断章104

 年明け早々、「動物王国」の下級国民であるネズミ男は、コタツで背中を丸め鼻水をすすりながら温かいココアを飲んでいる。「北風吹きぬく 寒い朝も ココアひとつで 暖かくなる~♪」と替歌を歌ったりして、ご機嫌である。

 というのは、知り合いの若い女性から、「ライン」で年賀が届いたからである。スタンプが、ポンポンと2つ送られてきたにすぎない。しかし、そのスタンプ(の文)が、「あけましておめでとう」「今年もよろしく」の“省略語”である、「あけおめ」「ことよろ」だったからである。

 出口 汪に言わせると、「他者意識が希薄なほど言葉は省略に向かう」「そうした言葉で分かり合っていると錯覚できることが、おそらく仲間の資格なのだろう」ということだから、若い女性の仲間に入れてもらえた気がしたのだ。おめでたい奴である。

 

 つれあいのハムスター女は、朝早くから元気よく買い物に出かけた。なにしろ今日は、ネズミ男のような低所得者向けプレミアム付き商品券を使うし、「初売り特売日」だし、大好きなポイント10倍デーでもある。「三重楽」(?)なのである。彼女に言わせれば、「プレミアム付き商品券を、いつ使うの? 今でしょ!」なのである。

 彼女とてプレミアム付き商品券の「本質」を知っている。「トゥリウス・キケロの言うように、人民とはたとえ無知であったにしても真実を把握する能力を有する」(マキャベリ)からである。プレミアム付き商品券の「本質」を知っていてもハムスター女は、気にしない。「くれるものは、何でも、何度でもOK」な主義だからである。

 

 今日もネズミ男とハムスター女は、「北風吹きぬく 寒い朝も 野越え山越え 来る来る春は いじけていないで 手に手をとって 望みに胸を元気に」(『寒い朝』♪吉永小百合)、下級国民にはとりわけ厳しい北風の中に春を呼ぶのでありました。