断章107

 「国家の統治を預かる人は、国家が逆境に立たされるのはどのような時か、そしてそのような非常時にはどんな人物が要請されるのか、ということを前もって考えておかなければならない。さらに、どんな辛苦にあおうとも、それに耐えぬくことが自分たちのつとめだという気持ちを人びとに持たせるように、ふだんから人民と苦楽を共にしていなければならない」(マキャベリ)。

 

 では、今の日本をどうみるか?

 わたしは、相変わらず、「今、1億2千万人を乗せた日本丸は、豪華ラウンジで楽しむ富裕層からエンジン音が響きわたる油臭い船底にいる最下層民までを乗せて、海賊が待ち構える海図のない海を漂っている」とみている。

 しかも、この日本丸は、建造以来ながい年月を経て、あちこちに傷みが目立ち始めているし、窓のない船室にいる下等船客の待遇はますます悪くなり、さらに海は荒れそうである。

 

 こんな時に、マスコミや野党は、「船長や高級船員、そして上等船客は、男はタキシード、女はロングドレスのドレスコードで桜の木の飾られた会場で豪華ディナーを楽しんでいるぞ。お前たち下等船客のことなど気にかけてもいないぞ」と、大衆の劣情をかきたてることに一生懸命である。

 

 確かにお粗末な話である。しかし、今更な話でもある。これまでも、船長や高級船員がどうであれ、上等船客がどうであれ、したたかでけなげな庶民は黙々と日本丸を動かしてきたのだから。ところが、そんなことはいつまでも続かない(いつまでもあると思うな親と金。いつまでも続くと思うな庶民の我慢と頑張り)。

 いくら民衆が頑張っても国がダメなら、日本はまた「歴史的敗戦」を迎えるだろう。

 

 庶民(とりわけ貧困層)の生活がジワリと苦しくなりつつあるとき、依然としてアフリカや中東の「独裁国」にまでODAの垂れ流しを続けている。のみならず、自民党の重鎮が、日本人としての誇りを踏みにじられても顧(かえり)みないで、「1,200人規模の訪問団で韓国を訪れたい」というような「言質」を安易に与えるようなことでよいのだろうか?

 

【補】

 「老後破綻という言葉を聞いて久しい。現在、生活保護受給者の半数以上が65歳以上の高齢者で、しかも年々増え続けているのが現実だ。元々、平均的なサラリーマンが一人でもらえる厚生年金は、税金や社会保険料を差し引かれると生活保護レベルと変わらないほど安い。税金や医療費が無料になる生活保護の方がいいかもしれないくらいなのだ。そして夫婦二人世帯でなんとかギリギリやっていけるのだが、離別や死別で一人になった途端、たちまち困窮してしまう。事実、高齢者の生活保護受給世帯の9割が単身者なのだ。

 さらに公的年金だけでは生活はギリギリにもかかわらず、今後は減らされる一方になることがすでに決まっている」(日経ビジネス)。