断章16

無名の下層民の人生をぐだぐだと書いてきた。

日本経済の成長につれて、おこぼれにあずかって、下層民なりに豊かになったと思う。

庶民生活史そのものだった。

 

戦国時代。豊臣秀吉のように成り上がった者もいたが、大半の民百姓にとっては、「厭離穢土 欣求浄土」の逃げ惑う戦乱の時代だった。

 

江戸時代。鎖国下の厳しい身分制と幕藩体制で、水呑百姓は、飢饉になれば餓死するか一揆を起すかの生活だったが、平和だった。

 

明治から先の敗戦まで。厳しい身分制・幕藩体制は撤廃されて(遺制として残ったものもある)、めざましい資本主義的発展が始まった。士官学校では、元士族の子供と百姓の子供が「貴様と俺」で話しができるようになり、軍隊に入営した庶民はカレーライスを食べ軍靴を履いて技術も覚えられたのである。だが、なによりも、わが曽祖父と祖父の世代は、多難な帝国主義の時代の中で「富国強兵・国民皆兵」による戦いの日々であった。

 

惨憺たる敗戦から「平成」まで。「もう戦争はいやだ。アメリカのように豊かになりたい」の一択だった。「愛国心」「国防」「軍隊」から目を背け忌避してまでも。

この「空気」が充満する中でこそ、自称「知識人」リベラル(進歩的「文化人」)たちが、「平和と民主主義」の空騒ぎに興じ、最新ファッションよろしく西欧思想の切り売りができたのである(経済高度成長の繁栄と安楽を享受しながら)。

 

そして、「平成の30年間をひと言でいうならば、『日本がどんどん貧乏くさくなった』だ。国民のゆたかさの指標となる1人当たりGDP(国内総生産)で、日本はバブル経済の余勢をかって1990年代はベスト5の常連で、2000年にはルクセンブルクに次いで世界2位になったものの、そこからつるべ落としのように順位を下げていく。

 2017年の日本の1人当たりGDPは世界25位で、アジアでもマカオ(3位)、シンガポール(9位)、香港(16位)に大きく水をあけられ、いまや韓国(29位)にも追い越されそうだ。主要7カ国(英・米・仏・伊・独・加・日)では首位から6位に転落し、かつては世界の15%を占めていたGDPも30年間で6%に縮小した」(橘 玲)のである。