断章214

 「ある国内半導体メーカーの経営幹部は最近、中国・清華大学の教授から、『米国の攻撃は終わりが見えないが、必ずアジアの時代が来る。もっと一緒に何かできないか』という連絡をもらって驚いたと明かす。

 習 近平国家主席の母校で、半導体を中心としたハイテク産業振興をけん引する清華大学

 その姿勢から見えてくるのは、攻め手を止めない米国を前にしても、中国が決してあきらめていないということだ」(2020年10月21日の日経ビジネス電子版・岡田達也の記事を再構成)。

 

 もし中国(中国共産党)の甘言(利益誘導)に誘われると・・・、

 「『ふえるわかめちゃん』や『ノンオイル青じそドレッシング』などのヒット商品を生んできた東証1部の『理研ビタミン』が不正会計問題で上場廃止の危機に直面している。安定した収益力を誇る時価総額1000億円弱の企業が突然陥った危機の要因を分析すると『中国リスク』の恐ろしさが浮かび上がってくる。多くの日本企業にとっても無縁ではいられない重要な問題だ。理研ビタミンは10月15日、東証の監理銘柄(確認中)に指定されるとともに『10月28日までに第1四半期(4-6月)の四半期報告書を関東財務局に提出できなかった場合は上場廃止が確定』とのニュースを開示。市場関係者の間では『そこまで深刻な状況だったとは』と驚きが広がり、慌てて情報収集に追われているようだ。

 理研ビタミンは社名が示すとおり『理化学研究所』が発祥で、理研の研究内容を工業化するために設立された『理研栄養薬品株式会社』のビタミン部門関係者が分離独立して1949年に設立された。テレビCMで有名なわかめスープやドレッシングなどの家庭用食品のほか、業務用食品、加工食品用の原料や改良剤、ビタミン類等の製造を手掛けている。海外への展開にも積極的で中国や東南アジアのほか、米国、ドイツに現地法人を置いている。

 今回、問題が判明したのは中国・山東省にある子会社『青島福生食品』。1994年にレトルト食品用の冷凍野菜の輸入を目的に買収した。ただし、その後中国産食品に対するイメージの悪化から現在は取り扱っていない。冷凍野菜・水産加工品・コラーゲンの製造・販売を手掛けており、2015年まではそれなりの利益を上げてきたものの翌年以降赤字が続き、2019年以降は銀行借入に対して理研ビタミンが保証を付けたり、資金援助しなければ立ち行かなくなっていた。

 その青島福生食品がエビ加工品の架空取引をするようになったのは同社の決算月にあたる2018年12月からで、同月は8億円余りの架空取引が行われた。さらに2019年12月期は架空取引が1年を通じて行われ、その額は116億円に上った。19年12月期のエビ加工品の販売総額は124億円であるため、その取引のほとんどが架空であり、同社の売上高全体の実に7割以上に及んだという。こうした経営がまかり通ってきた背景として、理研ビタミンの完全子会社であるにもかかわらず事業上の関係が希薄であり、青島福生食品の人事に親会社が関与してこなかったことなどが指摘されている。理研ビタミンが設置した『特別調査委員会』による実地調査に対し、青島福生食品は国家機密や社内の共産党委員会に関係する情報の流出、従業員のプライバシー等を理由に拒絶し(引用者注:すべての日本企業はこれを肝に銘じよ!)、十分な調査はできなかったという」。

 「チャイナリスクはほかでも顕在化している。同じく東証1部上場の大手専門商社『国際紙パルプ商事』(以下、KPP)は7月21日、中国の連結子会社において、154億円もの債権に取立不能・遅延リスクが発生したことを明らかにした。KPPの連結子会社である慶真紙業貿易(上海)と香港大永(香港)が取引をしていた会社の親会社にあたる『Samson Paper Holdings Limited』(以下、Samson)(香港証券取引所上場)が7月20日バミューダ最高裁判所に対し再建に向けた『暫定清算手続』の申請を行ったためである。

 KPPはとりあえず4-6月期決算では3月末時点の債権残高のうち、7月20日時点で未回収だった27億円について貸倒引当金を計上したが、今後の債権回収状況を鑑み、8月12日になって通期業績予想を61億円の営業赤字とした。(中略)

 似たような事例はまだある。東レの子会社で東証1部に上場する名門商社の『蝶理』も7月27日に子会社の『澄蝶』(東京都港区)で49億円もの売掛金の回収遅延が発生したため、4-6月期にそのうち半額について貸倒引当金を積んだと発表した。相手先は『中国の化学品製造会社グループ』としか明かされていないが、同グループは『新型コロナウイルス感染症の世界的拡大の影響を受けて中国の経済活動が一定期間全面停止したことなどから、主力の石油化学事業が低迷し、資金繰りが不安定な状況に陥っているとされ、澄蝶への原料購入代金の支払いが遅延』(発表)しているという。蝶理はこの損失のため1株57円としていた今期の配当予想を『未定』とした。ちなみに、澄蝶は社名が示すように中国の大手リン酸メーカー『江陰澄星』と蝶理合弁会社である。蝶理は1961年に国交正常化のはるか前の中国で『友好商社』の指定を受け、『日中貿易のパイオニア』を自認している。それでも今回中国での大口焦げ付きを避けられなかった」(2020/10/22 ダイヤモンドオンライン・東京経済東京支社情報部井出豪彦の記事から引用)のである。中国ビジネスは甘くない。

 

 思いだそう! 2015年4月末、当時「東証1部上場だった化学薬品商社『江守グループホールディングス』(福井市)が、民事再生法適用の申請を発表し、破綻した。同社は2014年3月期決算までは好業績を続けていたが、その後、中国の取引先から代金が回収できないなど、傾注していた中国事業での失敗が表面化。債務超過に陥り、明治の創業以来109年続いた創業家の歴史に幕を下ろした。福井の名門企業である同社の倒産劇は改めてチャイナリスクの大きさをクローズアップさせた」(2015/06/03 産経新聞)。