断章151

 「アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の22日午前3時時点の集計によりますと、新型コロナウイルスの感染が確認された人は世界全体で504万7377人、亡くなった人は、32万9816人となっています」(2020/5/22 NHK)。

 

 日本でも経済活動の制約などで業績が悪化する企業が目立ち始め、一部で人員削減も始まっている。コロナ危機は日本人の働き方だけでなく、人事評価・給与体系も大きく変わる可能性があるという。

 なぜなら、今や企業は活動全般(とりわけコスト)を見直す必要があり、そのひとつは、人事評価・給与体系を従来の年功序列型から成果主義型へ切り替えることだ、というのである。

 

 『メリトクラシーの法則』(マイクル・ヤング・1965年刊)の後表紙に、「メリット ―― つまり業績と実力を中心にする主義をメリトクラシーと名づける。・・・これまでもそうであったように、今日も、今後も、平等の原則と結びついたメリトクラシーは、近代化、工業化をこころざす社会をいよいよ支配することになるだろう。“実力者”について語り、実力主義がしだいに重要性を増しつつある日本もその例外ではない。メリットは社会を推進するが、またそこから多くの問題が生まれる」と東京工業大学教授・永井 道雄は書いた。

 メリトクラシー成果主義実力主義)から生まれる問題のひとつは、マイクル・ヤングの前掲書中にみられたような、傲慢(ごうまん)で大衆の感情から遊離したエリートたちが簇生(ぞくせい)するということである。

 

 格差が拡大し、中間層が痛んでいた中で、さらにコロナ禍によって成果主義実力主義が徹底されれば、寄る辺のない庶民の暮らし向きは、ますます厳しくなるだろう。

 日本のエリートたちには、大衆の感情から遊離した傲慢な行状が横行した過去がある。歴史の教訓は生かされるのだろうか?