライナでは兵士よりも市民のほうが多く殺傷されている。特に市民の人口の4分の1が自宅からの避難を余儀なくされていること、ロシアがマリウポリのような都市で人道的な大惨事を引き起こしたのが偶然ではないことからもそう言える。(中略)

 ウクライナで何千人もの人々が命を落としているのを見ると、一人の母親として私の心は痛む。クレムリンは自国の若者を戦地に送って死に追いやり、罪のない人々を虐殺し、彼らの家を大量に砲撃している。

 これらは何のためだろうか。ウラジーミル・プーチン帝国主義的野心のためである。ソ連は崩壊したが、その帝国主義イデオロギーはまったく失われていなかったことがはっきりした。

 プーチンの戦略的目標が変わっていないため、ウクライナの苦しみと惨状はまだまだ終わらない。銃を突きつけた上での交渉はさらなる戦争を回避するための解決にはならないし、犠牲を払って平和をもたらしても残虐行為がなくなるわけではない。

 私は、これを自国の経験から述べている。第二次世界大戦後、エストニアや他の多くの国々にとって、平和は、多大な人的犠牲を伴うソ連による占領の始まりを意味した。大量殺戮、抑圧、大量の強制追放、その他の人道に対する罪が行われ、新たな苦しみがもたらされたのだ。

 エストニアの経験から言えるのは、ウクライナを占領軍から解放してその領土を回復し、ロシアの侵略を阻止するよう、私たちは今集中的に支援しなくてはいけないということだ。ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が勇敢な戦いを率い、彼が極めて困難な選択をしていることに対し、私は称賛しかない。

 ここ数十年の間に警告のサインはすべて出ていた。帝国に対するノスタルジー、ロシアは犠牲者であると語るストーリー、プーチンによるチェチェンジョージアグルジア)、ドンバス、クリミアでの紛争などだ。

 また、ロシア、トルコに次いでヨーロッパで3番目に大きい領土、人口4400万人を抱えるウクライナが存在する権利はないという発言も聞かれた。昨年12月、ロシアはNATOに対して最終通告を行い、軍隊と武器の配備を制限して、事実上加盟国数を1997年当時の規模に戻すよう求めた。

 プーチンの過去3回の戦争は、なぜ彼がこの戦争に勝利してはならないか、なぜモスクワがこのプロセスで何かを得たふりをすることが許されないかを示している。私たちは過去に何度もプーチンにこの侵略を許してきたが、今再びそれを許すわけにはいかない。

 そうすれば、プーチンの欲望はますます高まり、より多くの残虐行為とより多くの人々の苦しみが後に続くだろう。

 ロシアによるウクライナでの戦争により、ソ連の占領から脱した中東欧の国々がなぜいち早くNATOへの加盟を求めたのかを改めて浮き彫りにした。同盟はロシアを脅かすためではなく、防衛のために存在する。何千万人もの人々が独裁者の奴隷となり、虐殺されないよう守るためにあるのだ。ソ連、そして後のロシアの動きゆえに、これほど多くの国がNATOへの加盟を望んだのだ。

 NATOを『拡大』や『エスカレーション』と非難する人々は、クレムリンが追求するまさに帝国主義的なイデオロギーと言語に屈している。これらは、国家主権と民主主義の原則に反する。

 私たちが生きるのは、時代を画する瞬間であり、今下す決断は何十年にもわたって私たちについて回るだろう。戦争は欧州連合EU)加盟国の国境に接している。

 ウクライナに対する私たちの対応と支援こそが、今後この大陸で永続的な平和が実現可能かを決定する。私たちが取るべきは、『スマートな封じ込め』というラベルの下に行動を起こすことだ。

 まず、ウクライナへの軍事支援が最優先されなければならない。これが意味するのは、ウクライナの人々が必要とし、要求している武器や物資を送ることだ。彼らは、自国の空を守るための支援だけでなく、自分たちの都市を取り戻し、ロシアの占領と抑圧から人々を解放するための支援を必要としている。(中略)

 第二に、私たちはクレムリンとその戦争マシーンを経済的に弱めなければならない。その収入がなくならない限り、ロシアはその侵略と虐殺を続けられるだろう。炭化水素を主成分とする天然資源は、昨年のロシア国家予算の主要な収入源(40%以上)であった。今年は、その需要の増加と価格の上昇により、ロシア最大の収入源に急速になりつつある。

 もし自由世界がプーチンの戦争への資金供給を止めたいなら、できるだけ早くこれらの収入を枯渇させることに注力しなくてはならない。もし炭化水素の購入を一度に止められないならば、ロシアの石油とガスの代金の一部を留保する特別な第三者預託口座を設けるべきだ。そうすれば、クレムリンの受け取る収入は急速に減少する。

 また、この戦争がロシアに莫大な損失をもたらすという明確なシグナルをプーチンに送れる。ロシアは軍隊が撃った弾丸の代金だけでなく、ウクライナで破壊された橋や砲撃された家屋の代金を支払うことになる。クレムリンはその損害に見合った対価を支払わなければならない。

 第三に、NATOは、自国の領土を隅々まで守り、必要であれば武力行使する決意と能力、準備があることを示さなければならない。平和を実現する最善の方法は、ときには軍事力の行使も厭(いと)わないことです。(中略)

 NATOはこれまでで最も成功した防衛同盟であり、その歴史において一度も軍事的な侵略を受けたことはない。これには明確な理由がある。抑止力が働いているのだ。この状態を維持するため、軍事態勢を適切に変えていく努力が必要だ。

 NATOの防衛態勢に関しても長期的な政策転換が必要だ。つまり、バルト三国に常駐する戦闘可能な部隊を増やし、長距離砲兵、防空、その他の能力を持たせるべきだ。その上空を飛ぶNATOの戦闘機や、バルト海を航行する艦船の数も増やすべきだ。この計画は現在進行中で、最終的には6月のマドリッドでのNATO首脳会議で決定される予定だ。

 ウクライナは、正気を失った人間による一度きりの誤算の犠牲者ではない。私たちが目撃しているのは、人的犠牲があろうとも、力づくで近隣諸国を支配しようとするクレムリンによる長期にわたる計画的なキャンペーンだ。この侵略を食い止め、新たな暴発を防ぐためには、戦略的な忍耐と長期的に政策を維持する必要がある。

 ロシアのウクライナに対する侵略は人類に対する攻撃であり、その影響は世界的なものになる。これに立ち向かい、阻止するためには、勇気と道徳的な善悪の区別と行動が必要だ。私たちは『二度と引き起こさない』と約束した。本当にこれが最後であってほしいのなら、私たちは今すぐ行動しなければならない。無関心はすべての犯罪の母だ」。

 

 「銃を突きつけた上での(外交)交渉はさらなる戦争を回避するための解決にはならないし、犠牲を払って平和をもたらしても残虐行為がなくなるわけではない。

 平和を実現する最善の方法は、ときには軍事力の行使も厭(いと)わないこと」が、この「アナーキー」な国際社会で生き残るための真実の声である。