断章63

 中国の軍事力増強は続いている。

 「中国海軍は、075型強襲揚陸艦を建造しようとしている。中国海軍は公式には075型強襲揚陸艦に関する詳細データを公表してはいないので、あくまでもアメリカ海軍やシンクタンクなどの推定にすぎないが、075型強襲揚陸艦アメリカ海軍のワスプ級強襲揚陸艦に匹敵する満載4万トンクラスの巨艦になる可能性が高い。

 ただし、現時点ではアメリカ海軍・海兵隊のように強襲揚陸艦に多数のSVTOL戦闘機を積載する可能性はないため、満載で3万5000トン程度ではないかともいわれている。

 巨大な本格的強襲揚陸艦である075型強襲揚陸艦には少なくとも30機以上の各種ヘリコプター、2隻の726型ホバークラフト、揚陸艇、それに揚陸用装甲車や水陸両用戦車などの水陸両用車両、それに中国海軍陸戦隊上陸部隊が積載されることになる。

 現在のところ、3隻の075型強襲揚陸艦が建造される予定であり、名実ともにアメリカに次ぐ世界第2の規模と内容を誇る水陸両用戦力が誕生することになる」(2019/8/29  JB press ・北村 淳)。

 

 「中国の初の国産空母が8月23日、7回目の試験航海を終え、遼寧省大連の造船所に戻った。中国系香港紙・文匯報(電子版)は、甲板に残るタイヤ痕から、艦載機の離着陸テストが行われた模様だと報じており、就役が近づいているとみられる。

 中国軍にとってこの国産空母は、ウクライナから購入した船体を改造して完成させた“遼寧”(2012年就役)に続く2隻目の空母となる。試験航海は2018年5月に始まった。大連周辺海域で行われた今回の航海期間は、過去最長の22日間に及んだという」(読売新聞)。

 

 日本共産党日本社会党が、中国を「社会主義(をめざしている)国家」と呼んでいた1994年、岡田 英弘は、『中国のどこが危険なのか』について説明している。

 「中国には思想的な問題、イデオロギーの問題がある。それは社会主義イデオロギーではない、中国独自のいわゆる中華思想と言われるものである。中国には歴史的な宿命として、世界最大最強の国でなければいけないというドクトリンがあって、中国人はハナから、これを自明のことだと思っている。たまたま今、日本人というこすっからいやつらに小股をすくわれ、こんな目に合っているが、もともと中国人というのは世界でもっとも優秀な人種である、と信じていて、その思いは、とにかく理屈を超えたものなのである。それが中国のナショナル・アイデンティティなのだ。(中略)

 日本人は戦後、政経分離の思想に慣らされたため、政治は経済に追随すると思い込んでいるが、政治と経済の関係はけっしてそういうものではない。日本ですら、経済はつねに政治によってコンディションされるわけで、経済は政治の敷いた路線を走るしかないのである。(中略)

 日本人のなかには、中国も経済開放政策によって経済が発展すれば、政治も自由化し、民主的になるだろうと思っている人がいるが、そんなことにはけっしてならない。経済開放政策は共産党の統治を強化するために立案されたのであって、政治を自由化したり、民主化したりしたのでは、なんのための経済開放政策かわからないのである。(中略)

 中国人が全体として好戦的だとは思わないが、最高権力者がなにかを機に気まぐれを起すことがないとは言えず、非常に危険な国である。この点、北朝鮮と同じだ。指導部のなかで投票で政治的決断がなされているわけではない。最高権力者が一言言えば、大躍進政策でも、人民公社でも、だれが考えても気違い沙汰と思われるようなことでも、文句なく行われるような国なのであり、その体質は今も変わっていない。そういう意味で、中国には非常に気をつけなければいけない」。

 

【参考】

 4年ぶりの中国国防白書は、「尖閣諸島について『中国固有の領土』と言明し、東シナ海の監視を続けるとした。4年前の白書にはなかった表現だ」(2019/7/25 朝日新聞)。

 

【参考】

 複数の国が領有権を争う南シナ海ウッディー島に、中国が少なくとも4機のJ10戦闘機を配備したことが、CNNの入手した衛星画像で明らかになった。ウッディー島への戦闘機配備が確認されたのは2017年以来。

 衛星画像は19日に撮影されたもので、情報企業イメージサット・インターナショナルがCNNに提供した。同社によると、南シナ海にある中国の実効支配下の島でJ10が確認されたのは初めてだという。

 南シナ海では依然として緊張の高まりが続いている。中国の習近平(シーチンピン)国家主席は来週日本で開かれる主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせてトランプ米大統領と会談する予定だ。

 衛星画像を見たアナリストらは、戦闘機が野外に駐機している点などの重要性に言及。J10が最大10日間にわたり同島にとどまっていたことを示していると指摘する。

 豪空軍の元将校でグリフィス大学アジア研究所の研究員、ピーター・レイトン氏は「中国は戦闘機の存在を気付かせようとしている。そうでなければ格納庫に駐機するはずだ」と述べた。

 米太平洋軍統合情報センターの元責任者、カール・シュスター氏はJ10の配備について「ウッディー島が自国の領土であり、いつでも望むときに軍用機を配置できると誇示する」狙いがあるとの見方を示した。

 J10の戦闘行動半径は約500マイル(740キロ)で、南シナ海の大半や海上交通の要衝地を範囲内に収めている。

 ウッディー島は中国名「永興島」で、パラセル(西沙)諸島で最大の島。パラセル諸島は約337万平方キロにわたって広がる南シナ海の北部から中部にかけて位置する。ベトナムと台湾も同諸島の領有権を主張しているが、1974年以降は中国の実効支配下にある。

(2019/6/21 CNN)