断章102

 「中国の軍事専門サイト『新浪軍事』など複数の中国メディアは、中国で今年、空母護衛などを担う最新鋭のミサイル駆逐艦9隻が進水したと伝えた。駆逐艦の1年の進水数では『世界記録』と宣伝している。海軍力を増強して米軍に対抗する狙いが一段と鮮明になった。

 遼寧省大連の造船所では26日、駆逐艦2隻の進水式典が開かれた。排水量1万トン級でアジア最大の『055型』と、『中国版イージス』と称される『052D型』で、今年進水の9隻はいずれもこの2種の最新鋭艦となった。

 駆逐艦の建造ペースは、近年では米国が1992年に6隻を進水させたのが最多で、中国はこれを初めて塗り替えたとしている。

 進水した船は、試験航海などを経て来年にも就役する見通しだ。055型は対空ミサイルなどの計112の垂直発射装置を搭載し、空母に随伴する主力艦となる。進水済みの055型はこれで6隻目、052D型は23隻目となった。

 中国では今年、駆逐艦の他に、初の強襲揚陸艦『075型』1隻や、駆逐艦より小型のコルベット艦12隻も進水するなど、軍艦艇の増産を加速させている」(2019/12/28 読売新聞オンライン)。

 

 そして、「これから起こることのすべてを知りたい人は、これまで起こったことを学ばなくてはならない。いつの時代であっても、世界のすべてのものごとは、過去にも存在してきたのだ」「天空、太陽、元素、人間は、昔あった姿と、その運行、体系、働きを変えてまったく別物になったのではない」(マキャベリ)。

 

 例えば、ソ連フィンランドに侵攻した冬戦争である(注:日本には、「中国は平和勢力であるから、尖閣諸島に侵攻して来ることなど100%ありえない」という人がまだいる)。

 「1939年8月23日の独ソ不可侵条約の秘密議定書によって、独ソによる東欧の勢力圏分割が約束された後、ソ連バルト三国フィンランドへの圧力を強め、バルト三国とは軍事基地の設置とソ連軍駐留を含む相互援助条約を結ばせた。フィンランドにも同様に、国境線の変更や軍事基地設置とソ連軍駐留を含む要求を行ったが、フィンランド側は応ぜず、両国間の交渉は、11月に決裂した。

 ソ連は自らの国境警備隊フィンランド軍から発砲を受けたとして、1939年11月30日にフィンランドに侵攻した。明らかな侵略行為に対して国際社会から非難を浴びたソ連は、1939年12月14日に国際連盟から追放されるが、戦争を終結させる上では何らの実効性も持たなかった。ソ連の指導者スターリンは、実力行使すれば、フィンランドは和平を求めてくるだろうと考え、フィンランド軍のおよそ3倍の兵力を投入した」(Wiki)。

 「フィンランド人は自分たちの領土を守るために全精力を注ぎ、・・・この目的のために、小さいながらも機動力と土地勘がありさまざまな状況に完璧に対応できる部隊を使った。そういう部隊にはまた、民衆が無条件で協力し、兵糧を提供してくれる。彼らはこの完璧な戦略のもと、カレリア地峡でソ連兵の進軍を阻止するために奮闘した」(ペドロ・バーニョス)。

 

 現代日本の豊かさ、風土、まん延する「青臭いリベラル病」。それらは、「怠惰な風潮を助長する。人間を惰弱にし、軍事にたずさわれない腰抜けに変えてしまう弊害を妨げるために、賢明な立法者が、どのような方策を打ち立てたかを(歴史に)学ぶべきであろう」(『ディスコルシ』)。

 

【補】

 「日本の貧しさ」を誇張して語る人がいる。しかし、歴史と世界を見れば、現代日本はなお、“豊か”なのである。そのことは、ベーシックインカムをめぐる議論でも明らかである。「ベーシックインカムで一律一人毎月20万円受給できるとしましょう。そうなれば、世界中から貧しいひとが殺到するに決まっています。日本人と結婚して子どもを生めば、そのたびに毎月20万円入ってくるのですから。ベーシックインカム推進派の人たちは、世界には一日100円以下で暮らしている人がたくさんいることをぜったい言わない」(橘 玲)のである。

 

【参考】

 「中国南西部の貴州省で、極度の貧困のために十分な食事を取ることができず、栄養不良に陥っていた学生が死亡した。世界2位の経済大国で浮き彫りになった貧困の実態に衝撃が広がっている。

 貴州盛華職業学院の3年生だったウー・ホワイェンさん(24)は13日、貴州省にある貴州医科大学の系列病院で死去した。死因は明らかになっていない。

 ウーさんの窮状は昨年10月、地元メディアに取り上げられて脚光を浴びていた。当時の地元自治体の発表によれば、身長はわずか135センチ、体重は21.6キロだった。

 両親は亡くなり、月額300人民元(約4800円)の生活保護を受けて弟と2人で暮らしていたという。弟には精神疾患があり、ウーさんは弟の介護のために極端に切り詰めた生活を送っていた。

 国営メディアによると、普段は朝食を抜き、それ以外は米飯にチリを混ぜただけの食事をしていたという。

 10月には両脚が腫れる症状のため入院し、心臓弁の異常があると診断されて手術を受けた。窮状を知った北京の慈善団体がウーさんを救うための募金活動に乗り出し、手術費用の3倍の額が集まっていた。

 しかし今年に入って容体が悪化、13日に死亡した。中国のソーシャルメディア、微博(ウェイボー)では、国がなぜウーさんを助けられなかったのかと疑問をぶつける投稿が相次いでいる。

 中国は国内総生産GDP)で世界2位の経済大国だが、大都市と農村部の経済格差が拡大。国家統計局によると、2018年末の時点で1660万人が年間2300元(約3万6000円)未満で暮らす貧困層に分類されている」(2020/01/15 CNN北京)。

 

【補】

 「『我が国で6億人は、月収が1000元(約1万5000円)に過ぎない』。中国の李克強首相が5月28日、全国人民代表大会(=国会)閉会後の記者会見で明かした数字が中国国内で波紋を広げている。習近平国家主席は2020年までの『貧困撲滅』を公約に掲げているが、李氏の言葉によって低所得層の厳しい暮らしぶりや貧富の差の大きさが図らずも浮き彫りとなったからだ」(2020/06/01 毎日新聞)。

断章101

 むかし、むかし、大海に浮かぶ島国がありました。

 かつて、この島国の住民は勇敢で進取の気性、戦士の気概にあふれていました。

 「まるい地球の水平線に なにかがきっとまっている 苦しいこともあるだろさ 悲しいこともあるだろさ だけどぼくらはくじけない 泣くのはいやだ笑っちゃお 進め~」(『ひょっこりひょうたん島』♪)と、大挙して大海に乗り出したものです。

 ところが、ある時、「リベラル病」という奇病が大流行して以降、島国の住民から勇敢さや進取の気性、戦士の気概がまったく失われてしまったそうです。

 

 この島国には、カサンドラという輝くほどに美しい娘がいました(むかし、むかし、大和の国にも「衣通姫」という、美しさがまるで衣を貫いているように見える美しい姫がいたそうです)。

 カサンドラは、その美しさの故に、神に愛され、未来を見通す「予言」の力を与えられました。

 彼女は、いくつかの「予言」をしました。第1に、まもなく島国は恐ろしい地震・噴火・津波に襲われるだろうこと。第2に、ブラックスワンが飛んできて島国を滅茶苦茶にしてしまうだろうこと。第3に、やがて大勢の異国人が攻めてくるだろうこと。

 《備え》をしなければならないと、彼女は説きました。

 ところが、猛威をふるった「リベラル病」のせいで、彼女の「予言」を真剣に受けとめる住人は、ほとんどいなかったのです。

 

 というわけで、彼女の「予言」はすべて的中したのですが、何の役にも立たず、彼女は死に(そうです。美人薄命です)、島国の人間たちもみんな滅んでしまいました。

 その後、島に残された動物たちは、「動物王国」を作るほどに進化しました。しかし今では、滅んだ島国の住人たちと同じように内輪で権力・富・名誉を求めて争うようになり、奇怪な「リベラル病」にも侵されているそうです。

 

【補】

 『孫子』(孫武)全13篇の要諦は、「故に用兵の法は、其の来たらざるを恃(タノ)むことなく、吾の以て待つ有ることを恃むなり。其の攻めざるを恃むことなく、吾が攻むべからざる所あるを恃むなり」にある。

 すなわち、「想定したくない地震津波のような悲惨な事態が来襲してくることはあり得ないという希望的な観測に依存するのではなく、いかなる災厄が襲ってきても被害を最小限にとどめられる準備態勢を平素から構築整備しておこう、平和を希求する自国に武力侵攻するような邪な外国勢力は周辺には存在しないという願望に依存するのではなく、いつ如何なる武力侵攻に対しても抑止・撃退し得る不敗の防衛態勢を平素から構築整備しておこうということである。」(『戦略論の名著』)。

 

【補】

 阪神大震災から25年。「首都直下地震南海トラフ巨大地震が起きれば、甚大な被害が予想される。前者の被害想定では首都圏全体で最大2万3千人が死亡。後者も東海から九州までを揺れが襲う。死者は最大32万人、経済被害は220兆円超に膨らみ、東日本大震災を上回る被害が出る可能性がある。

 政府が提言するのは、耐震化や業務継続計画(BCP)などの減災対策だ。停電や断水、交通機関のマヒなどインフラが長期間にわたり寸断される可能性があり、日ごろから水や食料などの備蓄が求められる。米地質調査所によれば日本周辺でM2.5以上の地震が19年の1年間で800回以上発生した。自然災害のリスクにさらされる中、日本全体での《備え》が問われている」(2020/01/17 日本経済新聞)。

断章100

 「ふるさとはどこですかと 私は聞いた 南の海の町と あなたは答えた ああ、そして幼い日のことを 瞳をかがやかせ 歌うように夢のように 話したわ」(『ふるさとはどこですか』♪テレサ・テン

 

 戦後復興から経済高度成長・バブル期にかけて、若者たちは奔流のように都会に出て、東京圏に住み着き、その故郷は「空き家」ばかりの過疎地・限界集落となった。

 「第一次産業に従事する人の数は、・・・2014年に発表された人口統計資料によると、全体の4%の238万人しかいません。また、そのほとんどが高齢者です。地方から若者が流出していくだけでなく、地方に残っている若者ですら第一次産業に従事しない傾向にあります。これから人数はさらに減少していくと考えられています」。

 「地方にあった企業や商業施設などは営業できなくなり、さらに若者は都市部に流出せざるを得ない状況になりました」(「地域百貨編集部」を再構成)。

 近年は首都圏などの一部都市圏を除いて全国的に過疎化がさらに進行している。

 

 「東京圏は、過度の人口集中に基づく通勤時間が長い、住宅面積が狭いといった課題を抱えている。 通勤時間を含む仕事に関する時間全体を見ても、東京圏は長く、余暇が少ないことが見て取れる」(総務省「社会生活基本調査」2016)けれども、なお人口流入が続いている。というのは、東京圏には魅力的な何かがあるように思えるからである。

 「東京圏転入者が現在(東京圏)の仕事を選ぶにあたって重視したことは、男女ともに『給与水準』や『自分の関心に近い仕事ができること』が相当程度高い(6割超)。また、男性では『企業の将来性』、女性では『一都三県で仕事をすること』とする割合も高い。女性では、さらに『育児・介護の制度が充実していること』も一定程度重視。東京圏転入者が地元の就職先を選ばなかった理由は、男女ともに『一都三県で仕事をしたかったから』が最も高い。また 、男性では『希望する仕事がなかったから』が、女性では『一都三県で暮らしたかったから』も相当程度高い割合。女性では 『親元や地元を離れたかったから』も高い割合」(「東京圏に転入した若年者の『働き方』に関する意識調査」2015)を占めているからである。

 

 東京圏(都会)に出れば、得るものもあるが、失うものもある。

 先の敗戦において、日本人が喪ったものは、親兄弟だけでなく、“国家”も亡くしたのであるが、今では故郷も無くしてしまいそうである(自称「知識人」リベラルとは、共産主義に色目を使い、自らすすんで“国”を捨て、根無し草《デラシネ》になった者たちのことである)。

 

 シモーヌ・ヴェイユは、「根をもつこと、それは魂のもっとも切実な欲求であり、もっとも無視されてきた欲求である。職業・言語・郷土など複数の根をもつことを人間は必要とする」と言ったそうだが、人が根をもたなくなれば、いったい何が起きるだろうか?

 

【補】

 以下は、『根を持つこと』(シモーヌ・ヴェイユ)への、あるアマゾンレビュワーの評の一部である。

 「フランスの哲学者で、第二次世界大戦時に亡命先の英国で34歳という若さでなくなったヴェイユの代表作の一つです。上巻では人間の魂に必要なものは何かをリストアップし、そのなかでも特に著者が重要と考えている『根を持つこと』についての論が始まります。植物にとって根が養分を吸収する重要な役割を果たしているように、人間もなんらかの根を持たなければ魂が死んでしまう。そして根から無理やり引き剥がされた状態、つまり『根こぎ』の恐ろしい影響について上巻では詳しく論じていますが、その中心的話題は祖国の喪失です。フランスはナチスドイツに占領されフランス人は『根こぎ』の状態になりますが、ヴェイユはいかにしてフランス人の魂を回復させるべきかについて最後に述べています」。

断章99

 今、「中国経済の拡大ペースは、1990年以降で最低水準にまで減速している。中国のエコノミストは望ましい景気対策を巡って激しい論争を繰り広げているが、景気減速が今後も続くという判断では意見の相違はほとんどない。12日に閉幕した『経済工作会議』を総括した新華社の報道では、『穏』という文字が約30回も使われた。景気失速の防止が実質的に経済政策の最重要目標になっているようだ。

 それが事実ならば、中国経済の減速の勢いが公表より一層激しいレベルまで進んでいるとみてよかろう」(2019/12/20 呉 軍華・日本経済新聞)。

 

 中国共産党は、危機に対して身構えている。

 先日開催された、「第19期中央委員会第4回全体会議(4中全会)で採択した決定」は、「党中央への権限集中を強化する方針のもと、ビッグデータ人工知能(AI)を使って管理する制度や規則を構築する。インターネットの世論管理を強化することなども盛り込み、監視社会を強化する。

 政治、経済、軍事、外交などで全面的に『党中央の権威と集中的な統一指導』を強化する方針も示した。習氏の思想を学ぶ『初心を忘れず、使命を心に刻め』と銘打った党内教育運動を制度化して推進することなども明記した。

 科学技術に関して、難関を突破する挙国体制を構築することを明記した。習指導部の看板政策だったハイテク産業育成の『中国製造2025』に代わり、国内の研究機関や企業の技術や資金を集めて、米国など海外に依存している半導体などの研究開発を進める狙いがありそうだ。

 国内経済に関しては、国有企業を揺るぎなく発展させて、国有企業などの国有資本をより強くする方針を示した。外国企業とのグローバル競争に備え、国有企業の統合再編を加速するとみられる。外国企業の対中投資について安全保障上の審査制度などを改善する内容も盛り込んだ」(2019/11/5 日本経済新聞)。

 

 ここで、「1949年の建国以来の中国を振り返ってみるなら、民衆の政府への信任が、いかにして次第に喪失してきたかをはっきりと見て取ることができる。

 中共執政の初期、民衆の政府への信任は最高であった。民衆の信認は上記の3つのレベルにおいて存在していた。つまり政治制度については、この制度を支えるマルクスレーニンの学説と国家機構から党の大小の幹部に至るまで、また党の最高指導者である毛沢東への信任はまさに神への信仰にも匹敵した。

 1958年の大躍進とそれにともなう3年の大飢饉、1966年に始まる文化大革命など一連の政治運動のもたらした災難を経て民衆の指導者個人に対する政治的信任は大幅に喪失した。だが政治制度への信任はなお強かった。

 1989年の『六四事件』(『天安門事件』)の後、この政治的信任は鄧小平の『発展こそが不動の道理』という方針によって維持され、『先富』を許すという約束は経済発展の中で、民衆にも自分たちにもわずかな分け前があると信じさせた。

 だがここ10余年来、貧富の格差の拡大、絶えざる政府の腐敗とスキャンダル、民衆の生存資源の剥奪、社会治安の急速な悪化などが原因となって民衆は自分たちが経済成長の果実の分け前にあずかれないことに気付き、各種の社会的矛盾が先鋭化してきた。中国当局が手段をえらばずに『安定維持』に全力をあげる一方、民衆は政府による大規模な人権侵犯だけを経験することになり、民衆の大多数はすでに『盛世』から疎外され、さらに厳しい経済的圧力の下で息も絶え絶えになっている」(『中国高度成長の構造分析』何 清漣)。

 

 しかるに、「専制全体主義体制の国家では、選挙を通じて政府指導者を交代させたり、社会的監督によって政府の行為を改善することはできない」ので、「その不満が往々にして累積して政治制度への不満となる」(同前)のである。

 

 だから、中国共産党は、メディアに猿ぐつわをはめなければ、安心して眠ることができない。

 先には、「習近平国家主席(引用者注:『初心を忘れず、使命を心に刻め』と訓戒する男である)の親族に関わるオーストラリア当局の捜査を報じた米紙・ウォールストリートジャーナルの記者が、査証(ビザ)の更新に必要な記者証の発給を中国当局から拒まれ、事実上の国外退去処分となったことがわかった。同紙が8月30日、明らかにした。

 王春翰記者は、7月末に中国外務省に記者証の更新を申請したが受け入れられず、8月30日にビザの期限が切れた。

 中国外務省からは『悪意をもって中国を攻撃する外国人記者は歓迎できない』との説明を受けたという。

 王春翰氏は同紙の別の記者と7月、豪当局がマネーロンダリングの捜査に関連して習氏の親族を調べているとの内容を報じた。中国当局から事前に、掲載を見合わせるよう要請を受けていたという。

 同紙のマット・マレー編集長は『中国政府が記者証の発行を拒んだことに失望している。中国に関するこの重要な話題の報道を続ける考えに変わりはない』とコメントした」(2019/8/31 朝日新聞)ことが起きた。

 さらに、「中国政府が国内メディアへの統制を強めている。記者らを対象にして、習近平国家主席の指導思想『習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想』の理解度を測るテストを今月下旬から新たに実施。合格者だけに新規の記者証を発行する方針だ。

 テストは原則、習氏の演説内容などを学ぶために共産党が開発したスマートフォンアプリ『学習強国』を通じて実施する。10月初旬にはアプリ上で、習氏の演説の空欄に入る言葉を選んだり、『党の新聞世論工作を行う際』に優先すべき点を挙げさせたりする問題が公開された。対象は主要な通信社や新聞、テレビなどの記者や編集者」(2019/10/19 共同通信)だそうである。

 

 今からでも遅くない。

 「科学的常識が絶えず変わるように、歴史的常識も変わるのである。

 そうであるならば、私たちの頭の中の歴史的知識の入れ替えも必要ではないだろうか?

 ソ連は自由で豊かな国だという知識は間違っていたし、中国には搾取や抑圧がないという知識が間違っていたとしたら、共産主義中国共産党に関する知識にも再検討が必要ではないだろうか?」(金子 甫)

 

【補】

  「中国当局が2019年12月下旬以降、人権派の弁護士や活動家ら十数人を、国家政権転覆の疑いなどで連行したり、拘束したりしていたことがわかった。連行・拘束された人たちの知人らが明らかにした。香港で政府への抗議活動が続くなか、中国当局が本土への波及を恐れて取り締まりを強めた可能性がある。

 知人らによると、当局は2019年12月26日ごろから執行を始めた。人権派弁護士で、憲法で保障された権利を求める『新公民運動』の中心メンバーだった丁家喜氏を拘束。2015年7月に全土の弁護士が一斉に拘束された『709事件』で弁護人を務めた文東海氏も、『警察が来た』と知人に連絡した後、行方がわからなくなっている。一部はすでに釈放されたが、当局の監視下にあるという。

 連行・拘束された人の多くは、12月中旬に福建省アモイであった会合に参加していたとの情報もある。会合の内容は不明だが、当局はこうした動きを警戒したとみられる。

 米政府系放送局ラジオ・フリー・アジアによると、今回の対象者は北京や湖北省四川省の弁護士ら少なくとも10人以上とされ、709事件以降では最大規模になるとみられる」(2020/01/04 朝日新聞デジタル)。

断章98

 「動物王国」の下級国民であり、下流老人であるネズミ男は、まだ何も怖くなかった若い頃、民青だった同級生と共産党の事務所に行ったことがある。

 話をした相手は、丁寧だったが、猫なで声だった。ネズミ男は、「こいつはネコ男で、わたしを食おうとしているのだ」と感じて逃げ出した。

 時あたかも、「貴方はもう忘れたかしら 赤い国ならアバタもエクボ みんなでほめた社会主義」(神田川♪・替歌)の時代で、「進歩的文化人・リベラルにあらざれば“知識人”にあらず」の時代だった。

 

 その頃に比べると少し流れが変わった。受けを狙って、「私は本書執筆で『友』を喪う覚悟を決めた」なんてキャッチをつけた、『なぜリベラルは負け続けるのか』という本があった。

 最近も、『リベラリズムの終わり その限界と未来』(萱野 稔人)という本が出た。帯のキャッチには、「なぜ嫌われたのか? 実現不可能なのか? どこで失敗したのか?」とある。

 アマゾンレビュワーの一人は、「一般的には、いわゆるリベラル派と見なされている著者は、だからこそ昨今のリベラル派の言説が大衆に受け入れられなくなっていることに危機感を抱き、まともにその原因を考えようというのが執筆意図であろう。昨今のリベラル派は、反対者を取るに足らぬもの、ネトウヨと言われる遅れた人権意識を持つ者として描き、まともに反論せず社会の右傾化を憂いて終わりにする姿勢が目立つことに著者は苛立ちを覚えている。(以下、略)」と評している。

 

 ネズミ男は、リベラルの衰退(そういったことがあるとして)について、そんなにむつかしく考えていない(注:ネズミ男は、ロジカル・リーディング、ロジカル・シンキングができないからだ、という声もあるけれど)。

 下級国民は、自称「知識人」リベラルの言動に日本への“愛”を感じない。それが、リベラルの衰退の原因だと、ネズミ男は思うのである。

 

 「春夏秋冬 繰り返す 季節を着替えながら 花に埋もれて 月を待ち 鳥を追いかけ 睦月 如月 弥生 卯月 朝から夕べへと 雪と舞い遊び 雨に濡れ 雲をたどり この国に生まれてよかった 美しい風の国に ただひとつの故郷で君と生きよう」(『この国に生まれてよかった』♪村下 孝蔵)

  まずもって、この気持ちがなくては話になりはしないと、寒い朝にココアを飲みながらネズミ男は思うのであった。

断章97

 先日、日本政府は愚かなことをした。

 「国連総会で人権問題を扱う第3委員会は11月14日、北朝鮮による人権侵害を非難する決議を採択した。同様の決議は2005年から毎年採択され、今回で15回目。日本は2回目から欧州連合EU)と決議案を共同提出してきたが、今回は提出には加わらず、支持するにとどまった。

 日本外交筋は日本経済新聞に『日朝関係を取り巻く情勢を総合的に判断した結果』と説明した。国連関係者の間では、日朝首脳会談の実現に向けて融和姿勢を示したとの見方もある」(2019/11/15 日本経済新聞)。

 

 「北朝鮮」における人権侵害に対して“融和姿勢”を示すことは、1ミリもあってはならない。この日、日本政府は、「反日」のために「人道」「人権」の厚化粧をしているダブルスタンダードの偽善国=韓国の同類になったのである。

 

 韓国の偽善は、これまでも書いてきた、ベトナム戦争での韓国軍による民間人虐殺とライダイハン問題にも明らかである。

 「ベトナム戦争での韓国軍民間人虐殺問題を広める団体『蓮の花の下』と韓ベ平和財団など16団体が開いた『ベトナム民間人虐殺、いま、国家の責任を問う』文化祭の一場面だ。彼らはこの場で、ベトナムでの民間人虐殺に対する国家の責任を問う初めての集会を開き、韓国政府のベトナム民間人虐殺被害者に対する謝罪と賠償▽韓国政府のベトナム民間人虐殺問題に対する真相究明の施行▽ベトナムフォンニィ・フォンニャット村民間人虐殺に対する国家情報院の調査文書公開▽すべての一般教科書にベトナム民間人虐殺問題を追加記載などの措置を求めた。市民たちは『私たちは真実を求める』『民間人虐殺、国家が責任を取れ』『国情院は情報公開を迅速に施行せよ』などスローガンを叫んだ。

 『蓮の花の下』などの説明を総合すると、1964年から始まった韓国軍のベトナム派兵は、クアンナム省クアンガイ省ビンディン省フーイエン省カインホア省などの村で、9千人を超えるベトナム民間人虐殺被害者を作った。この問題は1999年、『ハンギョレ21』を通じて韓国社会で公論化され、その後始まった『ごめんなさいベトナム』運動が20周年を迎えた。当時、『ハンギョレ21』の記者として記事を作成したコ・ギョンテ22世紀メディア代表は『ベトナム戦争での民間人虐殺に対する態度を見ると、韓国は《慰安婦》問題を否定する日本を非難する立場ではないかもしれない。韓国政府が日本政府のようにならないようにしてほしい』と語った。ベトナム戦争での民間人虐殺事件が初めて国内に知られた1999年に生まれたキム・ナム『蓮の花の下』運営委員は『1999年に生まれ20歳の青年になったが、いまだに政府は証拠資料がないということを盾に民間人虐殺の言及を避けている。歴代大統領も“遺憾だ”“悲劇的だ”という言葉から前に進めていない』と指摘した。

 ベトナムフォンニィ・フォンニャット村の民間人虐殺に対する調査文書を公開していない国情院に対する批判も続いた。民主社会のための弁護士会(民弁)のイム・ジェソン弁護士は『1968年2月12日、ベトナムフォンニィ・フォンニャット村で青龍部隊が作戦を展開して、70人以上の民間人が死亡した。2016年に国情院に当該資料を公開するよう情報公開請求を行った』とし、『昨年7月に裁判所が関連文書を公開するように判決を下したが、国情院は依然として公開を拒否している。公開拒否の論理として〈ベトナムの被害者が告訴する際の韓国政府の対応戦略がまだない〉という理由を挙げている。被害者の観点の論理はない』と述べた」(引用者注:ここでは、参加者がわずか40人余だったこと、公娼の一種であった慰安婦と外国での民間人虐殺を同列化していること、この問題では韓国行政は韓国司法府の判決を尊重していないことは問わないでおこう)。

 

 ともあれ、韓国には「書簡」が送られた!

 「ヒューマン・ライツ・ウォッチ北朝鮮における人道に対する罪を止める国際的な連合(ICNK)、国際アムネスティなど22カ国で活動する67の非政府組織(NGO)が16日、文在寅・韓国大統領に書簡を送り『韓国政府は北朝鮮における深刻な人権問題改善に向け積極的に努力すべきだ』という趣旨の公開書簡を送った。書簡には67団体のほかトマス・オヘア・キンタナ国連北朝鮮人権特別報告官やイ・ヤンヒミャンマー特別報告官、国連北朝鮮人権報告官を務めたマルズキ・ダルスマン氏ら10人も名前を連ねていた。

 国際人権団体が人権弁護士出身の文大統領に対し、北朝鮮の人権問題改善に乗り出すよう求めた形だ。

 書簡は、韓国政府が先月7日に北朝鮮漁船乗組員二人を北朝鮮に強制送還した問題を取り上げ『大韓民国は送還の際、拷問を受ける恐れが強く認められる場合にはその人物を保護し正当な手続きを提供する義務を持つ国だ』『(韓国政府が)北朝鮮漁船乗組員の送還を行ったことに懸念を表明する』などと明記されていた。さらに『韓国政府は北朝鮮漁船乗組員強制送還事件の真相を解明し、その結果を公表すべきだ』『北朝鮮住民の基本権を侵害した政府関係者に責任を追及しなければならない』などとも主張した。

 さらに韓国政府が先月14日、国連の第3委員会で採択された北朝鮮人権決議案の共同提案国に参加しなかったことについて『南北対話の見返りに北朝鮮政権の違法行為から顔を背けているという間違った印象を与えている』とも書簡では指摘されている。

 書簡には『北朝鮮の脅迫に屈し沈黙する行為は、北朝鮮の人権問題解決に何のプラスにもならないだろう』『北朝鮮の人権問題解決を求める国際社会の一貫して断固としたメッセージを北朝鮮政権に送り続けてこそ、長期的に北朝鮮の人権問題を解決に向かわせることができるだろう』などとも記載されている」(2019/12/17)。

 

 へたくそなマヌーバー・融和姿勢が、役に立ったためしはない。日本政府は、「人権問題解決を求める国際社会の一貫して断固としたメッセージを北朝鮮政権に送り続けてこそ、長期的に北朝鮮の人権問題を解決に向かわせることができる」ことを、忘れてはならない。