断章87

 井沢 元彦は、呉 善花(オ・ソンファ)との対談本『困った隣人 韓国の急所』(2013年 祥伝社刊)の「まえがき」で、「本当に韓国の、そもそも朱子学によってもたらされた、硬直した国家観・歴史観はどうしようもない。本文を読んでいただければわかることだが、一言でいえば韓国は『歴史を捏造(ネツゾウ)し国民を洗脳している』のである。にもかかわらずその捏造に異議を唱える人間を非難し、『正しい歴史を学べ』とすら叫ぶ」と書いた。

 

 韓国の「反日」教育は、長期かつ強固なものである。

 

 学齢期前には、『反日種族主義』の共著者のひとりが、韓国外国特派員協会での講演の質疑応答で話したように、「韓国人はまだ中世的な善と悪の観念で、日本との関係を認識して評価している。

  私の孫娘が幼稚園に行ってきたある日私に話した。『おじいさん、日本は私たちの敵だよ』と。今、韓国の小学校で全教組(※韓国の教職員の組合)の教師を通じて日本に対してどんな教育がなされているのか、皆さんには現場をチェックしてみることを望む」ようなことになっている。

 

 学齢期には、前記対談者の呉 善花が、「私の世代は最も強固な反日教育を受けた世代です。反日教育ではどんなことを教えるかといいますと、日本は歴史的に韓国に対していかに悪いことをしてきたか、その悪いことをした根本にあるのは日本人の『侵略的で野蛮な民族的資質』なのだ、しかし大部分の日本人はそのことを十分自覚していない、反省も謝罪もしていない、それどころか悪くなかったと否定する日本人がたくさんいる、という具合です。

 はっきり言ってこれは、知識教育ではなくイデオロギー的な情緒教育なんですね。小学校に入ったときから一貫してこうした教育が行われますが、幼い時期はより多感なものですから、『ひどすぎる』『絶対に許せない』という思いで心がいっぱいになります。

 もちろんそれは他人事ではないからです。同じ血を分けた韓国人であり、お父さん、お母さん、お祖父さん、お祖母さんたちのことなのですから、自分がやられたのと同じ気持ちになります。わが身を切り裂かれるような辛くて苦しい気持ちになり、激しい怒りがこみあげてきます。そうか、日本人はそんなに『侵略的で野蛮な民族的資質』をもっている者たちかと軽蔑していくんです」と回顧している。

 

 思春期には、『2019/10/23 WOW! Korea』でも報じられたように、「(韓国高等学校)学生らは政治に偏った教師たちが校内行事の時、学生たちに『日本の経済侵略、反対する、反対する』『安倍の自民党、亡びる、亡びる」などを叫ぶように強要していたと話した。

 学生たちはこれに関して『学校で行われている価値観と良心の自由を抑圧する教職員の行動は学生の人権を踏みつぶす暴挙』として学生人権に対しても問題を提起している」(大学への内申書の提出が終わったので、やっと提起できた)有り様なのである。

 

【補】

 日本の「親韓派」リベラルにとっての憧れである“躍動する民主主義”の国、韓国では、「言論・表現の自由」を圧殺する策動が進行中である。

 

 「韓国与党の『共に民主党』のシンクタンクである“民主研究院”が25日、『日本帝国(日帝)の植民統治擁護行為』特別法を制定して、当時の植民統治を擁護する行為を処罰する必要があると主張した。

 パク・ヒョク民主研究院の研究委員はこの日“竹島(韓国名:独島)の日”を迎え、発表した政策の会見で『極めて度の超えた“日帝植民統治の擁護行為”を取り締まる特別法が急がれる』と明かした。

 また『多くの研究成果、調査報告書、法律、判例、証言などで整理された日帝の侵略と戦争犯罪の歴史的事実を歪曲したり擁護する行為は、純粋な学術活動や学問行為ではなく、政治勢力化を目的とした政治的な扇動行為だ』と説明した。

 彼は付け加えて『韓国国内の親日勢力は自律的活動ではなく、日本の極右勢力と内通して韓国の正統性と民族の精神を傷つけ、戦争犯罪被害者の人権を蹂躙する反国家・反人道行為を自ら行っている』とも語った。」(2019/10/25 Wow! Korea)のである。

 

 これは、《反国家》《人道の敵》をふりかざして、「言論・表現・学問研究の自由」を抹殺する完全な「左翼全体主義」である。自分たちが許容できない言論・表現・出版物を法律で処罰するというのだ。これは、かつての共産党の《反革命》《人民の敵》論と同じものである。

 目先のターゲットは、彼らに不都合な論証や実証分析のある“外国の韓国歴史研究書”や韓国内の著作(例えば『反日種族主義』)である。まともに論駁・反論ができないので、“法律で処罰”しよう、さらには“国禁の書”にするというのだ。

 やがては、韓国内のすべての「反対派」を“法律による処罰”で脅して委縮させ、韓国の「言論・表現の自由」を圧殺しようと目論んでいるのだ。

 「北朝鮮」の戦争犯罪・人権蹂躙や、李承晩政権の人民虐殺・人権蹂躙には目をつぶり、彼らが(主観的に)「日帝植民統治の擁護行為」とみなしたものを「特別法」で圧殺(処罰)しようとする策動は、韓国の「左翼全体主義者」の危険な策動である。

 

【参考】

 呉 善花(オ・ソンファ)は、自分の置かれた立場を明らかにしている。

 「私が韓国で売国奴と非難されているのは、単に韓国の悪口を言っているからではないんです。韓国の悪口をこともあろうに日本で言っているからなんです。

 とんでもない女だということで、韓国のマスコミが私のところへ何度も取材に来ましたが、悪口そのものは彼らもその通りだと認めていて、あなたの言うことはもっともだと言います。それで彼らは、なぜ日本人にわが国の恥を暴露するのか、それが許せないと言うんです。(中略)

 韓国大使館の職員が私を訪ねて来たことがありました。後で調べてみると、この人は身分を隠した安企部(引用者注:情報機関)の職員のようでした。この人から言われたのは、『日本人に対して韓国の悪口を書くな』でした。韓国国内ならばともかく、『日本人に向けて書くのはけしからん』と言うんですね。

 それで私は『韓国のためになると思って書いていることで、自分は悪いことをしていると思っていません』と言ったら、『それはよくわかる。でも、それなら韓国のマスコミを怒らせることをするな』と言われました。マスコミに載らない程度にしておけ、ということなんですね。」と語っている。