断章135

 政府の新型コロナに対する対応は、規模が小さすぎる、あるいはスピードが遅すぎる、つまり「too little, too late」との厳しい批判が出ている。

 1億2千万人の民主制国家が方向転換をするのは全体主義国家ほど容易ではないし、「すべてこの世の出来事は、一つの具合の悪いことを除くと、必ずといってよいほど、別の都合の悪いことが生じてくるものだ。・・・。したがって、われわれがなんとしても深く考えておかなければならない点は、どうすればより実害が少なくて済むかということである。(これを)金科玉条と心得て、事にあたるべきなのだ。というのは、完全無欠で何ひとつ不安がないというようなものは、この世の中にはありえない」(マキャベリ)のだから、熟考が必要だろう。しかし、そうだとしても、「too little, too late」である。

 

 思うに、これは新型コロナ生活危機への切実感が、政治家たちに不足しているからであろう(パチンコに行っている庶民を咎めないで欲しい。彼らは、欺瞞的な“戦後教育”の犠牲者なのだ。“責任のない自由”を教えられ、“金銭教育の欠如”のまま、「二宮尊徳」も教わらずに育てられたのだ)。

 

 なぜ、政治家たちには、生活危機への切実感が無いのか? それは、彼らが、「食うに困ったことがなく、口が干上がっていない」からである。

 「国会議員資産公開法」のカラクリを見てみれば、わかる。この「資産公開法」は、《株式》を含んでいない。

 事の深層を知るために、若干の不適切を承知で、あえて鳩山由紀夫氏の亡母・安子様にご登場いただこう。彼女は、ブリヂストン創業家一族出身で、ブリヂストンの株を1240万株も保有していたという。戦前からの保有だから、インフレもあって取得コストはゼロだったはずだ。さらに深層を知るために、深窓の令嬢であった安倍昭恵氏にも登場していただこう(蛇足:昭恵様が時々ブッ飛ぶのは、おじゃる丸様と同様のご愛嬌である)。彼女の生家である松崎家は、森永製菓創業家の森永家と繋がりが深い。となれば、上級国民一族の常として、松崎家の娘である彼女が、時価4,300円の森永製菓の株を100万株程度所有していても不思議ではない。閨閥・縁戚・家族として彼女たちと結びついている政治家たちが、完全な資産公開に後ろ向きなのは当然であろう。

 

 新型コロナによる庶民生活危機に際して、今一度繰り返す。

 「国家の統治を預かる人は、国家が逆境に立たされるのはどのような時か、そしてそのような非常時にはどんな人物が要請されるのか、ということを前もって考えておかなければならない。さらに、どんな辛苦にあおうとも、それに耐えぬくことが自分たちのつとめだという気持ちを人びとに持たせるように、ふだんから人民と苦楽を共にしていなければならない」(マキャベリ)。

 

【補】

 例えば、これが生活危機である。

 「長崎県佐世保市のテーマパークが先月中旬、派遣として働く従業員の契約を一斉に打ち切っていたことが分かりました。その数は数十人に上るということで、会社は、『新型コロナウイルスの影響で業務が減り、本意ではないが打ち切らざるをえなかった』と説明しています。このテーマパークは、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2月末から先月15日までの2週間余りにわたって休園し、それ以降は利用できる施設を屋外のアトラクションなどに限定して営業しています。

 こうした中、営業を再開した先月16日、派遣として働く従業員の契約を一斉に打ち切っていたことが分かりました。

 突然の休業を余儀なくされた派遣労働者は数十人規模におよび、このうち、2月下旬から今月中旬まで働く契約だった20代の男性は、先月16日の退勤後、派遣会社から電話で『きょうで契約終了だ』と伝えられ、住んでいる寮も先月いっぱいで退去するよう求められたということです」(2020/4/2 NHKnews)。