2021-01-01から1年間の記事一覧

断章354

「裕福な家庭に生まれ、良質な教育を受けて、多様な進路を自由に選択できる環境にあった人もいれば、そもそもそのようなチャンスを与えられなかった人もいる。親の愛情に恵まれた人もいれば、酷い虐待を受けて育った人もいる。健康な身体をもった人もいれば…

断章353

農耕と牧畜による食糧生産の増加と集約化による〈余剰〉は、それで養われる神官、戦士、職人などの分業・格差や人口増大を可能にした。それが、バンド社会から部族社会、部族社会から首長制社会への変化をもたらした。 「首長制社会につづいて出現した社会は…

断章352

農耕・牧畜が生みだした〈余剰〉の力は、人間生活に劇的な変化をもたらした。それは、社会編成にも現われた。それについて、以下、『昨日までの世界』から長い引用・紹介をする。 ジャレド・ダイアモンドは、「エルマン・サービスが人口規模の拡大、政治の中…

断章351

「B.C.5000年には、植え付けた作物と家畜に主として依存した農業集落の最初の証拠」がある。定住して人口が増え、農耕・牧畜を行なえば、大集落で人間と家畜が密集することになる。 すると、「農業のため、新たな家畜の牧草地のために土地を開くことで、まっ…

断章350

農耕を始めたばかりの頃は、同棲を始めた頃のようなものだ。農耕に集中するとは決めておらず、彼女と結婚するとは決めていない。 というのは、「採集できる野生の食物がふんだんにあり、毎年水鳥やガゼルが渡ってきて狩りができているあいだは、わざわざリス…

断章349

氷河期の終わりと安定した温暖な気候の始まりという条件下で、「食域拡大」と「定住」を契機として、森林伐採や野生穀類の採集や野生動物の家畜化が始まった。 「いわゆる農耕の発生は、B.C.7000年頃で、世界的な共時性があるが、その種類は、西アジアオオム…

断章348

人間(ヒト)は、〈際限のない欲望〉を持っている。しかし、生存戦略上で有利であれば、人間はそれを秘匿したり、自己抑制することができる。「サヨク」知識人が、耳ざわりのよい「きれい事」だけを書くのは、その方がマスコミ受けがよくて原稿料・印税を手…

断章347

「夢や幻ではなく現実を直視して、今ここで戦い、力強く生きよ」。 現代世界(そして現代日本)のさまざまな諸問題(諸個別現象)を根本から正しく読み解くためには、〈人間〉についての普遍本質的な理解が必要である。 〈人間〉の普遍本質についての理解を…

断章346

「定住は、穀物や動物の作物化・家畜化よりはるかに古く、穀物栽培がほとんど行われない環境で継続することも多かった。 最初の大規模な定住地が生業のために依存したのは、圧倒的に湿地の資源であった」(『反穀物の人類史』ジェームズ・C・スコット)。 …

断章345

約1万1700年前頃、氷河期が終わり安定した温暖な気候が始まった。同じ頃にメソポタミアや中国で遊動生活から定住生活への転換があったのは偶然ではない。 すでに「人類の技術は何百万年にもわたってゆっくりと進化し、3万年前から1万2000年前までの時期にそ…

断章344

パンッと張った財布を持参しているか、あるいは旅先でリッチなベネフィット(利益・恩恵・便益)が得られればこその、あこがれの「旅暮らし」である。 「フーテンの寅」が、舎弟の登に「堅気になれ」と勧めるのも、本当のところ「旅暮らし」は厳しいからであ…

断章343

「人類は、その出現以来、移動狩猟採集民として歴史の99%を生きてきた。キャンプを次々と移動させる遊動生活は、人類が出現して以来、数百万年以上にもわたって続いてきた暮らし方であった。 遊動生活とは、ゴミ、排泄物、不和、不安、不快、欠乏、病、寄生…

断章342

繰り返し確認しなければならない。 歴史を遡(さかのぼ)り、世界を知ろうとすることは、“教養人”になるためではない。 人間の普遍本質を探究し、歴史・世界の真実を踏まえた〈救国救民〉の戦いにより、絵空事や美辞麗句でない現実的な改革を実現するためで…

断章341

「定住生活は、自然環境の大変化に応じた適応形態として出現するのであるが、同時に、それを可能にした人類史的な前提条件として、定置漁具による漁撈やデンプン質ナッツの大量獲得・大量貯蔵の技術的発達がある。 遊動狩猟採集民が、明日の食料について心配…

断章340

「不快なものには近寄らない、危険であれば逃げていく。この単純きわまる行動原理こそ、高い移動能力を発達させてきた動物の生きる基本戦略である。 しかし、快なる場所に集まる動物は、そのためしだいに多くなり、ついに、あまりに多くなってしまえば、この…

断章339

生きること、それは戦うことである。「優しくなければ生きている資格がない」としても、「タフでなければ生きて行けない」のである。 「縄張り意識をもつ動物のあいだでは、縄張りをもたないオスは交尾相手を惹きつけることはできず、良い縄張りをもつほど交…

断章338

「狩猟採集の生活の最小単位は『バンド』と呼ばれる。バンドは血縁を中心とした平均25人から35人の集団で、その周囲にやはり血縁でつながる『バンド社会』がある。 バンド社会の『内と外』は明確に区別され、異なる社会のバンドと遭遇すると戦争になった。バ…

断章337

「近年、農耕開始以前の旧石器時代が再評価され、場合によっては『平等で自由で健康な楽園(ユートピア)』として描かれている」という。 ランガムは、狩猟採集民の平等主義の実態について書いている。 狩猟採集生活をする「人々は、平均50人以下の『バンド…

断章336

先週末、「23日のニューヨーク株式市場は、企業の業績が改善傾向にあることを受けて景気回復への期待から多くの銘柄に買い注文が広がり、ダウ平均株価の終値は最高値を更新し、終値として初めて3万5000ドルを超えました。(中略) ダウ平均株価の終値は前日…

断章335

最も温厚で最も残忍な種、ホモ・サピエンス。協力的で思いやりがありながら、同時に残忍で攻撃的な人間の特性は、いかにして育まれたのか? 「第二次大戦中、強制収容所(引用者注:ナチス。付け加えれば旧・ソ連、中国、カンプチア、『北朝鮮』などなど)の…

断章334

現生人類(ホモ・サピエンス)はアフリカで20~30万年前に生まれ、6万年くらい前に本格的にアフリカを出たとされる。「アラビア半島沿岸部を伝って現在のイラン付近に至り、そこを起点に、インドから東南アジア、オセアニア方面にむかう『南ルート』、中央ア…

断章333

「私たちはどこから来たのか。この気宇壮大な問いの魅力のわりには、ホモ・サピエンスが存在するようになった理由は驚くほど議論されていない。我々の種の起源をめぐる研究の大部分は、『なぜ』『どのように』ではなく、『いつ』『どこで』に焦点を当ててい…

断章332

「人間はいつも競合する集団を作ってきた。それぞれの集団において、個人は仲間の援助や保護に頼っている。つまり、その集団に属する男女にとり、結婚して子供を産み、遺伝子を伝えていくには、集団は絶対に存続しなければならなかった。 互いに協力して、ま…

断章331

現代の森に住む小共同体はどうだろうか? 「ダニ族はニューギニアの隔絶された高地に住む典型的な部族で、集団内の平穏とよそ者の殺戮が共存していた。ニューギニアの別の部族であるバクタマン族のすべての共同体は、不法侵入者を許さず、たいてい暴力で応じ…

断章330

現生人類の誕生や移動については、まだまだ新発見と研究が継続中である。 さしあたり、「あなたとわたしはチンパンジーのような生き物の子孫であり、その生き物は6~700万年前に熱帯雨林を離れてサバンナに移り住んだ」(ヒッペル2019)。 なぜ移り住んだの…

断章329

「現在はまぎれもなく過去の延長線上に存在している。過去にじっさいに起こったことであれば、いつかふたたび起こる可能性は常にある」(『人類と気候の10万年史』)。 著者・中川 毅の「古気候学と呼ばれる有史以前の気候変動を解明する研究は、あまり認識…

断章328

「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」という問いは、単に“教養”を増やすためのものではない。 「人間の本性と限界を冷静に見据えたうえで、可能な限りにおいて改革と正義の実現をめざす」実践のためである。 「ホモ・サピエンス…

断章327

「一読三嘆(いちどくさんたん)とは、優れた文章を読み非常に感嘆すること。三嘆の三は何度もの意で、一度読んで、何度も感嘆すること」。 日本の文系学者先生のお書きになるものは、おおむね、真逆の「嘆(なげ)く」という意味での三嘆 ―― やれやれ、また…

断章326

世界は不条理に満ちている。気立てが良くて勉強もよくできた貧家の娘がいた。東京大学医学部に進めるコースに合格した3年後、白血病で亡くなった。 世界は理不尽にあふれている。ほとんどタヌキしか通らないような田舎にガードレール付きの2車線道路があり、…

断章325

人間(ヒト)の際限のない欲望は、生命の領域では「不老不死」や「クローン人間」の研究へと進んでいる。 間もなく、「子どもの数だけでなく、性別から病気への抵抗性まで、さまざまな特徴を計画的に決められるようになっていくだろう。多くの人が、そのよう…