断章457

 “資本主義”は、不況、回復、好況、後退という4つの局面を繰り返しながら発展拡大する(それに先行する株式は、底ねり期、おそるおそるの上昇期、バブル絶好調期、そして崩落を繰り返す)。その過程での庶民の喜怒哀楽や阿鼻叫喚に対しては、もし“資本主義”が人間(ヒト)であれば、「わたしの知ったこっちゃない」と言うであろう ―― それが、構造であり、運動法則であり、“疎外”というものである。

 

 「一葉の落つるを見て、歳のまさに暮れなんとするを知る」。

 1929年に世界大恐慌が起こるや、お祭り騒ぎだったアメリ20年代(ゴールデンエイジ)はあっという間に終わった。

 「1929年、米国はまさにバブルの真最中だった。ジョセフ・P・ケネディが靴磨きの少年に靴を磨いてもらおうとしたときのこと。少年は米紙ウィール・ストリート・ジャーナルを読んでいて、株取引に夢中でした。ケネディに対して自慢げに、推奨銘柄を教えたりなどします。この少年との出会いで、ケネディは相場撤退を決意したと伝えられています」(玉手 喜朗)。

 ちなみに、アレキサンダー・エルダーは、バブル期の日本に向かうJAL機内で、CAたちの「株取引でお給料以上に儲かった」という会話を聞いて、そのころ取引が開始されていた日経225先物を(バブル崩壊を予期して)売り建てたという。

 

 季節が変われば、あっという間に景色は変わる。

 初演時に前例のない2,212回というロングラン記録を打ち立てて大ヒット作となったブロードウェイミュージカル『オクラホマ』 ―― 国民的ミュージカルとして愛された背景にはアメリカ開拓精神への郷愁がある ―― の舞台は、1906年オクラホマ州クレアモア郊外の農村である。明るく楽しい作品らしい。

 ところが、1929年大恐慌後のオクラホマを象徴するものは、『怒りのブドウ』である。

 そこにあるものは、不況と日照りと砂嵐に苦しむ農民たちの姿である。農民たちは、家財道具を売り払って中古のおんぼろトラックを購入し、それに身の回りの一切合切を詰め込んで国道66号線を西に向かってひた走り「約束の地」カリフォルニアを目指す。だが、目的地カリフォルニアは、オクラホマから来た貧乏人こと“オーキー”どもで溢(あふ)れていて、出エジプトの民が荒野を40年さまよい歩いたような辛酸をなめるのである。

 

 自前のエネルギー・資源・食料がごく少ない日本は、粘土の足の巨人である。来たるべき危機・大恐慌に対する備えはあるか? 「苦難上等 好むものなり 修羅の道」(by ONEPIECE)と言う勇気はあるか?