断章282

 「これほど絶え間なく、歩けば歩いたで、口を開けば開いたで、自分の運命を訴え、自分の屈辱を、自分の苦悩を、自分の受難を嘆いている民族は、世界中を探しても他にはいない」とは、さる国(日本ではない)で韓国について言われたことである。

 

 「『マルロマン』。韓国語で『言葉だけ』『口先ばかり』を意味する。韓国の保守層が文在寅ムン・ジェイン)大統領を批判する言葉で、最近の対日外交を評するときにも使われる。

 新年の記者会見で、日本企業や日本政府に賠償を命じた判決や裁判の手続きに懸念を示し日韓関係修復への意欲を力説してから40日近くたつが、目に見える新たな動きはない。

  19日、ソウルの青瓦台(韓国大統領府)で珍しい出来事があった。韓国メディアによると、文大統領は李洛淵代表ら革新系与党『共に民主党』指導部と懇談した席上、旧日本軍による従軍慰安婦問題について『当事者の意見を排除し、政府同士で合意するには困難がある』と述べ、『日本による心からの謝罪にかかっている』との認識を示した(引用者注:「心からの謝罪」をした後には、賠償(金銭)を求められることは世の常識である)。

 日本政府には受け入れがたい案だ。2015年の日韓政府間合意で、安倍晋三首相(当時)が『日本国内閣総理大臣として、改めて慰安婦としてあまたの苦痛を経験され心身にわたり癒やしがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からのおわびと反省の気持ちを表明する』(引用者注:この表明は明らかな誤りだった)と明らかにし、政府予算から10億円(引用者注:日本国民の血税である)を、韓国が設立した基金に拠出した経緯があるからだ。『政府の公式合意』『合意を土台に韓日間で解決策を協議したい』という新年会見での文氏の発言からも外れている。

 この話には続きがある。与党指導部との懇談会から何時間もたたずに大統領府の報道官が『韓日関係正常化の努力が発言の趣旨だった』と文氏の〝真意〟をメディア側に追加説明したという。青瓦台が『日本は心から謝罪すべきだ』から一転、『韓日関係は重要』に変わった背景について、複数の外交専門家は『対日外交のスタンスを整理できず、混乱している』『内政の課題に追われ、検討が後回しになっている』と話す ―― 引用者注:この外交専門家は、まるでシロウトである。日本向けと韓国国内向けを使い分けることは、韓国常套の二枚舌である。

 漂流する文政権のリトマス試験紙がまず3月1日に控える。日本統治下の1919年に起きた最大の抗日独立運動三・一運動』記念式典での演説だ。文氏がそこでも『心からの謝罪』を日本に求めるようなら元のもくあみになる。〈中略〉

 1月8日、ソウル中央地裁が日本政府に元慰安婦の女性12人への慰謝料支払いを命じた判決後、別の元慰安婦20人が日本政府に損害賠償を求めている訴訟の判決日程が1月13日から突如、延期された。その公判が3月24日、同じソウル中央地裁で弁論から再開する。

 原告には元慰安婦女性の象徴的存在である李容洙が含まれている。『日本からお金でなく事実認定と謝罪がほしい』と話している ―― 引用者注:事実認定と謝罪が行われれば、また鬼の首を取ったように世界中で「反日」の宣伝に利用するだろう ―― ことが、文氏の冒頭の発言につながった可能性もある。判決までには一定期間かかる見通しだが、今度こそは、主権国家は外国の裁判権に服さないとする『主権免除』の原則が認められるかが注目される(引用者注:韓国の司法への甘い幻想にすぎない)。原告の主張を全面的に認める判決が続き、文氏がそれを黙認するようなことになれば、『文政権下での関係改善はもはや無理』とのムードが日本を覆うのは避けられない。〈中略〉

 大統領の任期切れまで残り1年余りとなり、政権内で与党強硬派の影響力が急速に高まっているとの指摘がある。夏ごろには、与党内で次期大統領選の候補者が固まる。与党議員や官僚の視線は次の権力者に向かい、現職大統領の求心力は一気に落ちるのが常だ。歴史問題で日本に歩み寄ろうとしても『大統領選に不利になるからやめろ』と与党側から羽交い締めにされてしまう――。韓国の政治学者はこう分析する」(2021/02/26 日本経済新聞・峯岸博)。

 

 「慶北道のパク・ヨンソン議員が日本の歴史わい曲に対する強硬な対応を促した。パク議員は26日、開かれた第321回臨時会第1回本会議の5分自由発言を通じて『周辺国の歴史わい曲をめぐる葛藤は韓国や日本、中国の友好関係と未来を依然として遮っている』として『日本が歴史を歪曲しながらも独島(ドクト、日本名・竹島侵奪への野心を捨てられずにいる理由は大韓民国がいつか“対馬”の返還を主張することに備えた策略』と主張した。

 パク議員は『独島と“対馬”を明らかな韓国領土にするために“対馬島失地回復国民運動”の火種を慶北道が率先して蘇らせ、独島および対馬教育を強化するだろう』と促した」(2021/01/27 韓国・中央日報)。

 韓国には、大勢のパク・ヨンソンがいることを忘れてはいけない。