断章231

 「戦争は繰り返し起きている。文明が発展しても、民主政治が行われても、戦争は減らない。記録の残る過去3421年のうち、戦争がなかったのはわずか268年である。現在、戦争は人類の競争と自然淘汰の究極の形となっている。ヘラクレイトスは『戦いは万物の父である』と述べた。戦争、あるいは競争は、アイデア、発明、制度、国家などあらゆるものが生まれ出る有力な源だということである。平和は不安定な均衡状態であり、超大国が存在するか、互いの力が釣り合っていないかぎり、平和は保てない」(『歴史の大局を見渡す』)。

 

 「2020年9月27日からはじまった『ナゴルノ・カラバフ戦争』は、11月10日夜のアゼルバイジャンアルメニア、ロシアの首脳による、紛争地域での敵対行為を終わらせるための合意文書への署名でひとまず終結した。合意はアゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領、アルメニアのニコル・パシニャン首相、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が署名したもので、アリエフがこの合意を『アルメニアの事実上の軍事的降伏』と呼んだように、アルメニアの敗北を強く印象づける内容になっている」(塩原 俊彦)。

 この戦争の死者は、10月23日時点で民間人を含め1,000人を超えた(プーチン・ロシア大統領の発表では5,000人近い)。ナゴルノ・カラバフの住民の半数の約7万人が難民となった。公表された動画を見れば、アゼルバイジャン側の無人攻撃機を含む航空優勢が推測できる(一部報道では、トルコ軍がアゼルバイジャンを支援して参戦した)。

 

 「インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方の国境地帯で11月13日、両国軍が過去1年で最大となる砲撃戦を繰り広げ、双方で13人以上が死亡、数十人が負傷した。当局が明らかにした。戦闘が起きたのは13日午前。双方は『正当な理由のない』攻撃を仕掛けたとして互いを非難している。住民によると、砲撃は夜になっても続いた。

 インド支配地域の多くの住民は、停戦ライン『実効支配線』から避難を余儀なくされた。一方でパキスタン当局は、同国の支配地域側でインドの砲撃により多数の民家が焼けたと明らかにした。インドの軍と警察によると、兵士4人と8歳の少年1人を含む民間人4人、計8人が死亡。また、治安部隊や民間人少なくとも12人が負傷した。

 一方、カシミール地方のパキスタン支配地域のトップを務めるラジャ・ファルーク・ハイデル氏は、激しい砲撃により5人が死亡し、31人が負傷したと明らかにした。パキスタン軍は、死者のうち1人が同軍の兵士だったと認めている」(2020/11/14 AFPnews)。

 

 「日中の安全保障上の摩擦は強まっている。日本領空に近づく中国機に対する緊急発進は高水準が続いている。飛行空域は東シナ海上空が中心で、尖閣諸島上空を所管する南西航空方面隊による対応が大半を占めた。中国は西太平洋など遠方への戦力展開を目指しており、間に位置する日本周辺での活動量の増加につながっている。2019年10~12月には毎月末に人民解放軍の情報収集機『Y-9』が対馬海峡上空を経て東シナ海日本海を飛行する動きがあった。

 中国の動きは海上でも活発だ。この11月、尖閣諸島沖の接続水域を中国当局の船が航行する日数は年間282日を超え、過去最多になった。日本の“海の国境警備”は難しい対応が続く」(NHKニュースなどから抜粋)。

 

 「中国軍制服組トップの許其亮・中央軍事委員会副主席は『能動的な戦争立案』に言及。習 近平国家主席(中央軍事委員会主席)は、米国の新政権発足後も台湾や南シナ海をめぐる緊張が続くと予想し『戦って勝てる軍隊』の実現を目指しているもようだ。

 10月下旬に開かれた共産党の第19期中央委員会第5回総会(5中総会)は、軍創設100年を迎える2027年に合わせた『奮闘目標の実現』を掲げた。目標の具体的内容は明らかではないが、5中総会は『戦争に備えた訓練の全面的強化』を確認した。

 これに関連し、許氏は今月上旬に発行された5中総会の解説書で『受動的な戦争適応から能動的な戦争立案への(態勢)転換を加速する』と訴え、中国軍が積極的に戦争に関与していく方針を示唆した。国営新華社通信によると、陸海空軍などによる統合作戦の指揮、作戦行動などに関する軍の要綱が7日に施行された。要綱は軍の統合運用を重視する習氏の意向を反映したもので、新華社は『戦争準備の動きを強化する』と伝えた。

 党機関紙・人民日報系の環球時報英語版(電子版)は、今後の軍事演習では、敵国の空母による南シナ海台湾海峡の航行阻止を想定し、海軍の潜水艦、空軍の偵察機や戦闘機、ロケット軍の対艦弾道ミサイルが動員されることになりそうだと報じた。また、人工知能(AI)などの新技術を使い米軍に勝る兵器を開発するため、軍と民間企業が連携する『軍民融合』がさらに強化される見通しだ。5中総会で採択された基本方針には『軍民の結束強化』を明記。5中総会解説書は『国防工業と科学技術の管理で軍民が分離している状況が見られる』と指摘し、国家ぐるみの兵器開発体制の促進を求めた」(2020/11/16 時事通信社)。