断章336
先週末、「23日のニューヨーク株式市場は、企業の業績が改善傾向にあることを受けて景気回復への期待から多くの銘柄に買い注文が広がり、ダウ平均株価の終値は最高値を更新し、終値として初めて3万5000ドルを超えました。(中略)
ダウ平均株価の終値は前日に比べて238ドル20セント高い3万5061ドル55セントと9営業日ぶりに最高値を更新し、終値として初めて3万5000ドルを超えました。
また、IT関連銘柄の多いナスダックの株価指数も上昇し、9営業日ぶりに最高値を更新しました」(2021/07/24 NHKニュース)。
これを受けて連休明け26日(月曜日)の東京株式市場も買いが先行し、日経平均は442円高からスタートすると、朝方には前営業日比488.47円高まで上昇した。午後は戻り待ちの売りや、中国・上海株や香港株が大幅下落したこともあり、上げ幅を縮めて終った。
注目すべきは、ソフトバンクグループ(SBG)である。26日、一時、7,077円の安値をつけた。今年5月の決算発表前の株価は、1万円台だった。そこからの下落である。
SBGの2021年3月期決算は、純利益が4兆9879億円の黒字(前年は9615億円の赤字)で、国内企業で過去最高だった。売上高は前年より7.4%増の5兆6281億円だった(これまで国内企業で純利益が高かったのは、トヨタ自動車の18年3月期の2兆4939億円)。
ニューヨーク市場との関わりが大きなSBGは、ニューヨークに連動して高値を更新してもよいはずでは? なぜだろうか?
マーケットはよく間違う。しかし、株価には先見性があるともいう。資産価格(とりわけアメリカ)はバブルだと言われて久しい。だが、ブラック・スワンもグレー・リノもまだ姿を見せていない。にもかかわらず、SBGの株価は下落してきた。
もしかすると、SBGの株価は、「炭鉱のカナリア」 ―― 「炭鉱のカナリア」とは、何らかの危険が迫っていることを知らせてくれる前兆をいいます。 これは、有毒ガスが発生した場合、人間よりも先にカナリアが察知して鳴き声(さえずり)が止むことから、その昔、炭鉱労働者がカナリアを籠(かご)にいれて坑道に入ったことに由来します(金融経済用語集) ―― なのだろうか?
ブラック・スワンもグレー・リノもまだ姿を見せていないが、すでに足元には有毒ガスが発生しているのかもしれない。
兆しは、ある。
「新型コロナウイルスの感染再拡大、中国とドイツの大洪水に、南アフリカの港湾に対するサイバー攻撃。これらの出来事がまるで謀ったかのように相次いで発生し、世界のサプライチェーン(供給網)を限界点へと導き、ただでさえ脆弱な原材料、部品、消費財の流れを脅かしつつある。企業やエコノミスト、輸送専門家の間からはこうした声が聞こえてきた。
感染力の強いインド由来のデルタ株はアジア各所で猛威をふるい、多くの国が貨物船の船員の上陸を禁止。これによって疲労した船員の交代ができずに勤務時間の超過者が10万人前後に達するという、昨年ロックダウンが最も厳格に実施された時期をほうふつとさせる事態になっている。(中略)
世界貿易のおよそ9割を船舶が担っている点からすれば、船員問題は石油、鉄鋼石から食料、電子製品まであらゆるものの供給に混乱をもたらしていると言える。ドイツの海運会社ハバックロイドは現場について『きわめて厳しい。貨物船の空き容量は非常に少なく、空のコンテナは乏しい。いくつかの港湾やターミナルの稼働状況も本格的に改善していない。われわれはこれがおそらく第4四半期にかけて続くと想定しているが、先を読むのがとても難しい』と述べた。
一方、中国とドイツの大洪水も、最初のパンデミックからまだ完全に復活していない世界の供給をさらに動揺させる要因だ。中国では洪水のせいで、夏の電力需要のピークに対応するために発電所が石炭を必要としているにもかかわらず、内モンゴル自治区や山西省などにある鉱山からの石炭輸送が制約を受けている。(中略)
供給制約は米国と中国に痛手を与えている。両国合計の国内総生産(GDP)は世界全体の4割を超えるだけに、世界経済の減速や原材料とあらゆる製品の価格上昇につながりかねない。IHSマークイットが23日発表した7月のアメリカ総合購買担当者景気指数(PMI)は4ヶ月ぶりの低水準にとどまり、年後半の成長は鈍化するのではないかとの観測を裏付ける内容だった。同社チーフビジネスエコノミストのクリス・ウィルソン氏は『短期的な供給能力問題が引き続き不安視され、多くの製造業とサービス業の生産を抑えるのと同時に、需要が供給を上回るのに伴って物価を押し上げている』と分析した」と、7月23日のロイター通信は伝えている。
1873年頃のヨーロッパと北アメリカの金融危機。1929年にはニューヨーク発の世界大恐慌。1991年には日本のバブルが崩壊した。あたかも47年から60年を周期とする「コンドラチェフの波」に乗っていたかのようである。
このシロウト考えどおりなら、次の世界金融恐慌は、製造業の世界的な重心の移動につれて、本来なら2040年なり2050年頃に、中国・上海市場あるいはインド・ムンバイ市場の大暴落で幕を切って落とされるはずだった。コロナ禍パンデミックが、少し早く口火を切ったのだろうか?